目次
この記事の対象と結論
この記事は、銀行とのリスケ交渉を始めたものの、何を提出し、どう説明すべきか迷っている経営者向けです。借入の連帯保証があり、交渉が決裂した場合を考えて眠れない方もいるかもしれません。
結論からいえば、銀行が見たいのは「苦しいという訴え」だけではありません。資金不足の原因、返済条件を変えた後の見通し、経営者が実行する改善策です。
返済日が迫っているなら、資料が完成するまで連絡を遅らせないでください。まず担当者へ状況を伝え、面談日と提出資料を確認します。そのうえで、数字と説明の内容をそろえていきましょう。
リスケ交渉を始める前に整理すること
リスケは借入をなくす手続きではない
リスケとは一般に、銀行と協議して返済条件の変更を求めることです。元金返済の負担を抑え、当面の資金繰りを守るために検討されます。
ただし、借入そのものが消えるわけではありません。返済条件の変更が認められるか、どのような条件になるかは、銀行の判断を伴います。
利息や今後の返済方法も含め、合意内容を確認する必要があります。「返済が止まる手続き」とだけ考えると、認識のずれが生じます。
連帯保証への影響を分けて考える
会社の返済条件が変わっても、経営者の連帯保証が当然に解除されるわけではありません。会社の債務と、保証人としての責任は分けて確認します。
民法454条によると、連帯保証人には催告の抗弁と検索の抗弁がありません。会社への請求を先に尽くすよう求められる立場ではない点に注意が必要です。
まずは融資契約書と保証書の写しを集めます。保証の対象、保証人、極度額などを確認してください。書類が見つからない場合は、銀行へ写しの確認を依頼します。
交渉の目的を一文にする
「返済が苦しいので待ってほしい」だけでは、希望する条件が伝わりません。次の内容を一文にまとめます。
- いつから資金が不足するのか
- 何が資金不足の原因なのか
- どの返済負担なら継続できるのか
- 改善のために何を実行するのか
目的は返済から逃れることではありません。事業を維持し、返済可能性を立て直すための時間を確保することです。この軸が説明の土台になります。
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銀行とのリスケ交渉に必要な資料

最初にそろえる財務資料
銀行ごとに求める資料は異なります。まず担当者へ必要資料を確認し、一般には次のような資料を準備します。
- 過去の決算書
- 最新の試算表
- 資金繰り表
- 借入の一覧表
- 返済予定が分かる資料
- 融資契約書と保証書
- 納税状況が分かる資料
数字が未確定の部分は、推測で埋めないほうが安全です。暫定値であれば、その旨と確定予定を明記します。
資金繰り表は入出金の時期を合わせる
損益が黒字でも、入金より支払いが先なら資金は不足します。資金繰り表では、売上ではなく実際の入金時期を反映させます。
とくに確認したい項目は以下のとおりです。
- 売掛金の入金予定
- 仕入代金の支払予定
- 給与や社会保険料
- 税金の支払予定
- 借入金の返済予定
- 臨時支出の見込み
希望的な売上を入れると、計画の信頼性が下がります。受注済み、商談中、未着手を分けて扱うと、前提が伝わりやすくなります。
借入一覧は銀行ごとに分ける
複数の銀行から借りている場合は、借入条件を一つの表にまとめます。
→ 横にスクロールできます
| 確認項目 | 記載する内容 | 確認資料 |
|---|---|---|
| 借入先 | 銀行・支店 | 返済予定表 |
| 借入残高 | 現在の残高 | 残高資料 |
| 返済条件 | 元金・利息 | 融資契約書 |
| 保証関係 | 保証人・保証協会 | 保証書 |
| 担保関係 | 対象資産 | 契約書 |
一部の銀行だけに異なる説明をすると、不信を招くおそれがあります。各行へ示す数字と経営方針は、整合させておきます。
改善計画は行動と数字を結び付ける
改善計画には、単なる目標ではなく具体的な行動を書きます。「売上を増やす」「経費を削る」だけでは、実現方法が見えません。
たとえば、不採算取引の見直し、遊休資産の処分、役員支出の整理などです。自社で実行できる内容と、取引先の同意が要る内容も分けます。
計画の前提が崩れた場合に、何を見直すかも整理してください。修正の基準があると、状況を管理していることが伝わります。
銀行との面談で伝える順番
資金不足の原因から説明する
面談では、返済条件の希望だけを先に話さないほうが伝わりやすくなります。次の順番で説明します。
1. 現在の経営状況を伝える
2. 資金不足の原因を説明する
3. 今後の入出金見通しを示す
4. 希望する返済条件を伝える
5. 改善策と報告方法を示す
原因を外部環境だけに求めると、自社の改善余地が見えません。経営判断の反省点がある場合は、それも含めて話します。
不利な情報を隠さず共有する
税金の滞納、支払いの遅れ、簿外債務などがあれば、交渉への影響が考えられます。後から判明すると、提出資料全体への信頼が揺らぎます。
分からないことを、その場で無理に答える必要はありません。「確認して回答する」と伝え、後日書面で補足します。
過去の説明と数字が変わった場合は、変更理由も示してください。数字の修正より、説明のない食い違いのほうが問題になりやすいためです。
希望条件には根拠を付ける
希望する返済条件は、資金繰り表と対応させます。「払える金額」だけでなく、支払い後に事業を継続できるかを見ます。
資金を使い切る計画では、急な売上減少や支出に対応できません。運転資金をどの程度残す必要があるか、事業の実態から説明します。
交渉で聞かれやすい事項は、面談前に想定しておきましょう。
- なぜ今の時期に不足したのか
- 経営者は何を改善したのか
- 計画未達ならどう対応するのか
- 追加融資なしで継続できるのか
- 他行には何を依頼しているのか
30日以内に進めるリスケ交渉の手順

今日おこなうこと
