この記事の対象と結論

株式譲渡は株主が株式を譲る方法、事業譲渡は会社が事業を選んで譲る方法です。廃業を考えているなら、手続きに加え、借入と連帯保証の扱いまで比べて選びます。

「営業を続けるのは厳しい。でも、従業員と家族をどう守ればよいのか」。そんな状態で、会社を譲る道を探している経営者が対象です。相談する経営者は珍しくありません。結論が出ていない段階から、状況を整理できます。

どちらの方法も、譲渡の合意だけで経営者の連帯保証が外れるわけではありません。 会社に残る借入、代金の受取人、保証解除の条件を分けて確かめます。事業を残す道と、経営者自身の負担を整理する道を、あわせて検討してください。

株式譲渡と事業譲渡は、譲る対象と代金の受取人が違う

株式譲渡では会社の株主が変わり、事業譲渡では対象の事業が別の会社へ移ります。代金の受取人も異なります。同じ売却額でも、その後に使えるお金の行方は違うのです。

株式譲渡では、会社を残して株主が変わる

経営者が保有する株式を買い手へ譲ると、会社の持ち主が変わります。会社そのものは同じ法人のままです。会社名義の財産や契約は、原則としてその会社に残ります。

借入についても同じです。「買い手が会社を引き継ぐ」と説明されても、借り手が買い手個人に変わる意味ではありません。返済義務を負うのは引き続き会社です。買い手の資金力や運営方針が、返済の見通しに影響します。

会社法第127条は、株主について「その有する株式を譲渡することができる」と定めています。ただし、譲渡制限株式では会社の承認が求められます。経営者が売却を望んでいても、株主構成や定款の確認は省けません。

経営者と株主が同じとは限らない点にも注意してください。家族などが株式を保有していれば、誰の株式をどこまで譲るのかを整理します。

出典:会社法第127条・第2条(e-Gov法令検索)

事業譲渡では、引き継ぐ範囲を具体的に決める

店舗や工場などの事業を、対象を決めて別の会社へ譲るのが事業譲渡です。全部の事業を譲る場合も、一部だけを譲る場合もあります。売り手となるのは、その事業を営む会社です。

対象は契約書や一覧表で具体化します。「店舗を引き継ぐ」という説明だけでは、買い手と認識がずれかねません。

  • 設備や在庫のうち何を譲るか
  • どの取引契約を引き継ぐか
  • 従業員の雇用をどうつなぐか
  • 売掛金や買掛金をどう扱うか

事業が移っても、譲った会社がその場で消えるわけではありません。会社に残る借入や未払いへの対応が続きます。すべての事業を譲る場合は、営業を終えた会社の整理まで計画に含めます。

手元の設備が会社の所有物かどうかも確認対象です。借りている設備まで、自社の判断だけで売れるとは考えないでください。

比較表は「会社に残るもの」から読む

廃業を検討する場面では、引き継げるものと同時に、譲渡後に残る負担を確認します。比較の出発点は次の表です。

→ 横にスクロールできます

比較する項目 株式譲渡 事業譲渡
譲る対象 株主が持つ株式 選んだ事業・財産
売り手 株主 事業を営む会社
代金の受取人 株式を売った株主 事業を譲った会社
会社の法人格 同じ会社が続く 売り手の会社も残る
会社の借入 同じ会社に残る 原則売り手に残る
契約の扱い 原則同じ会社で継続 個別の承継確認が要る
経営者保証 別途確認・手続き 別途確認・手続き

事業譲渡の借入欄にある「原則」は、例外があるためです。債務を引き継ぐ合意の内容や、商号を使い続ける場合の責任も確認します。

また、株式譲渡なら契約確認が不要という意味でもありません。株主や代表者の変更を、取引先への通知や承諾の条件としている契約があります。法人が同じでも、契約書を読む作業は残ります。

契約を移す手間だけで選ぶと、借入や保証への対応が抜けかねません。表の各項目に自社の状況を書き添えると、未確認の部分を見つけやすくなります。

譲渡代金と、社長が使えるお金は分けて考える

経営者個人が株式を売る場合、その代金は原則として個人が受け取ります。一方、事業を売った代金は会社のお金です。個人の生活費にそのまま回せるわけではありません。

売却額だけで比べず、誰に入金され、何に使い、何が残るかまで確認します。 会社の返済原資と、社長個人の生活資金を分けると、見落としを減らせます。

たとえば、事業譲渡で会社に代金が入っても、返済や残務の支出が続く場合があります。見かけの代金が高くても、手元に余裕が生まれるとは限りません。税金や専門家費用も含めて、入金後の使途を確かめてください。

