この記事の対象と結論

債務超過の会社でも、状況に応じた手続きで会社を閉じる道があります。ただし、財産を処分しても借金を返しきれないなら、通常の清算だけで終える前提は見直す必要があります。

廃業したいのに借入が残り、連帯保証まで請求されるのが怖い。その状態で考えるべきなのは、解散の登記より、会社と個人それぞれの支払いの見通しです。

会社を閉じる手続きと、社長の連帯保証の整理は別に確認します。 会社側では特別清算や破産を検討し、事業に引き継げる価値があれば譲渡も比較します。

当社にも、自己破産を勧められた経営者から相談が寄せられています。まだ結論が出ていなくても、手元資金と次の支払日から状況を整理できます。状況によっては法的整理が適切な場合もあります。従業員や家族への影響も、その見通しをもとに考えていきましょう。

債務超過の清算は「解散できるか」より「返しきれるか」で考える

債務超過の会社を清算するときは、解散できるかと、債務を整理して終えられるかを分けます。解散の決議をしても、返済資金の不足は残るためです。

決算書の債務超過額と廃業時の不足額は違う

会社の資産より負債が多い状態を、債務超過と呼びます。決算書では純資産の欄がマイナスになっているかが確認の入口です。ただし、その金額だけで清算に必要なお金は決まりません。

帳簿に載った資産が、同じ金額で売れるとは限らないからです。長く売れていない在庫は値下がりするかもしれません。売掛金も、請求額の全額を予定日に回収できるか確認が要ります。

営業を止めることで新たに生じる支出もあります。

  • 借りている物件の原状回復費
  • 設備や在庫の撤去・処分費
  • 契約終了にともなう精算金
  • 清算中の申告や手続きの費用

反対に、帳簿の金額より高く売れる資産が見つかる場合もあります。廃業の判断では、資産を実際にお金へ換える見込みと、閉じ終わるまでの支出を並べます。

「純資産がマイナスだから何もできない」と決める段階ではありません。まず不足額を、廃業する場合の数字に置き直す作業です。

解散の決議は借金を消す手続きではない

株式会社は、株主総会の決議によって解散する道があります。会社法第471条が定める解散事由のひとつです。債務超過という理由だけで、解散の決議そのものができなくなるわけではありません。

ただし、解散と同時に会社の事務がすべて終わるわけでもありません。残った財産や債務を整理する清算が続きます。解散後も、請求や契約の処理が残ります。

たとえば、事務所を閉じても借入の返済義務は消えません。税務上の届出を出したことも、債権者が返済を免除したこととは別です。「営業をやめた」と「債務の整理が済んだ」を混同しないでください。

解散の事由には、破産手続開始の決定も含まれます。その場合の財産処理は破産手続の中で進みます。任意に解散して通常の清算を進める場合とは、経路が異なります。

出典:会社法第471条・第475条、e-Gov法令検索(2026年8月確認)。

通常の清算を終えるには債務の処理が必要

通常の清算を考えやすいのは、会社の財産などで債務を払い終えられる場合です。資産を処分し、債権を回収しても足りないなら、その不足をどう処理するかが問題になります。

債務の処理は、資金の見通しと債権者の意向で分かれます。

  • 換金や回収で足りるなら弁済を進める
  • 不足分は債権放棄などの合意を検討する
  • 不足が解消しなければ法的整理を検討する

一部の債権者に待ってもらうだけでは、債務自体は残ります。返済期限を延ばす合意と、返済義務をなくす合意は別です。債権放棄を受ける場合は、対象の債権と金額を書面で確認します。会社側の税負担が生じるかも、あわせて確認が必要です。

社長が会社へ貸したお金だけが残るなら、その貸付金の放棄を検討する余地があります。ただし、社長が放棄しても銀行や取引先への債務は減りません。債権者ごとの残高に合意内容を反映し、不足が解消したかを見直します。

