目次
この記事の対象と結論
赤字が続き、借入の返済や連帯保証に不安を感じている経営者に向けた記事です。廃業を決める前に、会社や事業を売却できる可能性と価格の考え方を整理します。
赤字会社の売却相場に、一律の価格帯はありません。赤字額だけでなく、顧客、従業員、設備、許認可、将来の収益力などが評価されるためです。
債務超過や多額の借入があっても、事業に価値があれば買い手の候補が現れることがあります。ただし、時間がたつほど資金や取引関係が傷み、選択肢が狭くなりがちです。
数ヶ月の猶予があるなら、売却、廃業、法的整理を比較してください。そのうえで、資料を整えながら売却可能性を確かめることが現実的です。
赤字会社の売却相場に定価がない理由

赤字額だけでは売却価格を決められない
買い手が取得するのは、過去の赤字だけではありません。今後も使える事業基盤や、改善後に得られる収益も取得対象です。
たとえば、現在は赤字でも、次のような事情があれば評価の余地があります。
- 継続取引のある顧客がいる
- 採用しにくい人材が残っている
- 事業に必要な設備を保有している
- 許認可や営業網を引き継げる
- 一時的な支出が赤字の原因である
反対に、黒字でも特定の取引先に依存している会社は、慎重に評価されます。赤字か黒字かは、判断材料の一つにすぎません。
株式譲渡では借入を含む会社全体が対象になる
株式譲渡では、株主が保有する株式を買い手へ譲ります。法人格は変わらないため、会社の資産や借入も会社に残ります。
価格は、事業が生み出す価値から借入やリスクを考慮して検討されます。債務超過の場合、株式だけを見れば高い価格をつけにくいこともあります。
それでも、買い手が事業の改善可能性を評価する場合があります。売り手にとっては、事業や雇用をまとめて引き継ぎやすい方法です。
なお、株式譲渡をしても経営者保証が自動で外れるわけではありません。詳しくは会社を売却しても連帯保証が外れない理由と解除に向けた進め方をご覧ください。
事業譲渡では引き継ぐ範囲を選べる
事業譲渡では、店舗、設備、契約などの対象を選びます。買い手は引き継ぐ範囲を絞れるため、会社全体の買収が難しい場合にも検討できます。
一方、譲渡後も元の会社は残ります。対象外となった借入や債務を、どのように処理するかという課題も生じます。
会社法22条では、譲受会社が譲渡会社の商号を使い続ける場合の責任も定めています。単純に「事業譲渡なら債務は移らない」と考えるのは危険です。
株式譲渡と事業譲渡のどちらが適するかは、借入、契約、許認可などを踏まえて検討します。
買い手が赤字会社に見いだす価値
将来の収益力と赤字の原因
買い手は、赤字が今後も続くのかを確認します。そこで問われるのが、赤字の原因と改善余地です。
一時的な設備投資や、経営者に関係する支出が利益を押し下げている場合もあります。買い手の仕入れ網や営業力を使えば、採算が改善するケースも考えられます。
赤字の説明では、希望的な予測だけでは足りません。月ごとの売上や粗利益を使い、原因を数字で分ける必要があります。
顧客や従業員は帳簿に表れにくい
決算書に計上されない強みも、売却価格を左右します。顧客との関係、技術を持つ従業員、地域での営業基盤などです。
買い手がゼロから同じ事業を立ち上げる場合、採用や顧客開拓に時間がかかります。既存の基盤を引き継げることが、買収の理由になります。
ただし、経営者個人だけに取引関係が集中していると、引継ぎ後の価値が下がるおそれがあります。誰が運営しても事業が回る状態に近づけることがポイントです。
設備や在庫は換金価値だけで見ない
設備や在庫には、売却した場合の換金価値があります。それに加え、事業を続けるための使用価値もあります。
単体では高く売れない機械でも、人材や受注と組み合わせれば利益を生むことがあります。買い手は、個々の資産と事業全体の価値を分けて検討します。
老朽化した設備や動かない在庫が多い場合は、評価を下げる要因です。帳簿の金額と実態が合っているかも確認されます。
借入と連帯保証は価格と条件の両方に影響する
借入が多い会社では、譲渡価格だけを見ても経営者の手元に残る金額は判断できません。返済条件や成功報酬なども関係します。
