この記事の対象と結論

自社株の相続による名義変更は、誰が株式を取得するかを確認し、会社の株主名簿に反映する手続きです。借入の返済や連帯保証の整理は、別に確認する必要があります。

親の会社を引き継いだものの、資金繰りが厳しく廃業を考えている。自分に何かあったとき、家族が株式と借金をどう扱うのか不安がある。そうした場合は、名義を書き換えるだけで話を終えないでください。

株式を受け継ぐこと、社長になること、保証責任を負うことは、分けて判断します。 相続人の権利を確かめながら、会社の資金がいつまで持つかも把握しましょう。

会社を続けるか決めていなくても、準備は進められます。ただし、相続を受け入れるか迷っている段階では、株式の売却などを急がず、法的な確認を先に置きます。

自社株の名義変更で変わるのは株主名簿の記録

相続した自社株の名義変更では、会社が管理する株主名簿の記録を整えます。代表者の登記や借入契約の変更まで、まとめて済むものではありません。

非上場の自社株は発行会社への確認から始める

中小企業の非上場株式は、通常、発行した会社で株主名簿を管理しています。上場株式のように、証券会社の口座で手続きを進める前提とは異なります。まずは会社側の管理状況を確認してください。

家族経営では、経理担当者が書類を保管している場合もあります。一方、先代だけが把握し、名簿の所在が分からないことも。見つからないからといって、記憶だけで新しい名簿を作るのは避けましょう。

確認したいのは、次の資料です。

  • 現在の株主名簿
  • 会社の定款
  • 過去の株式取得を示す書類
  • 株券の発行に関する記録

名簿とほかの資料で株数が違う場合は、その理由を調べます。相続の書類を整える前に、亡くなった人がどの株式を保有していたかを把握するためです。

株主名簿と会社の登記は役割が違う

株主名簿は、株主や保有株式を会社が把握するための記録です。会社の登記には代表者などが記録されますが、登記事項証明書だけで個々の株主構成を確認することは通常できません。

ここは混同しやすいところです。先代の死亡に伴う代表者変更が済んでいても、株式の相続が整理されているとは限りません。反対に、株主名簿の更新だけで、新しい代表者が決まるわけでもありません。

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確認するもの 分かること 別に確かめること
株主名簿 株主と保有株式 相続による取得の根拠
会社の登記 登記された代表者等 現在の株主構成
保証契約書 保証の内容 相続後の責任の範囲
決算書 会社の財務状況 今後の支払い余力

同じ人の名前が複数の書類に出ていても、立場は別です。名前の一致だけで、権利や責任をまとめて扱わないようにします。

名義変更は相続の内容を決める手続きではない

株主名簿を書き換えたことだけを根拠に、相続人どうしの権利関係を決めることはできません。先に確認するのは、誰がどの株式を取得したのかという根拠です。

遺言がある場合と、相続人の話し合いで分ける場合では、確認する書類が変わります。話し合いが途中なら、その状態も会社へ伝えます。「長男が経営する予定だから」という説明だけでは足りない場面があります。

経営を任せる話と、財産を分ける話は別です。ほかの相続人が経営に関わらないとしても、株式を受け取る権利について合意しているとは限りません。

後から会社を売る段階になって認識の違いが出ると、買い手との検討も止まりかねません。家族の意向と、書面で確認できる権利を照らし合わせておきます。

名簿を変えないままなら責任を避けられる、とは考えない

相続による権利や義務は、名義変更をしたかどうかだけで決まるものではありません。名簿を先代の名前のままにしても、相続に関する判断を先送りできるとは考えないでください。

借金や保証が心配で相続を受け入れるか迷っている場合は、特に慎重に進めます。株式の処分などの行動が、その後の選択に影響するおそれがあるためです。判断には期限が関わる事項もあります。

また、会社への名義変更の請求と、相続税の確認は別の作業です。書類がそろわない事情があっても、税務の確認まで止めてよいわけではありません。

「まだ決まっていないこと」と「先に確認が必要なこと」を書き分けましょう。未整理のまま放置するより、止まっている理由を見える形にするほうが、次の依頼につながります。

相続の名義変更は取得者の確認から書類の保存まで進める

自社株の名義変更は、株式の保有状況と相続による取得者を確かめ、会社へ請求する順で進めます。提出書類は相続の状況で変わるため、集め始める前に会社側の確認事項を整理してください。