口頭の期待だけで完済扱いにはできません。合意が成立する見通しを待つ間も、清算人の申立義務の確認は必要です。

清算結了の登記だけを先に済ませればよい、という考え方も避けたいところです。残る債務をどう扱ったかという実態が問われます。

詳しくは債務超過で解散できないという誤解をほどく、完済できない会社の清算と保証の整理をご覧ください。

完済が難しい会社は特別清算・破産・事業譲渡を比較する

完済の見通しが立たない会社では、裁判所が関与する整理を検討します。事業譲渡をおこなう場合も、譲渡後に残る会社の債務をどう処理するかまで考えます。

選択肢は対象と残る課題で見比べる

各手続きは、安そうなものから自由に選べるわけではありません。会社の状態や債権者との関係で、利用できる経路が変わります。

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選択肢 検討する状態 残る確認
通常の清算 弁済等で債務を処理できる 支払いと残務
特別清算 清算に著しい支障・債務超過の疑い 合意と裁判所の手続き
破産 支払不能などの状態 財産と債務の処理
事業譲渡 引き継げる事業がある 残る会社と保証

特別清算の対象は、すでに解散して清算中の株式会社です。表の「著しい支障」と「債務超過の疑い」は、いずれかが開始原因になります。

事業譲渡は、清算の代わりになるとは限りません。事業を譲って得た代金を返済に充て、残る債務について別の整理を進める場合もあるからです。

判断では、資金が尽きる時期も外せません。買い手を探す時間があっても、その間の給与や仕入代金を払えなければ、同じ計画を続けるのは難しくなります。

「譲渡できるか」と「いつまで待てるか」を同時に確認します。状況によっては、法的整理が適切な場合もあります。

特別清算は解散後の株式会社が対象

解散して清算に入った株式会社について、裁判所が関与して整理を進める手続きが特別清算です。営業中の会社が、そのまま通常の清算と同じ感覚で選ぶ手続きではありません。

会社法第510条は、開始の原因として「債務超過の疑いがあること」を定めています。ほかに、清算を進めるうえで著しい支障を来すべき事情がある場合も対象です。

ここで見ているのは、清算中の会社の状態です。決算書に債務超過と書かれていれば、手続きの選択や終了まで自動で決まるものではありません。

債権者の意向や会社財産の状況を確認し、手続きを進められるか検討します。争いがある債務を放置したまま、安く終わりそうという理由だけで進めるのは難しいでしょう。

出典:会社法第510条、e-Gov法令検索(2026年8月確認)。

詳しくは特別清算の要件は解散・清算の状態から判定する、債務超過と連帯保証の確認軸をご覧ください。

支払いが続けられないなら破産の検討を遅らせない

返済期限が来ている債務を、一般的かつ継続的に払えない状態を支払不能と呼びます。帳簿上の債務超過とは、確認する対象が違います。

預金が残っていても、近い支払日に必要な資金を用意できないなら注意が要ります。反対に、債務超過でも営業上の入金によって支払いを続けている会社はあります。財産の不足と支払日の不足を、別々に確認してください。

裁判所を通じて会社の財産や債務を処理する選択肢が破産です。破産法第1条は、その目的に「経済生活の再生の機会の確保」も含めています。経営者を責めるための制度と受け止める必要はありません。

事業を続けるほど未払いが増える場合には、撤退の判断が従業員や取引先への影響を抑えることもあります。M&Aの可能性を調べる場合も、法的整理を検討する時期を失わない進め方が必要です。

出典:破産法第1条・第2条・第15条、e-Gov法令検索(2026年8月確認)。

残せる事業があれば譲渡と清算を組み合わせる

会社全体では返済が難しくても、仕事や設備、人材を引き継ぎたい買い手が見つかる場合があります。事業の価値は、帳簿上の純資産だけで決まるものではありません。

ただし、事業を移せば借入も一緒に消える、とは考えないでください。何を譲り、どの債務が残るかは契約内容によります。買い手が支払う代金の使い道も、残る債権者への対応とつながっています。

契約だけでは判断できない責任もあります。買い手が売り手の商号を続けて使う場合が、そのひとつです。会社法第22条第1項により、買い手も事業上の債務を弁済する責任を負うことがあります。同条の例外も含めた確認が必要です。

また、残る債権者を害すると知って事業を譲る場合には、会社法第23条の2が問題になります。一定の要件のもとで、買い手が債務の履行を請求される規定です。買い手の認識なども関係するため、事業だけ移せば整理が済むとは考えられません。

出典:会社法第22条・第23条の2、e-Gov法令検索。

検討時には、次の点をセットで確認します。

  • 買い手が引き継ぐ事業の範囲
  • 雇用や取引契約の引継ぎ条件
  • 譲渡代金の受取先と使い道
  • 譲渡後に残る債務の整理方針

従業員の働く場所を残せる可能性はあります。一方で、雇用条件がそのまま続くかは別の確認事項です。期待を先に伝えるより、買い手の条件を確かめてから説明する順序が適しています。

