当社の譲渡案件で買い手から最も多く聞かれたのは、「従業員が残るか・雇用の条件」でした。次に多かったのは、決算・損益の中身、引き継ぐ車両や設備、取引先が続くか、の3つです。借入をどこまで引き継ぐかという質問は7番目でした。赤字・債務超過の会社を中心に仲介する当社が、買い手企業から実際に受けた質問を分類した結果です。

譲渡案件44件に寄せられた1,052問

2026年1月から10月までに、当社が仲介する譲渡案件について、買い手企業からメールや面談で受けた質問を対象にしました。別の案件の紹介依頼や案件と関係のない問い合わせ53問を除いた999問を、1問ずつ「買い手が何を確かめようとしているか」で10の種類に分けています。当社の案件は赤字や債務超過の会社が中心ですが、そうでない会社も含みます。

従業員、決算、資産、取引先の順に質問が多かった

順位 買い手が確かめたいこと 割合 聞かれた案件
1 従業員が残るか・雇用の条件 16.6% 7割超
2 決算・損益の中身 14.2% 約7割
3 引き継ぐ資産(車両・設備・リース・借りている物件) 13.4% 6割超
4 取引先・売上が続くか 12.3% 約7割
5 進め方・面談・資料の出し方 11.2% 約3分の2
6 価格・時期・契約の条件 11.1% 約3分の2
7 借入・未払いのうち、どれを引き継ぐか 8.5% 約半数
8 社長・役員が譲渡後にどう関わるか 6.0% 半数超
9 許認可を引き継げるか 4.3% 約3分の1
10 譲渡の理由・経緯 2.3% 2割強

「質問に占める割合」は999問をもとにしています。「聞かれた案件」は、その種類の質問が1問以上あった案件の割合です。質問の多さを示したもので、買い手が尋ねる順番や、譲渡の成否を決める順番ではありません。

1位:従業員は残ってくれるか

従業員については、人数だけでなく、資格を持つ人や現場を任せられる人が働き続けるかを聞かれました。実際に受けた質問には、次のようなものがあります。

  • ドライバー(職人)のうち、何人が残ってくれるか。売り手の社長に確認してほしい
  • 運行管理者や資格を持つ人に、譲渡後も働き続ける意思があるか
  • 現場の中心となる職人の年齢・健康状態と、技術を引き継げる見通しはどうか
  • 雇用契約書や労働条件通知書はあるか。勤怠をどう管理しているか

事業譲渡で従業員を買い手に移すには、一人ひとりの同意が要ります(民法625条1項)。社長の「たぶん残ってくれる」という見込みと、本人の意思は分けて伝える必要があります。残ってほしい人を挙げ、本人にいつ話すかを譲渡の進め方とあわせて検討します。

2位:なぜ赤字なのか、引き継いだ後に利益が出るか

決算・損益については、赤字額だけでなく、その理由や仕事ごとの採算を尋ねる質問がありました。決算書や試算表の提示を求める質問も含まれています。

  • 売上総利益率が期ごとに大きく動いているのはなぜか
  • 決算書の勘定科目に何が含まれているか
  • 直近3期の決算書と、今期の月次試算表を見せてもらえるか
  • 収益の悪い仕事を見分けられているか

赤字になった経緯と、引き継いだ後にも続くと考えられる原因を、社長自身の言葉で説明できるようにしておくと、こうした質問に答えやすくなります。

3位:車両や設備は、どこまで譲渡に含まれるか

車両・重機・設備のほか、リースや借りている事務所・車庫についても質問がありました。自社で持っているものと借りているもの、それぞれを引き継げるかが聞かれています。

  • 車両台帳はあるか。年式・仕様と、自社保有かリースかを知りたい
  • リース契約を引き継げるか。残りの支払額はいくらか
  • 事務所や車庫の賃貸借契約書を見せてもらえるか。賃料と保証金はいくらか
  • 売掛金・未収金は譲渡の対象に入るか

4位:社長が替わっても、取引は続くか

主な取引先、1社への売上の偏り、単価、協力会社との関係が聞かれました。「赤字や債務超過だと分かって、取引を切られていないか」という質問もありました。

7位:借入や未払いは、買い手が引き継ぐのか

借入・未払いについて多かったのは、「金融機関の借入・税金・社会保険料・未払金は、買い手が引き継がないということでよいか」という確認でした。

当社が扱う譲渡案件は、9割を超えるものが事業譲渡です。借入を売り手の会社に残し、事業だけを買い手に移す形です。このため、買い手からの質問も、引き継がない負債を契約書で確認する内容が中心になります。一方で、社会保険料の滞納をいつまでに解消するか、取引先への未払いをだれが払うかなど、譲渡の日程に関わる質問もありました。

工事業と運送業が半分を超える

業種が分かっている案件では、工事業(建設・設備・リフォームなど)がおよそ3割、運送業がおよそ2割で、この2つで半分を超えます。次いで製造業、飲食業が多くなっています。このページの質問の順位には、こうした業種の構成も関わっています。

業種ごとに聞かれることは、運送会社の譲渡と建設会社の譲渡のページでも紹介しています。

買い手の質問に答えるために、用意しておくもの

ここまでの質問に答える際に使う資料です。相談の前にすべてそろえる必要はありません。

  • 従業員の一覧(担当業務・資格・勤続年数)と、残ってほしい人、その人が残る見込み
  • 決算書(直近3期分)と今期の月次試算表
  • 車両・設備の一覧、リース契約の一覧
  • 事務所・車庫などの賃貸借契約書
  • 主な取引先の一覧と、おおよその売上の割合
  • 借入・未払い・滞納の一覧
  • 許認可の通知書の写し

会社を売っても、社長の連帯保証は自動では外れない

会社を売却しても、連帯保証が自動的に外れるわけではありません。借入を売り手の会社に残す事業譲渡では、譲渡代金をどう返済に充て、残った借入をどう整理するかも検討します。状況によっては、破産などの法的整理が適切な場合もあります。その判断と手続きは弁護士が、許認可の手続きは行政書士などが担います。

よくあるご質問

赤字・債務超過の会社の譲渡で、買い手から最も多く聞かれたことは何ですか

当社が受けた質問では、「従業員が残るか・雇用の条件」が最も多く、分類対象の質問の16.6%でした。次いで決算・損益の中身、引き継ぐ資産、取引先が続くか、の順です。

買い手は、借入のことをどのくらい聞いてきますか

借入・未払いについての質問は、分類対象の質問の8.5%で、7番目でした。当社では借入を売り手の会社に残す事業譲渡が多く、「買い手が引き継がない負債はどれか」という確認が中心でした。

この結果は、どのデータにもとづいていますか

2026年1月から10月までに、当社が仲介する譲渡案件44件について買い手企業から受けた質問1,052問のうち、別の案件の紹介依頼や案件と関係のない問い合わせ53問を除いた999問を分類したものです。

相談の時点で、何を用意すればいいですか

まずは決算書(直近3期分)と借入の一覧をご用意ください。従業員や車両・設備の一覧もあれば、買い手から聞かれそうなことを具体的に話せます。そろっていなくても相談できます。

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