最初に株式と相続関係の食い違いを探す

亡くなった人の保有株式と、相続人の認識が一致しているかを確かめます。会社の説明と家族の説明が違うときは、その差を曖昧にしたまま名義変更へ進まないほうが安全です。

確認の順序は、次のように組み立てられます。

1. 株主名簿で保有株式を確認する
2. 遺言の有無と内容を確認する
3. 相続人の範囲を確認する
4. 株式の取得者が決まっているか確かめる

先代が家族の名前を使って出資していたなど、名義と実態が違う疑いもあり得ます。その場合は、名簿上の名前だけで相続財産を決めず、出資の経緯や過去の合意を確認します。

事実が不明な部分は「不明」と残してください。想像で埋めると、後から書類全体を直すことになり、家族間の不信にもつながります。

必要書類は遺言・協議成立・協議未了で分ける

遺言で取得する場合は遺言書、話し合いで取得する場合は遺産分割協議書が、取得根拠を示す中心の書類になります。協議未了なら、特定の相続人が単独で取得した前提の請求は避けます。

準備の組み合わせは、次の表を出発点にしてください。各社共通の提出書類一覧ではなく、会社へ必要書類を照会するための整理です。

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相続の状況 取得根拠の資料 あわせて用意する資料
遺言で取得者が決まる 遺言書 戸籍等・請求書
遺産分割の協議が成立 遺産分割協議書 戸籍等・請求書
協議が終わっていない 現在ある相続関係資料 未合意事項のメモ

遺言がある場合は、対象の株式と取得者を読み取れるかが出発点です。戸籍等で死亡や相続関係を示し、遺言の種類に応じた手続きの要否も確認します。遺言だけで取得が決まる部分について、協議書を機械的に追加する必要はありません。

協議が成立した場合は、協議書に会社名と対象株式が特定されているかを見ます。相続人の範囲を示す戸籍等と照らし合わせ、署名・押印や印鑑証明書の扱いを会社へ照会してください。記載が曖昧なら、名簿を先に変えず、取得内容を明らかにします。

未了の場合に進めるのは、資料収集と現在の状態の共有です。特定の人への書換請求と、共同相続中の権利行使は分けて扱います。議決権を使う予定があるなら、その予定日も伝えて法的な確認を依頼します。

提出前には、会社側に次の事項を聞いておきましょう。

  • 原本の提示か写しの提出か
  • 本人確認書類の種類
  • 印鑑証明書の要否と取得時期
  • 会社指定の請求書の有無

原本はほかの相続手続きでも使うことがあります。提出先と返却方法を決めてから渡すと、後の作業を止めずに済みます。

取得者から会社へ請求し、更新内容まで確認する

相続により株式を取得した人は、取得を証する資料を添えて会社へ名簿の書換えを請求します。通常の売買と同じ感覚で、亡くなった株主との共同請求を用意する手続きではありません。

会社指定の様式がある場合は、その請求書を使います。様式がなければ、次の内容を記載する形で会社の担当者とそろえてください。

  • 請求する相続人の氏名と住所
  • 亡くなった株主の氏名
  • 対象株式の種類と株数
  • 相続による取得である旨
  • 添付する取得根拠の資料

相続人が役員を兼ねていても、請求する個人と受け付ける会社の処理は分けます。誰がどの資料を受け取り、いつ更新したかを残すためです。

提出後は更新された名簿の内容を示してもらい、氏名・住所と保有株式を照合します。提出書類の控えと会社側の処理記録も保存してください。書類に不備があったなら、追加資料と再提出日を記録します。

登記や税務の手続きが別に残っている場合は、担当者と進み具合も管理します。「相続手続き済み」という一言でまとめず、どこまで済んだかを分けておくと、その後の廃業や売却の検討に使えます。

書類がない場合は作り直す前に経緯を確認する

古い会社では、株主名簿の更新が止まっていたり、株券の所在が分からなかったりします。不足資料がある場合は、まず何が残っているかを並べ、過去の記録と照合してください。

税務申告の添付書類に株主の情報があっても、それだけで会社法上の権利関係が確定するとは限りません。名簿との違いを調べる手がかりとして使います。

過去の日付に合わせて、根拠のない書類を作るのは避けましょう。確認できた事実と、今から整える記録を分ける必要があります。

株券が見つからない場合は、次の順で会社側の記録をたどります。

1. 定款の株券に関する定めを読む
2. 発行や交付の記録を探す
3. 最後の保管者と保管場所を調べる
4. 判明した経緯を専門家へ渡す

発行した株券の紛失と、発行した記録がない状態を混同しないためです。自己判断で代わりの株券を作らず、法的な対応を確認します。売却予定があるなら、その日程も共有してください。