清算へ進む順序は財産確認から始める

清算の準備では、会社の財産と支払いを確認し、その結果に合う手続きを選びます。すでに解散している場合は、清算人の役割と申立義務の確認を急ぎます。

入金見込みと支払日を同じ表に載せる

最初に用意したいのは、最新の預金残高と、これからの入出金の予定です。完成された資金繰り表がなくても、通帳や請求書から書き出せます。

決算書は過去の区切りの数字です。廃業を決める場面では、現在までの変化を足す必要があります。特に、すでに払った費用と、まだ請求書が来ていない費用を分けてください。

確認する順序は次のとおりです。

1. 現在使える預金と現金を確認する
2. 入金予定日と回収の見込みを書く
3. 支払先ごとの金額と期限を並べる
4. 廃業にともなう支出を加える

回収が不確かな売掛金は、予定どおり入る前提と、遅れる前提を分けます。楽観的な数字だけで予定を組むと、手続きの途中で資金不足が起きかねません。

給与などの直近の支払日が迫っている場合は、その日付を相談の最初に伝えてください。必要な判断の速さが変わります。

解散後は清算人が残務を引き受ける

株主総会の決議によって解散する株式会社では、清算人が財産や債務の整理を担います。定款や株主総会に別段の定めがなければ、解散時の取締役が清算人になります。

肩書きだけの役割ではありません。会社のお金の動きを把握し、残った契約や債務を処理する立場です。社長が疲れきっている場合でも、書類や口座を放置したままにはできません。

引継ぎのために整理したいものは、次の資料です。

  • 会社名義の口座と残高の記録
  • 債権者ごとの残高と契約書
  • 売掛金と在庫の明細
  • 継続中の契約と解約条件

資料がそろわない箇所には、不明と書いて残します。推測で残高を埋めるより、誰に何を確かめるかが見える形にしてください。

任意の解散では、解散と清算人の登記にも期限があります。会社法第926条・第928条では、原則として解散や選任から2週間以内です。清算結了の登記は、決算報告の株主総会承認から2週間以内となります。同法第929条が定める期限で、いずれも本店所在地でおこないます。

通常の清算を進める場合は、次の順で書類をつなぎます。

1. 経営者から清算人へ財産・債務資料を渡す
2. 清算人が債権者への公告・催告を進める
3. 清算事務を終え、決算報告の承認を受ける
4. 清算結了登記を管轄の法務局へ申請する

登記を司法書士へ依頼する場合も、残務の処理状況は清算人が把握します。登記の予定日を先に置き、未処理の債務を後回しにはできません。

出典:会社法第478条・第926条・第928条・第929条、e-Gov法令検索(2026年8月確認)。

債権者への公告だけでは清算は終わらない

清算に入ると、債権者に債権を申し出てもらう手続きがあります。解散後、遅滞なく官報で公告し、判明している債権者には個別に催告します。

官報公告を出したからといって、個別の催告を省けるわけではありません。会社法第499条は、公告と、知れている債権者への各別の催告を求めています。借入先だけでなく、未払いの取引先なども債権者一覧と照合してください。

清算人は、送付先や対象債権を確認して催告を進めます。公告と個別催告の記録を残すと、対応の漏れを確かめやすくなります。

同条は、申出期間について「二箇月を下ることができない」と定めています。これは債権を申し出てもらう期間の下限です。清算全体がその期間で終わる、という意味ではありません。

回収できていない債権や、処分できない資産があれば、その処理が残ります。税務申告や契約終了の精算が必要な場合もあります。公告をした事実と、債務を払い終えた事実は分けて確認してください。

また、通常の清算の作業中に資金不足が明らかになることもあります。その場合は予定を見直し、通常の清算を続けられるか検討します。

出典:会社法第499条、e-Gov法令検索(2026年8月確認)。

債務超過の疑いがあれば申立義務を確認する

清算中の株式会社に債務超過の疑いがあるとき、清算人には特別清算開始の申立義務があります。会社法第511条第2項の定めです。

義務を負うのは清算人です。対象は、解散して清算中の株式会社に債務超過の疑いがある場面。債務超過額が最終確定するまで待つ、という規定ではありません。

会社を解散させたあとで不足が分かった場合も、放置せず申立てに向けて動きます。清算人が財産や債務の資料を整理し、依頼する弁護士へ共有します。特別清算開始の申立先は裁判所です。