返済日が迫っているなら、銀行担当者へ早めに連絡します。無断で返済できない状態にする前に、相談の意思を示してください。
連絡時には、現在の資金残高、次の大きな支払い、返済予定を手元に置きます。詳しい説明ができなくても、面談日と必要資料を確認できます。
同時に、資金の流出を見直します。ただし、事業継続に必要な支払いを一律に止める判断は避け、優先順位を整理します。
今週おこなうこと
面談までに、財務資料と借入一覧を整えます。経理担当者や顧問税理士へ、試算表の更新状況も確認してください。
複数行と取引がある場合は、各行への説明内容をそろえます。訪問順によって説明が変わらないよう、要点を一枚にまとめる方法もあります。
この段階で、通常返済を続けた場合と条件変更後の資金繰りを比べます。
→ 横にスクロールできます
| 状況 | 資金への影響 | 判断材料 |
|---|---|---|
| 通常返済 | 流出が続く | 資金残高 |
| 条件変更 | 負担を抑える | 継続見通し |
| 改善未達 | 再び不足 | 次の選択肢 |
面談後におこなうこと
銀行からの質問と追加資料を一覧にします。回答期限が示された場合は、社内の担当者と提出予定を共有してください。
口頭での認識だけに頼らず、依頼内容と提出内容を記録します。条件の提示を受けたら、対象となる借入、期間、利息、保証関係を確認します。
合意後も、試算表や資金繰りの報告を求められることがあります。計画との差異を確認し、悪化したときは早めに説明できる体制を作ります。
リスケ交渉が難航した場合の選択肢
資料と計画を作り直す
銀行が慎重な理由を確認します。数字の不足、改善策の弱さ、他行との足並みなど、理由によって対応は変わります。
計画の前提に無理がある場合は、売上予測や支出を見直します。条件を通すために数字を整えるのではなく、実行可能性を高めるための修正です。
公的な相談先として、中小企業活性化協議会があります。47都道府県に設置された公的機関です。
リスケ後の出口も並行して考える
リスケは時間を確保する選択肢ですが、事業の収益力が戻らなければ、資金不足が再発するおそれがあります。
改善の見込みが薄いときは、事業譲渡やM&A、法的整理も含めて検討します。状況によっては、破産や清算などの法的整理が適切な場合もあります。
破産手続きを主に扱う専門家と、事業を残す前提の再生を扱う専門家では、得意分野が異なります。選択肢ごとに相談先を分けることが大切です。
リスケの継続に不安がある方は、リスケの限界が近いと感じたら考える次の一手もご覧ください。
M&Aと連帯保証を同時に検討する
事業に顧客、従業員、許認可、技術などの価値があれば、赤字や債務超過でもM&Aを検討できる場合があります。ただし、会社の譲渡だけで連帯保証が外れるとは限りません。
M&A支援機関協会では、2025年1月1日施行の自主規制ルールにより、最終契約書の草案作成時に経営者保証の解除を譲受け事業者へ義務付ける条文案を盛り込むことを定めています。譲受け事業者の資力についての調査義務も定められました。
あさひ国際会計株式会社が支援して成約した案件では、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。ただし、金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。
詳しくは廃業したら連帯保証はどうなるのかをご覧ください。
当社は、金融機関との協議に必要な資料の整備、事業価値の説明資料の作成、M&Aの条件設計を担います。協議の主体は経営者ご本人です。法的な対応が必要な場合は、依頼者が委任する弁護士等の専門家が担います。
よくある質問
リスケを依頼すると銀行との関係は悪化しますか?
相談したことだけで関係がどうなるかは、一律には決まりません。連絡を避けるより、資金状況と改善策を早めに共有するほうが、今後の協議につながりやすくなります。説明内容と提出資料の整合性を保つことも大切です。
資料が完成していなくても銀行へ相談できますか?
返済日が迫っている場合は、完成を待たずに担当者へ連絡してください。準備中の資料と提出予定を伝え、銀行が求める資料を確認します。未完成の数字を確定値として提出することは避けましょう。
リスケ中でもM&Aは検討できますか?
会社の財務、借入契約、事業価値などによって異なりますが、検討できる場合があります。銀行への説明や連帯保証の扱いも関係するため、M&Aだけを切り離さず、全体の進め方を設計します。
銀行がリスケに応じない場合は自己破産ですか?
直ちに自己破産だけになるわけではありません。計画の修正、公的機関への相談、事業譲渡、M&A、法的整理などを比較します。会社と個人の状況により適した方法は変わるため、早い段階で複数の専門家へ相談する方法があります。
まとめ
銀行とのリスケ交渉では、資金不足の原因、必要な返済条件、改善策を数字で説明します。決算書や試算表だけでなく、資金繰り表、借入一覧、保証関係の資料も整理してください。
交渉中は、都合の悪い情報を隠さず、分からない事項は確認後に回答します。複数行と取引がある場合は、説明内容の整合性にも注意が必要です。
リスケは事業を立て直す時間を確保する手段です。一方で、改善が難しい場合は、M&Aや法的整理も選択肢になります。借入と連帯保証の両方を見ながら、返済が止まる前に次の道を検討してください。
▶ 関連資料:『銀行に融資を止められたら』(全12ページ・無料)をダウンロードいただけます。
▶ ほかの資料もあります:無料資料の一覧(全17冊)から、いまの状況に近いものを選べます。
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この記事を書いた人
あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
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最終更新日: 2026年8月21日