相続人が複数いるときは株式と経営の決定権を整理する

相続人が複数いる場合は、株式の分け方と会社の意思決定をどう進めるかを合わせて確認します。経営担当者が決まっていても、株主としての権利を単独で行使できるとは限りません。

株式が分かれていない間の意思決定を放置しない

株式の分け方が決まっていない間でも、会社には決算や役員に関する判断が生じます。廃業を考える会社なら、事業を止める判断や売却の検討も重なるかもしれません。

共同で相続した株式の議決権は、相続人の連絡役を決めただけで行使できるとは限りません。権利行使者の指定や会社への通知について、法的な確認が必要です。定款と相続の状況を弁護士等に示し、予定する決議に向けた手順を確認してください。

家族の話し合いでは、次の事項を分けると整理しやすくなります。

  • 当面の経営を担う人
  • 株式を取得する人
  • 会社への連絡をまとめる人
  • 未合意の事項とその理由

連絡役になった人が、株式を自由に処分できるわけではありません。委任されている範囲があるなら、その内容も書面で確認しておきます。

譲渡制限のある株式でも相続と売却は分けて考える

定款に譲渡制限があっても、相続による取得を通常の株式売買と同じように扱うわけではありません。相続では一般に、売買の際の譲渡承認とは区別して考えます。

一方、相続で取得した人に対して、会社が売渡しを求められる旨を定款に設けている場合があります。譲渡制限の条項だけを見て、確認を終えないでください。相続に関係する定めがあるかも読みます。

その後、相続人が第三者へ売るときは別です。会社法第127条は「株主は、その有する株式を譲渡することができる。」と定めています。ただし、譲渡制限株式では会社の承認を確認する必要があります。出典:e-Gov法令検索「会社法」。

相続の名義変更と、相続後の売却を同じ申請で済ませようとせず、それぞれの取得根拠と手順を整理しましょう。

家族へ均等に分ける案は経営への影響も比べる

財産を公平に分けたいという希望と、経営の判断を進めやすくしたいという希望は、両立に工夫が要る場合があります。株式を細かく分けると、会社売却などで意見がまとまりにくくなることもあります。

ただし、経営する人へ集めればよいと単純に決める話でもありません。ほかの相続財産や家族の生活費も関わります。株価だけで判断しないことです。

話し合いでは、各人が何を求めているかを確認してください。会社を残したい人、現金が必要な人、責任を増やしたくない人では、納得できる条件が違います。

取得者を決める前に売却の可能性を調べることは、判断材料になり得ます。ただし、見込価格は現金と同じではありません。買い手や条件が決まらない段階で、その金額を家族へ支払える前提にしないようにします。

廃業の方針も株主の権利を確認してから決める

株式を相続した人が廃業を望んでも、その人だけで会社の解散を決められるとは限りません。ほかの株主の権利や、必要な会社の決議を確認します。

会社法第471条は、株式会社の解散事由に「株主総会の決議」を挙げています。任意に解散する場合も、社長の意思を告げるだけで手続きが済むわけではありません。出典:e-Gov法令検索「会社法」。

相続人どうしの話し合いが続いていても、会社の支払いは進みます。合意ができるまで営業を続けるなら、その間の資金をどう確保するかも検討対象です。

詳しくは自社株の相続で家族に渡るもの、廃業を考える社長が整理したい株と保証の境界をご覧ください。

借入と連帯保証は株式の名義とは別に確認する

自社株を相続しても、それだけで会社の借入すべてが相続人個人の借金になるわけではありません。ただし、亡くなった人の保証債務などは、株式とは別に相続の確認が必要です。

会社の借金と亡くなった人の債務を分ける

会社名義の借入は、原則として会社が返済する債務です。一方、先代が個人で借りたお金や、会社の借入に付けた保証は、個人側の確認事項になります。

会社と個人のお金が混ざっていると、この区別が見えにくくなります。通帳の名義や決算書の科目だけで済ませず、契約と実際の資金移動を照らし合わせてください。

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項目 確認の対象 主に見る資料
会社の借入 会社の返済義務 借入契約書
先代の個人借入 相続する債務 個人の契約書
先代の連帯保証 保証責任の承継 保証契約書
先代から会社への貸付 相続する債権 帳簿と入出金記録