価格の提示を受けた段階で、受取人別の資金表を作ります。会社と個人を合算した数字だけでは、支払日に使える資金が足りないおそれがあります。

入金の時期も確認事項です。代金を後から受け取る条件なら、目先の給与や返済に使える前提では計画を組めません。

借入と連帯保証は、どちらの譲渡でも別に確認する

株式譲渡でも事業譲渡でも、会社の借入と経営者の保証契約は分けて扱います。買い手との約束に加え、金融機関等の判断と手続きまで確認してください。

「借入も引き継ぐ」の意味を契約ごとに確かめる

株式を譲った場合、会社が借入を抱えたまま事業を続けます。買い手が株主になることと、旧経営者の保証解除は別の問題です。「会社ごと買う」という説明だけでは、保証の扱いは分かりません。

事業を譲る場合も、借入が自動的に買い手へ移るとは考えないでください。売り手の会社に借入が残るなら、譲渡代金などで返す計画が要ります。返済しきれない見通しなら、残債の整理も検討対象です。

借入先ごとに、次の内容を対応させます。

  • 借入残高と返済の期日
  • 保証人になっている人
  • 担保に入っている財産
  • 譲渡後の返済原資
  • 保証解除に向けた確認状況

一覧にすると、借入の話と保証の話を混同しにくくなります。代表者の交代に伴って話題になった契約だけで、確認を終えないでください。別の借入や契約で、保証が残っていないかも調べます。

家族などが保証人となっている場合は、その契約も記載します。経営者本人の保証だけを整理しても、家族の負担まで解消するとは限らないためです。

買い手の約束と、金融機関の同意は違う

売買契約に保証解除に関する約束を入れても、金融機関はその契約の当事者ではありません。売り手と買い手の合意だけで、金融機関と経営者の保証契約が消える仕組みではないのです。

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、保証の扱いは最終契約の主要項目です。解除や引継ぎの義務に加え、実行されなかった場合の扱いも検討する構成です。

条件を詰める際は、次の内容を確認します。

  • 誰がどの手続きを進めるか
  • 金融機関へ何を確認するか
  • 解除までの予定をどう置くか
  • 未了の場合にどう対応するか

買い手の「対応するつもりです」という説明だけでは、完了の見通しが立ちません。手続きと担当者を具体化し、実行後も確認を続ける条件を考えます。

また、解除が遅れた場合の約束があっても、その間の負担が消えるとは限りません。契約上の備えと、実際に解除できる見通しを並べて確認してください。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」

保証解除は、完了を示す資料まで確認する

契約の締結日と、保証解除の完了日は一致しない場合があります。株式譲渡では、代表者変更などを経て正式な手続きを進める場面もあります。予定と完了は別です。

確認するのは「買い手が申請したか」だけではありません。金融機関等がどう判断し、対象の保証契約がどう扱われたかまで追います。経営者本人が、完了を確認できる資料を受け取れる段取りも決めます。

保証が残る期間には、会社の運営状況が気になっても情報を得にくくなるおそれがあります。譲渡後に受け取る報告の内容や連絡先を、契約段階で検討する理由です。

金融機関等との協議は、経営者本人が主体となります。法的な交渉や整理が要る場面では、依頼する弁護士等の専門家が担います。状況によっては法的整理が適切な場合もあります。譲渡に固執せず、返済や保証への対応が成り立つかを見直してください。

従業員・取引契約・許認可は、事業が続く条件を点検する

従業員や取引をつなぐ手続きは、会社が同じ法人として続くかで変わります。どちらの方法でも、買い手が営業を続ける条件と、働く人への説明を整えて進めます。

株式譲渡は雇用主が同じでも、説明の準備がいる

会社の株主が変わっても、従業員を雇う会社は同じです。そのため、株式譲渡を理由に全員が別の会社へ入社し直す仕組みではありません。

ただ、働く側には不安が残ります。「給与は変わるのか」「勤務地はどうなるのか」。法人が同じという説明だけでは、こうした疑問は解消しにくいものです。

買い手と事前に確認する内容をそろえます。

  • 譲渡後に予定する雇用の条件
  • 事業所や勤務体制の変更予定
  • 未払い給与などの有無と対応
  • 従業員へ説明する時期と担当者

情報を伝える時期が早すぎても、遅すぎても支障が出る場合があります。買い手との協議状況や情報管理を踏まえて、説明の順序を考えます。従業員に約束する内容は、買い手と合意できた範囲にそろえてください。