準備では、次の順で事実を確かめます。

1. 解散日と清算人の就任を確認する
2. 換金見込額と債務残高を照合する
3. 不足が判明した経緯と資料を残す
4. 弁護士と申立内容・必要書類を整える

会社法第510条は開始原因、第511条は申立ての主体と義務を定めています。第499条の公告期間が終わるまで、申立義務の確認を待つ関係にはありません。支払不能の有無も伝え、破産を含めた適切な手続きを確認します。

清算人自身が会社の保証人でもある場合は、会社と個人の立場が重なります。自分への貸付金返済を優先したくなっても、その場の判断だけでお金を動かさないでください。

資産を親族へ移したり、特定の相手だけに返したりする対応は、後の手続きで問題になるおそれがあります。支払いの可否は、事情を把握した弁護士等の専門家による確認が必要です。

出典:会社法第499条・第510条・第511条、e-Gov法令検索(2026年8月確認)。

清算費用は登記代だけで見積もらない

債務超過の会社を閉じる予算には、手続きの費用と残る支払いの両方を入れます。通常の清算の登記費用を、そのまま特別清算や破産の総額として使うことはできません。

法定の登記費用と案件ごとの費用を分ける

株式会社の通常の清算に関する登録免許税は、下表のとおりです。これは税額の整理であり、専門家報酬や公告費用を含む見積額ではありません。

登記の種類 登録免許税
解散 3万円
清算人・代表清算人 9千円
清算結了 2千円

上記の合計は4万1千円です。根拠は登録免許税法別表第一第24号で、2026年7月23日時点の法令を確認しています。出典:登録免許税法・e-Gov法令検索。

別途、官報公告の実費や、登記を依頼する場合の司法書士報酬がかかります。税務申告を依頼する費用も、登記とは分けて確認します。

破産の裁判所費用には、予納金基準の例として最低20万円があります。対象は、弁護士を代理人とする自己破産申立ての管財事件です。これに法人1件につき16,264円を加える基準が、提供された検証資料に示されています。

ただし、この額を全国共通の現行額や、申立費用の総額としては扱えません。資料では対象裁判所と基準の適用時点を特定できないためです。依頼する弁護士に申立先の基準を確認し、予算を確定してください。弁護士報酬などは別途かかります。

特別清算にも、この破産の基準額を当てはめることはできません。裁判所へ納める費用と弁護士報酬を分け、案件ごとに見積りを取ります。財産の処分や債務の争いへの対応が増える場合は、追加費用の条件も確認してください。

支払いの総額と必要になる時期をそろえる

見積書に総額が載っていても、そのお金をいつ用意するかが分からなければ動けません。着手時に必要な費用と、後から精算する費用を分けて確認してください。

事業を止めたあとも、予定していた入金がすぐに使えるとは限りません。契約の精算や回収の遅れで、手元に届く時期がずれる場合があります。

予算には次の区分を置くと、見落としを減らせます。

  • 手続きを始めるための費用
  • 終了まで続く会社の維持費
  • 未払いの債務と契約の精算金
  • 経営者個人の当面の生活費

生活費は会社の支払いと別の欄にします。会社口座の残高を、そのまま家計に使えるお金と考えないためです。

見積りを比べる際は、金額だけで判断しないでください。会社の整理だけを含むのか、個人の保証の検討まで含むのかで、依頼範囲が変わります。

費用が足りないときも会社の整理は残る

費用が払えないからといって、会社や借金が自然に消えるわけではありません。残る資金が少ないほど、処理に使える選択肢が狭まるおそれがあります。

追加で借りて費用を作る前に、会社の資産と回収予定を確認します。その資金を何に使えるかは、債権者との関係や予定する手続きによるため、自己判断で取り分を決めないことです。

相談時には、費用不足を隠さず伝えてください。

  • 現在の手元資金を伝える
  • 回収予定と不確かな入金を分ける
  • 費用の支払時期を確認する
  • 資金不足時の進め方を確認する

あさひ国際会計株式会社のM&A仲介は、相談無料・着手金なしの成功報酬制です。報酬は成約時に譲渡代金から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。