会社への貸付金も見落とせません。株式とは別の財産であり、会社に返済余力があるかも関わります。株式の取得者だけを決めても、貸付金の扱いが未整理なら、家族間の問題が残るおそれがあります。

保証契約は名義変更の書類と別に読む

保証の範囲は、契約の種類や内容で変わります。「先代が保証人だった」という説明だけでは、相続後の責任を判断できません。まず契約書の写しを探します。

民法第446条は「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」と定めています。電磁的記録についての定めもあります。紙が見つからないだけで、保証がないと判断しないでください。出典:e-Gov法令検索「民法」。

確認したい事項は次のとおりです。

  • 保証の対象となる借入
  • 保証人として記載された人
  • 保証する範囲や上限
  • 契約の締結と変更の経緯

継続する取引を対象にした保証では、死亡と保証対象の関係も確認が必要です。株式を受け取る人を決める合意だけで、債権者に対する保証責任まで決まるとは考えないでください。

新しい保証への署名は相続の名義変更と切り離す

金融機関への届出で、新しい代表者や相続人の署名を求められる場合があります。その書類が、単なる変更の届出なのか、新たな保証契約なのかを確認します。

「会社を引き継ぐための書類」とひとまとめにしないことです。説明を受ける際は、署名する立場と負担する責任を分けて聞いてください。記入前に写しを受け取り、内容を検討できる状態にします。

事業承継には、既存の保証の取扱いを検討する余地もあります。経営者保証に関するガイドラインとその特則では、承継時の保証について考え方が示されています。ただし、名義変更をすれば保証が外れる制度ではありません。

制度の説明は、全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」で確認できます。個別の扱いは契約と金融機関の判断を踏まえて検討します。

家族への説明は株式・債務・生活費を分ける

家族が知りたいのは、株式の名義だけとは限りません。「自宅への影響はあるか」「生活費を会社から受け取れるか」といった不安も重なっています。

説明には、会社の資金と個人の資金を分けたメモを使います。会社の預金が残っていても、そのまま相続人が生活費として使えるわけではありません。支払先や資金の性質を確認する必要があります。

また、会社を相続人が引き継ぐかどうかと、故人の財産・債務をどう扱うかは、別々の判断が絡みます。家族への負担を減らしたいときほど、財産の移動を急がず、責任の範囲を確かめてください。

詳しくは連帯保証人が死亡したあとの債務は誰が負う|相続人が確認すべき責任の範囲をご覧ください。

廃業を迷うなら名義変更と会社の資金確認を並行する

相続の書類がそろうまで、会社の資金確認を待つ必要はありません。営業を続けられる期間を把握し、その間に承継・売却・廃業の条件を比較します。

株価と使える現金を同じものとして扱わない

自社株には評価額があっても、すぐ現金に換えられるとは限りません。相続に関する税務上の評価と、第三者が買う価格も、同じとは限らないものです。

廃業を検討する段階では、評価額だけを聞いて安心せず、支払日に使える現金を確かめます。会社の運転資金と相続人の納税資金を混ぜないようにしてください。

用意したい資料は、次のとおりです。

  • 直近の決算書と試算表
  • 預金残高が分かる資料
  • 入金予定と支払予定
  • 借入の返済予定表

売掛金も入金日までは支払いに使えません。回収が遅れているものを予定どおり入ると扱うと、必要な資金を少なく見積もるおそれがあります。

詳しくは自社株の相続税が払えないときの資金づくりと、廃業しても残る負担の見極めをご覧ください。

続ける・譲る・たたむを同じ条件で比べる

家族が社長になる以外にも、第三者へ譲る道や事業を終える道があります。どれを選ぶかは、株式の取得者だけでなく、資金と事業の状況を踏まえて考えます。

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選択肢 主に確認する条件 残りやすい課題
家族で続ける 経営担当と運転資金 返済と保証の取扱い
第三者へ譲る 買い手と譲渡条件 権利整理と契約調整
廃業を進める 債務と終了費用 未払金と個人保証

続ける場合は、経営を担う人がいるだけでは足りません。引継ぎ中の損失や返済を賄う見通しも必要です。売却なら、買い手が現れるまで営業を維持できるかが問題になります。

任意の解散では、株主総会の決議後に清算へ進みます。清算人が残った財産や債務を整理する流れです。通常の清算を考える際は、次の作業と費用を見込んでください。

1. 解散の決議と清算人の確認
2. 解散・清算人に関する登記
3. 債権申出の公告と個別の催告
4. 債権回収と債務の弁済
5. 残余財産と清算結了の処理

定款や株主総会で別段の定めがなければ、解散時の取締役が清算人となります。債権者への公告に加え、分かっている債権者への個別の催告も必要です。根拠は会社法第475条・第478条・第499条です。出典:e-Gov法令検索「会社法」。