未払い給与があるなら、譲渡後に誰が把握し、どう対応するかも引継ぎ事項です。株主が変わることだけで、会社の未払いが解消されるわけではありません。

事業譲渡は、働く人が移る条件も詰める

事業を別会社へ移す場合、雇用の承継には従業員本人の同意などの確認が求められます。設備と仕事を譲れば、人も同じ条件で移るとは限りません。

引継ぎ先での条件が曖昧だと、必要な人が移れず、買い手の営業計画にも影響します。給与だけで判断せず、勤務場所や仕事内容も具体化します。勤続に関する扱いなど、従業員が気にする条件も整理対象です。

一方、譲渡対象外の事業や、移らない従業員への対応も残ります。買い手へ渡す範囲だけを決めて終えると、売り手側の負担を見落としかねません。残る雇用関係と未払いの状況も確認してください。

従業員を守りたい気持ちは、検討の出発点になります。その気持ちを条件に落とし込むには、人数の確認だけでは足りません。誰がどの仕事を担い、本人がどのような働き方を希望するかも把握します。

買い手へ伝えた人員計画と、従業員の意向が違えば、計画の見直しにつながります。条件を伝える担当者と、質問を受ける担当者まで決めておくと、説明が食い違いにくくなります。

取引先の承諾や許認可が、実行日を左右する

株式譲渡では法人が変わらないため、契約は原則として同じ会社で続きます。ただし、支配する株主の変更などを条件にした条項がないか確認します。代表者変更に伴う届出等も、業種ごとに点検する事項です。

事業譲渡の場合は、取引契約の移転や結び直しを個別に検討します。事業所を使い続けられるかも確認対象です。設備の引渡しが済んでも、契約が整っていなければ営業に支障が出ます。

許認可も同様です。承継の可否や、新たな取得が求められるかは、その業種と手続きで変わります。「事業を買えば許可もついてくる」という前提では日程を組めません。

譲渡の実行日は、当事者の希望だけでは決めにくいものです。営業を止めずに渡すなら、契約と許認可がそろう日を資金繰りと照合します。給与や仕入れの支払日が先に来るなら、その間の資金も計画に含めます。

主要な取引を引き継げない場合は、価格や買い手の判断が変わる可能性もあります。営業継続を左右する契約から確認を始めると、実行直前の行き違いを減らせます。

廃業を考える会社は、残せる事業と残る負担で選ぶ

会社全体を引き継げるなら株式譲渡が候補になり、一部の事業に引継ぎ価値があるなら事業譲渡が候補になります。債務超過という理由だけで、どちらかに決めるものではありません。

会社全体の継続が見込めるなら株式譲渡を検討する

取引や従業員を同じ会社で維持できる点は、株式譲渡の利点です。買い手が会社の借入も踏まえて、事業の継続に納得できるかが判断の軸になります。

その分、買い手は過去の負担も調べます。帳簿に十分反映されていない債務や、後から支払いが生じる可能性も対象です。会社の財務や契約を調べる作業を、デュー・ディリジェンスと呼びます。

調査で困りやすいのは、悪い数字そのものだけではありません。説明と実態が違うことも、買い手の判断を難しくします。未払いがあるなら、その相手と金額を整理してください。

解決していない問題は、未解決として伝えます。隠したまま価格の話を進めると、後から条件が変わり、限られた時間を失いかねません。

会社全体の資料がそろわないときは、欠けている部分を明示します。分からない数字を推測で埋めるより、確認方法と担当者を決めるほうが、調査の行き違いを防げます。

続けられる事業を切り出すなら事業譲渡が候補になる

会社全体の引継ぎが難しくても、特定の事業を買い手が続けられる場合があります。会社に残る負担と、引き継ぐ事業の範囲を分けて検討できるのが、事業譲渡の特徴です。

ただし、売上のある部門を切り出すだけでは足りません。その部門が営業を続けるために、何を使っているかを調べます。本社が担っていた仕事や、共通の設備が要る場合もあるためです。