成功報酬まで無料という意味ではありません。また、会社の清算費用や未払い債務が、この報酬条件だけでなくなるものでもありません。

会社の清算と連帯保証は別の計画で整理する

会社を清算しても、経営者の連帯保証が自動で解除されるわけではありません。会社側の返済見込みと、個人が負う契約上の責任を並べて確認します。

保証契約は借入先ごとに調べる

借入残高の一覧だけでは、社長個人がどこまで責任を負うかは分かりません。借入先ごとに、保証契約の有無と対象を確認します。

昔の融資だから覚えていない、という状態でも構いません。手元の契約書や返済予定表から始め、不明なものを分けておけば、確認すべき範囲が見えてきます。

整理する項目は次のとおりです。

  • 保証している借入先
  • 現在の借入残高
  • 保証人となっている人
  • 担保に入っている財産

家族だからという理由だけで、会社の借入の保証人になるわけではありません。ただし、家族が保証契約を結んでいたり、財産を担保に入れていたりすれば、個別の確認が必要です。

家族への説明では、確定している責任と、まだ調べている事項を分けてください。「すべて失う」と決めつけることも、「何も影響しない」と約束することも避けられます。

会社の破産と社長の自己破産は別に判断する

法人の破産と、経営者個人の自己破産は別の手続きです。会社が破産するという理由だけで、社長も同時に自己破産する仕組みではありません。

一方、保証債務を個人の収入や財産で支払えない場合は、個人側の整理も検討します。会社の手続きだけに目を向けると、廃業後の暮らしの計画が後回しになりがちです。

住まいや仕事への影響は、財産の名義や担保、保証契約の内容によって変わります。自宅の名義を書き換えれば解決する、といった対応は避けてください。財産の移動は別の問題を生むおそれがあります。

経営者本人の資料も、会社の資料と分けて用意します。家計の支出が見えれば、廃業後に必要な収入を考えやすくなります。責任の整理と生活の立て直しを、同じ時期に進めるためです。

保証債務の整理には会社側の手続きも関係する

一定の要件のもとで、すでに負っている保証債務の整理を求める枠組みがあります。経営者保証に関するガイドラインです。利用したいという希望だけで、保証が外れるものではありません。

既存の保証債務の整理では、同ガイドライン第7項の要件を確認します。会社側で法的債務整理か準則型私的整理を申し立てていることも関係します。同時に申し立てる場合や、申し立てる見込みの場合も含まれます。

資産を正直に開示することだけで利用が決まる、と読むのは適切ではありません。会社の整理方針を含めて要件を確認し、対象となる債権者との合意を検討する枠組みです。

新たな融資で保証を付けないための要件と、今ある保証債務を整理する要件は別です。廃業を考えている社長は、どちらの場面の説明なのかを確かめてください。

出典:全国銀行協会・日本商工会議所「経営者保証に関するガイドライン」(2026年8月原文確認)。詳しくは全国銀行協会の公表資料をご覧ください。

買い手の約束だけで保証解除を判断しない

M&Aで株式や事業を譲る場合も、金融機関に対する保証がどうなるかを確認します。買い手との契約に解除へ向けた約束があっても、それだけで金融機関を拘束するわけではありません。

保証解除は、金融機関の同意や必要な手続きまで確認する事項です。 譲渡契約の締結や経営者の交代を、その完了と同じ意味で扱わないでください。

引継ぎの計画では、次の内容を明らかにします。

  • 解除を確認する保証契約の範囲
  • 金融機関の同意の取得状況
  • 解除に必要な手続きと実施時期
  • 予定どおり進まない場合の対応

解除されたかどうかは、口頭説明だけで済ませず、対象の借入と書面を照らして確認します。会社を離れたあとに不明点を残さないためです。

事業を残す余地は資金があるうちに確かめる

債務超過でも、事業を引き継ぐ相手が見つかる場合があります。清算を検討している段階で譲渡の可能性を調べるなら、残る資金と引継ぎ条件を一緒に示します。

債務超過額だけで買い手の有無は決まらない

買い手が確認するのは、負債だけではありません。引き継いだあとも仕事が続くか、必要な人材や設備が残るかを見ます。売上があっても、引継ぎ後の事業が成り立つかは別途検討が必要です。

当社が支援して成約した案件には、債務超過の会社も含まれます。たとえば、運送業で売上1億円台、債務超過3,000万円規模の会社です。従業員は10名前後でした。

これは当社の成約案件資料を2026年8月に確認した匿名例です。同じ規模なら同じ結果になる、という意味ではありません。個別の買い手や資金の状況によって条件は変わります。