債務を払い切れないなら、通常の清算だけで終えられる前提を置かないでください。特別清算は解散後の清算株式会社を対象に、裁判所が関与する手続きです。破産では、財産や債務が破産手続の中で処理されます。

どの道でも、名簿を書き換えただけで借入や個人保証が消えるわけではありません。必要な資金と債務の処理方法を、選択肢ごとに比べます。

相続した株式を売るなら売り手の権限を整える

株式の売却では、売り手がどの株式を処分できるかを買い手側も確認します。先代名義のままでも検討の相談はできますが、相続関係が曖昧なまま契約を急ぐのは避けたいところです。

買い手候補へ説明する際は、確定した事項と未確定の事項を分けます。家族全員が賛成しているつもりでも、売却価格や代金の分配で意見が変わることがあります。

整理しておきたいのは、次の事項です。

  • 売却対象となる株式
  • 売り手となる人とその権限
  • ほかの株主の売却意向
  • 相続手続きの未了事項

株式譲渡では、会社の法人格は変わらず、借入も会社に残ります。株式の代金を受け取るのは売り手である株主です。会社の返済資金へ回すなら、その資金移動も別に検討します。

つまり、相続の名義変更で売り手を明らかにした後も、会社の借入と個人保証の処理は残ります。売却価格だけを見て、会社の返済と家族の手取りを同時に賄えると考えないことです。

事業を残せても保証の処理は別に確かめる

会社の株式や事業に買い手が付いた場合でも、保証の取扱いは別途確認します。売り手と買い手の契約だけで、金融機関との保証契約が消えるわけではありません。

中小M&Aガイドラインでは、保証の解除や引継ぎが契約上の検討事項とされています。金融機関等の判断が関わるため、解除を予定する時期と確認する書面を整理しておきます。出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」。

事業譲渡では、譲る財産や契約を選ぶ検討ができます。ただし、引継ぎ先が同じ商号を使い続ける場合には注意が必要です。会社法第22条により、買い手も事業上の債務を負う場合があります。出典:e-Gov法令検索「会社法」。

責任を負わない旨の登記や通知には要件があるため、契約だけで判断しません。「事業だけ移せば借入や保証も片付く」という前提は避けます。

従業員の雇用や取引契約の引継ぎも検討対象です。決まっていない条件を約束せず、事業を残す可能性と残る債務の処理を並べて考えます。

相談では名義変更の依頼範囲と会社の出口を分けて伝える

相談するときは、相続の権利確認、税務、登記、M&Aの検討を分けて伝えると、依頼範囲が明確になります。書類がそろっていなくても、不足しているものと困っていることから整理できます。

書類ごとに担当を分け、止まっている判断から渡す

相続と廃業が重なる案件では、必要な専門分野が複数にまたがります。担当者の肩書きだけで決めず、今回の依頼で何を確認し、何を成果物として受け取れるかを聞きます。

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担当する分野 主な確認事項 依頼時に伝えること
弁護士 相続の争い・債務・保証 家族の合意と契約内容
税理士 株式評価と申告・納税 財産と資金の状況
司法書士 代表者変更などの登記 役員の状況と変更内容
当社 再生型M&Aの仲介 営業状況と売却意向

廃業も視野に入れる場合は、名簿の更新だけを先に終える順序にこだわりません。相続を受け入れる判断や当面の資金に関わる資料から、次のように担当へ渡します。

1. 会社担当者から名簿と定款を受け取る
2. 相続資料と保証契約を弁護士等に示す
3. 登記の現状を司法書士へ伝える
4. 帳簿と貸付記録を税理士へ示す
5. 権利整理の進捗と資金状況を当社へ伝える

代表者が不在なら、登記に先立つ選任の確認も急ぐ必要があります。保証の請求が届いている場合も同様です。上の順序を一律に待つのではなく、期限のある判断を並行して進めます。

株主名簿では売り手、登記では会社の代表者を確かめます。保証契約では個人の責任、貸付記録では相続する債権を把握する流れです。別々に確認した結果を合わせると、誰が契約し、誰に代金が入り、何が残るかを整理できます。