確認する材料は、次のようなものです。

  • 事業ごとの売上と直接の費用
  • 共通経費を含めた収支の見通し
  • 営業継続に必要な人と設備
  • 買い手が補える業務や資金

部門だけの収支がよく見えても、買い手側で新たな管理費が生じる場合があります。反対に、買い手の既存設備を使えるなら、支出を抑えられる余地もあります。引継ぎ後の姿に置き換えて考えてください。

譲った後の事業が成り立つことと、売り手の借入が整理できることは別々に検証します。事業側の計画だけが整っても、残る負担への対応がなければ、廃業の悩みは解消しません。

債務超過でも、事業の引継ぎ余地は検討できる

財産より負債が多くても、引き継ぐ価値のある事業が残る場合があります。買い手が見るのは、現在の財務に加え、引継ぎ後に営業を続けられるかという点です。

あさひ国際会計株式会社が支援して成約した案件には、運送業で売上が1億円台の会社があります。債務超過は3,000万円規模、従業員は10名前後でした。当社の成約案件資料を2026年8月16日に確認した事実です。

この規模に近ければ成約する、という意味ではありません。人材が残るか、取引が続くかによって判断は変わります。自社と比べる際は、金額の近さだけで結論を出さないでください。

また、この事例の数字だけで、自社に適した譲渡方法まで判断するのは難しいものです。会社全体を受け入れる買い手がいるか、事業を切り出せるかを個別に確かめます。

財務と事業価値を分けて考える入口として、詳しくは債務超過とは?赤字との違い・判断方法と会社を残す選択肢を経営者向けに解説をご覧ください。

譲渡後の会社を整理する費用と時間も残す

事業をすべて譲っても、売り手の会社には入出金や契約の後処理が残り得ます。借入の返済見通しに加え、会社を維持・整理する間の支出を見積もります。

株式譲渡でも、社長が退任した後に引継ぎ業務を担う場合があります。いつまで、どの範囲を担当するかが曖昧だと、生活の立て直しに使う時間が読めません。

比較するのは、売却と廃業それぞれの終点までの負担です。譲渡日に代金が入ることだけで、計画を閉じないでください。

  • 会社に残る債務への対応
  • 契約終了や残務にかかる支出
  • 整理に関わる専門家の費用
  • 経営者の引継ぎ期間と生活資金

残務を誰が担うかも決めます。従業員が買い手へ移った後に、売り手側の記帳や入金確認をする人がいなくなる可能性があるためです。

会社を解散・清算する話と、事業を譲る話はつながっています。詳しくは「会社閉める」の正しい言い方は?廃業・解散・清算の違いと手続をご覧ください。

事業譲渡は、承認と債権者への影響を確かめて進める

事業譲渡では、対象を選べることと、責任なく資産を移せることを混同しないようにします。会社の承認手続きに加え、債権者に与える影響も点検してください。

事業の全部や重要な一部の譲渡は承認手続きを確認する

経営者が譲渡を決めても、それだけで社内手続きが済むとは限りません。会社法第467条は、事業の全部や重要な一部の譲渡について、「株主総会の決議によって」承認を受ける旨を定めています。

具体的な承認の要否は、譲渡の対象や法令上の例外も含めて確認します。「日々の経営を任されているから売却も決められる」と考えると、契約後に手続きの不足が見つかるおそれがあります。

株主が経営者以外にもいる場合は、意思確認の段取りを組みます。事業を譲る理由と、譲渡後の会社の方針を説明できる状態にしてください。代金の使途が曖昧なままでは、判断材料がそろいません。

買い手と価格が合った日を、そのまま実行日にしないでください。承認の手続きも工程に含めます。契約の締結と譲渡の実行を分ける場合には、実行までに満たす条件を確認します。

出典:会社法第467条(e-Gov法令検索)

商号を使い続けると、買い手に債務の責任が生じ得る

事業譲渡は、債務の扱いを一律に切り離せる方法ではありません。売り手の商号を買い手が引き続き使う場合には、法律上の責任も検討します。

会社法第22条は、一定の場合の譲受会社について「債務を弁済する責任を負う」と定めています。対象は、譲渡会社の事業によって生じた債務です。契約書で対象外と書けば済む、と考えないようにします。