譲渡を検討する際は、続いている仕事と、社長が離れると止まる仕事を分けます。取引や技術が特定の人に依存しているなら、その引継ぎも検討対象です。

詳しくは債務超過の会社は売却できるか。価格と進め方をご覧ください。

従業員と取引先への説明は条件に合わせる

廃業を考えると、従業員への申し訳なさから判断が止まることがあります。ただ、未払いを増やしながら説明を延ばすと、相手が備える時間も減ってしまいます。

まず、営業を続けられる期間と、譲渡の検討状況を整理します。そのうえで、誰に何をいつ伝えるかを決めます。事実が固まっていない段階で、雇用の継続や全額の支払いを約束しないことです。

説明の準備では、次の区別をつけます。

  • すでに決まっている事項
  • 相手の同意が必要な事項
  • 現在確認している事項
  • 次に説明する予定の時期

雇用や契約の扱いには、個別の法的確認が必要です。経営者だけで説明内容を抱え込まず、依頼する専門家と整えていきます。

家族には、会社の現状に加え、当面の生活費の見通しを共有してください。気持ちの問題と数字の問題を分けると、話し合う内容を絞れます。

相談では資料と役割分担を確認する

相談の入口で、すべての書類がそろっている必要はありません。債務超過のおおよその額と、手元資金、近い支払日を伝えるところから始められます。

用意できる範囲で、次の資料をまとめてください。

  • 直近の決算書と試算表
  • 預金残高と入出金予定
  • 借入残高と返済予定表
  • 保証契約書と担保の資料

弁護士は、法的整理や保証債務の整理などを扱います。税理士は税務申告や税負担、司法書士は登記などを担います。依頼内容によって関与する範囲が変わるため、誰が何を担当するかを確認します。

あさひ国際会計株式会社の役割は、再生型M&Aの仲介と資料整備などの後方支援です。事業価値の説明資料やM&Aの条件設計を通じて、経営者ご本人の協議を支えます。

債権者との交渉の主体は、経営者本人と、必要に応じて依頼する弁護士等の専門家です。当社が債権者との法律上の交渉を代理するものではありません。

これまで成約に至った案件では、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。ただし金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。

よくある質問

債務超過でも普通の清算で終えられますか?

実際に使える財産や、成立した債務整理の内容によっては、完済の見通しが立つ場合があります。ただし、不足が残ったまま通常の清算で終える前提にはできません。帳簿上の債務超過額に加え、換金額と廃業費用を確認してください。

社長が追加で資金を入れる案も、個人の暮らしや保証債務への影響まで見て判断します。会社を閉じるために家計の資金を使い切ると、その後の生活が立てにくくなるおそれがあります。

解散済みですが、お金が足りないと分かりました。どうすればよいですか?

清算人が財産と債務を確認し、特別清算や破産を含む手続きの検討を進める必要があります。清算株式会社に債務超過の疑いがある場合は、会社法第511条第2項の申立義務も関係します。

登記が済んでいることを理由に、残る支払いを放置しないでください。解散日と清算人、未払いの内容が分かる資料を整理します。すでに支払った相手と金額も記録に残しておきます。

会社を清算すると連帯保証もなくなりますか?

会社の清算だけで、経営者の連帯保証が自動でなくなるわけではありません。会社の返済や債務整理とあわせて、保証契約の内容と個人側の整理を確認します。

M&Aをおこなう場合も同様です。譲渡契約に買い手の対応を定めたことと、金融機関が保証解除に同意したことは分けて判断します。どの借入について解除が済んだか、書面で確認するところまで予定に入れてください。

債務超過の清算はどのくらいで終わりますか?

財産の処分や債権回収、債権者との調整によって変わるため、一律の期間は示せません。法人破産や特別清算について、裁判所が標準的な所要期間を公表している事実は、提供資料の2026年8月調査では確認されていません。

通常の清算で設ける債権申出期間は、会社法第499条により2か月以上です。ただし、清算全体の終了時期を示す数字ではありません。終了まで必要な作業と、その間の費用を確認して予定を立てます。

まとめ

最新の預金残高と次の支払日、保証している借入をまとめてください。その資料をもとに、清算の進め方と事業を譲る余地、個人の保証の整理をあさひ国際会計株式会社へご相談いただけます。

この記事を書いた人

あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
他社で断られた案件のご相談も承っています。ご相談は無料です。

無料相談はこちら / お急ぎの方はお電話でも承ります 03-5657-7496

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