費用は名義変更以外の作業も含めて確認する

費用の見積りでは、「相続手続き一式」の中身を確認してください。株主名簿の更新だけなのか、相続関係の確認や税務申告まで含むのかで、作業量が変わります。

見積書では、次の事項を分けて確認します。

  • 書類取得などの実費
  • 相続関係の確認にかかる報酬
  • 税務申告や登記の費用
  • 追加作業が生じる条件
  • 支払いが必要になる時期

確認できる共通の金額幅がないため、名義変更の相場を一律には示せません。資料不足や家族間の争いがあれば、単純な記録更新とは別の作業が必要になります。

手元資金が足りない場合は、契約前に支払い条件を伝えてください。払えないからと連絡を止めても、相続や税務の期限は解決しません。先に必要な確認と、後から進められる作業を担当者と整理します。

当社は再生型M&Aの仲介とスキームの提案を担う

あさひ国際会計株式会社は、再生型M&Aの仲介をおこなっています。相続した会社を続けるのが難しい場合も、事業の引継ぎ先や譲渡条件を検討する立場です。

当社は、連帯保証の解除を見据えたスキームをご提案します。金融機関との協議は経営者ご本人が主体となり、必要に応じて依頼する弁護士等が対応します。

当社の後方支援は、再生型M&Aの仲介とスキームの提案を通じておこないます。 債権者との交渉の代理や相続の紛争対応は、当社の業務には含みません。個別の法的判断は、依頼者が委任する専門家が担います。

相談は無料で、着手金はありません。M&Aの報酬は成功報酬のみで、成約時に譲渡代金から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。相続や登記など、別途依頼する専門家の費用まで無料になる意味ではありません。

初回相談は分かる範囲のメモで始める

相談する経営者は珍しくありません。家族の会社を受け継ぐか、たたむか迷っている段階でも、事情を整理するところから始められます。結論を決めてから連絡する必要はありません。

初回は、次の内容を分かる範囲でまとめてください。

  • 先代が亡くなった時期
  • 株式の取得者が決まっているか
  • 現在の代表者と経営担当者
  • 借入と保証契約の有無
  • 直近で資金が不足しそうな支払い

資料がない項目は、そのまま伝えれば足ります。社内や家族に確認中なら、その状況も添えてください。情報をそろえることに時間を使いすぎず、期限が迫る事項から共有します。

M&Aが適さない場合もあります。状況によっては、破産・清算などの法的整理が適切です。従業員や家族への影響も踏まえ、事業を残す可能性と終える場合の負担を比べます。

よくある質問

自社株の相続による名義変更は法務局でおこないますか?

通常、株式の名義変更は、発行会社に請求して株主名簿の記録を整える作業です。法務局でおこなう代表者などの登記とは別です。先代が代表者でもあった場合は、株式の相続と役員・代表者に関する手続きを分けて確認してください。会社の登記を変更しても、相続人どうしの株式の分け方まで決まるわけではありません。

相続人の話し合いが終わるまで何もできませんか?

株式の分け方が未確定でも、資料の収集や会社の資金確認は進められます。遺言の有無や保有株式を確認し、未合意の事項を整理してください。一方、株式の売却や議決権の行使は、権限の確認が必要です。相続を受け入れるか自体を迷っている場合も、処分などを急がず、行動が選択に与える影響を確認します。

赤字の会社なら相続した株式に価値はありませんか?

赤字だけを理由に、株式の価値や買い手の有無を決めることはできません。資産と負債の状況に加え、事業の引継ぎによって維持できる売上なども検討対象になります。ただし、税務上の評価額と実際の売却価格は別です。売れる見込みがあっても、成約前の代金を納税や返済の確保済み資金として扱わないでください。

名義変更を済ませれば、先代の連帯保証も整理できますか?

株主名簿の名義変更だけで、先代の保証債務の扱いが決まるものではありません。保証契約と相続の状況を別に確認する必要があります。後継者が新たな保証へ署名する場合も、単なる届出と同じ扱いにしないでください。会社を譲る場合の保証解除については、金融機関の同意が前提となり、株式の売買だけで完了するとは限りません。

まとめ

まず、株主名簿と保証契約書の所在を確認し、株式の取得者が決まっているかを書き出してください。廃業も考えているなら、次の支払いまでに使える現金と、相続・会社運営の未了事項を一緒に整理して相談へ進みましょう。

この記事を書いた人

あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
他社で断られた案件のご相談も承っています。ご相談は無料です。

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