同条には、責任を負わない旨の登記や通知に関する定めもあります。事業を譲り受けた後、遅滞なくおこなうことが求められます。通知の場合は、譲渡会社と譲受会社の双方から対象の第三者へ伝える扱いです。

名称を引き継ぐ意向があるなら、契約の終盤まで確認を残さないでください。顧客に知られた名前を残す判断と、債務への責任をあわせて検討します。自社の取引に条文がどう適用されるかは、実態に沿った確認が求められます。

出典:会社法第22条(e-Gov法令検索)

安い価格で資産を移すだけの計画は見直す

事業を残したいからといって、価値のある財産を根拠なく安く移すと、債権者を害する問題が生じ得ます。親しい相手への譲渡でも、価格の根拠を残してください。

会社法第23条の2は、残る債権者を害すると知っておこなう事業譲渡を扱っています。要件を満たす場合、債権者は買い手にも履行を請求できます。請求の範囲は、引き継いだ財産の価額が限度です。

ただし、効力発生時に買い手が債権者を害することを知らなかった場合には、同項の適用はありません。事情によって判断が分かれるため、形式だけで安全と考えないでください。

売却対象の評価と、代金の使途を説明できる資料を残します。借入や未払いを伏せたまま、使える資産だけを先に動かす進め方は避けます。

資金繰りが厳しいほど、事業の譲渡と債務の整理を同じ計画で検討してください。「事業だけ渡せば後は何とかなる」と進めると、買い手にも影響が及ぶ可能性があります。

出典:会社法第23条の2(e-Gov法令検索)

相談から実行までは、支払日と必要な条件を並べる

廃業を検討する会社のM&Aは、資金が続く期間の中で実行できるかを確かめて進めます。手法を先に固定するより、支払日と引継ぎの条件を整理するほうが判断しやすくなります。

資料は、今の支払いと借入が分かるものから

最初から整った説明資料を作る必要はありません。資金が足りなくなる時期と、会社・個人それぞれの負担が見える資料を優先します。

  • 直近の決算書と試算表
  • 預金残高と入出金の予定
  • 借入の残高と返済予定表
  • 保証契約や担保が分かる書類
  • 給与や取引先への未払い一覧

資料の日付も確認してください。過去の決算が良好でも、足元の預金が減っている場合があります。数字を更新できていなければ、その旨を伝えます。最新の入出金から補える部分もあります。

次の支払日に足りない見通しがあるなら、初回の連絡でその日を伝えます。買い手探しに使える時間が変わるからです。M&Aが成立する前提だけで支払予定を組まず、不成立の場合の対応も並べて考えます。

「従業員にまだ話していない」「家族には一部しか伝えていない」といった事情も共有してください。誰が何を知っているかを整理すると、説明の順序を決めやすくなります。

実行できる条件から逆算して工程を組む

株式譲渡のほうが手続きは比較的シンプルでも、調査や保証の確認に時間を要する場合があります。事業譲渡でも、承継対象が明確なら検討を進めやすい場面があります。名称だけでは期間を決められません。

基本の流れを、資金の予定と重ねます。

1. 事業と借入の現状を整理する
2. 買い手候補と引継ぎ条件を検討する
3. 財務・契約・保証の調査を進める
4. 社内の承認と最終契約を整える
5. 決済後の引継ぎと保証の状況を確認する

途中で買い手の条件が変わることもあります。価格だけが下がる場合と、雇用や保証の条件まで変わる場合では、判断が違います。どこまでなら受け入れられるかを、経営者自身の生活も含めて整理します。

待っている間の資金も確認してください。買い手の調査が続いていることと、次の支払日に間に合うことは別です。資金の限界が近づけば、進め方の見直しを検討します。

再生を前提とする引継ぎの考え方は、詳しくは再生型M&Aとは?通常M&Aとの違いと対象企業を解説をご覧ください。

買い手は、価格に加えて実行する力を確かめる

高い価格を提示した買い手が、事業を安定して続けられるとは限りません。代金の支払能力と、譲渡後の運営資金を分けて確認します。経営者保証の扱いに関する説明も、資力と整合しているかを見ます。

確認したい内容は次のとおりです。

  • 代金を支払う資金の裏付け
  • 譲渡後の運営体制と資金計画
  • 従業員や主要取引への方針
  • 保証の手続きに応じる体制

買い手の説明が曖昧な部分は、契約前に質問として残します。返答がないまま、引渡しだけを先に進める判断は慎重に検討してください。

会社の財産や口座を誰が管理するかも、実行時の確認事項です。契約から実行後までの管理をつなげておくと、引継ぎの行き違いを減らせます。口頭の説明と最終契約が一致しているかも読み合わせます。

譲渡後の経営者の関与についても、曖昧にしないでください。買い手が想定する引継ぎと、売り手が引き受けられる仕事の範囲をすり合わせます。

あさひ国際会計は、資料整備とM&Aの条件設計を担う

あさひ国際会計株式会社では、連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを扱っています。金融機関等との協議に必要な資料を整え、事業価値の説明資料を作成します。M&Aの条件設計を通じて、経営者ご本人の協議を後方から支える役割です。

交渉の主体は経営者本人と、必要に応じて依頼する弁護士等の専門家です。当社の仲介業務と、法律上の交渉・判断を担う業務の範囲を分けて進めます。状況によっては法的整理が適切な場合もあります。事業の引継ぎと債務整理の見通しを照らして、進め方を検討します。

ご相談は無料で、着手金はありません。報酬は成約時に譲渡代金の中から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。成功報酬そのものが無料という意味ではありません。

当社の報酬と、税金や他の専門家費用などの支出は分けて確認してください。 手元資金に余裕がない場合も、初回にお伝えください。費用の総額と支払時期を明らかにしてから、進め方を検討します。

譲渡代金で支出をまかなえない見通しなら、不足を残したまま実行を前提にしません。取引条件や債務の整理を含め、実行できる計画かを確認します。

よくある質問

借入が多い会社は、株式譲渡より事業譲渡が向いていますか?

借入額だけでは決められません。会社全体を引き継いだ後の返済が見込めるなら、株式譲渡も候補です。事業譲渡を選ぶ場合は、売り手に残る借入の返済・整理をあわせて検討します。買い手が受け入れられる範囲と、売り手の負担の両方を比べます。

借入が多くても、契約や人材が会社にまとまっている場合があります。会社を引き継ぐ利点と、債務を抱える負担を具体的に示すほうが、手法の判断につながります。

事業譲渡が終われば、売り手の会社はそのまま閉じられますか?

事業の譲渡と、会社の解散・清算は別の手続きです。営業を終えた後も、借入や未払いへの対応が残る場合があります。代金が入る時点だけでなく、会社の残務を終えるまでの資金を確認します。

債務を返しきれない見通しなら、通常の清算で終えられる前提を置かず、債務整理も含めて検討します。会社の手続きと経営者個人の保証への対応は、それぞれ分けて整理してください。

社長を辞めて株式を全部譲れば、連帯保証も外れますか?

社長の退任や株式の売却だけで、連帯保証が外れるわけではありません。保証契約について、金融機関等の同意と手続きを確認します。買い手が解除に向けて対応する約束と、解除が完了した事実は区別してください。

退任日が決まっている場合は、保証の確認状況も同じ予定表に載せます。譲渡後に誰へ連絡し、どの資料で完了を確認するかまで、契約前に決めておくと行き違いを減らせます。

廃業するか売却するか、まだ決めていなくても相談できますか?

決まっていない段階でも相談できます。続けられる事業があるか、買い手へ渡せる条件があるかを確認し、廃業する場合の負担と比べます。「売る」と決めてから資料を集めなくても構いません。

最初の連絡では、直近の支払予定と借入の状況を分かる範囲でお伝えください。資料がそろっていなければ、不足しているものを確認するところから始めます。従業員や家族について譲れない希望があれば、あわせて共有できます。

まとめ

借入と保証の資料を用意し、会社に残る負担と引き継げる事業を書き出してください。次の支払日も添えて相談すれば、株式譲渡・事業譲渡・廃業を、資金と生活の見通しに沿って比較できます。

この記事を書いた人

あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
他社で断られた案件のご相談も承っています。ご相談は無料です。

無料相談はこちら / お急ぎの方はお電話でも承ります 03-5657-7496

状況によっては法的整理が適切な場合もあります。事業の継続可能性と債務の状況を踏まえて、選択肢を検討します。

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