さらに、連帯保証の扱いは譲渡条件の中心となります。中小M&Aガイドライン第3版でも、保証の解除や引継ぎは最終契約で取り決める主要項目です。
正式な解除や移行には金融機関等の判断が関わります。M&Aの当事者同士が合意しただけで、保証契約が消えるわけではありません。
当社が支援して成約した案件では、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。ただし、金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。
売却・廃業・法的整理をどう比べるか
三つの選択肢は目的が異なる
会社の出口は、売却だけではありません。資産と負債の状態によっては、廃業や法的整理も候補になります。
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| 選択肢 | 事業 | 雇用 | 主な検討点 |
|---|---|---|---|
| 会社・事業売却 | 引継ぎを目指す | 維持の余地 | 買い手と条件 |
| 任意の廃業 | 終了する | 原則終了 | 債務を払えるか |
| 法的整理 | 状況で異なる | 状況で異なる | 弁護士へ相談 |
売却では、事業価値と引換えに引継ぎを目指します。任意の廃業は、資産を換金して債務を支払える会社に適することがあります。
支払不能や債務超過の程度によっては、法的整理が適切な場合もあります。一つの方法に決めつけず、比較することが重要です。
債務超過でも買い手がつく場合がある
当社が支援して成約した案件のうち、財務資料を確認できた範囲では、およそ3分の2が債務超過でした。債務超過額は3,000万円から6,000万円規模が中心です。
たとえば、運送業で売上1億円台、債務超過3,000万円規模、従業員10名前後の会社も成約しています。
これは債務超過なら売れるという意味ではありません。運送網、人材、顧客など、買い手が引き継ぎたい価値があったからこそ検討対象になったものです。
債務超過と売却価格の関係は、債務超過の会社は売却できるか。価格と進め方をご覧ください。
相談先は検討する出口に合わせる
破産手続きを主に扱う専門家と、事業を残す前提の再生を扱う専門家では、得意分野が異なります。
法的整理の可能性がある場合は、弁護士への相談が候補です。
売却可能性を調べる場合は、赤字や債務超過の案件を扱うM&A支援機関へ相談します。次の点を確認すると、役割の違いが見えやすくなります。
- 赤字会社の成約経験があるか
- 連帯保証を条件設計に含めるか
- 着手金と成功報酬はいくらか
- 売却困難時の説明が明確か
あさひ国際会計株式会社は、中小M&Aガイドライン第3版に対応した登録支援機関です。相談は無料で、着手金はありません。報酬は成約時に譲渡代金から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。
数ヶ月で売却評価を高める準備

最初に資金が尽きる時期を確認する
売却準備の前に、現預金がいつまで持つかを確認します。資金が尽きてからでは、買い手を探す時間を確保しにくくなります。
まず、次の資料を集めてください。
1. 直近の決算書と試算表
2. 月別の資金繰り表
3. 借入の返済予定表
4. 保証契約書の写し
5. 税金などの納付状況
数ヶ月の猶予があるなら、月単位ではなく週単位でも資金を確認します。売却活動に使える期限を先に決めるためです。
赤字の原因を数字で説明できる形にする
買い手が不安に感じるのは、赤字そのものよりも原因が見えない状態です。売上、粗利益、固定費に分けると、改善余地を説明しやすくなります。
経営者だけに関係する支出や、一時的な損失は分けて整理します。ただし、数字をよく見せるために費用を隠してはいけません。
買い手が検証できる資料を示せることが、評価の土台になります。
事業が社長から離れても回る状態をつくる
買い手は、経営者が退任した後も顧客や従業員が残るかを見ます。短期間でも、引継ぎの準備は進められます。
- 顧客窓口を複数にする
- 業務手順を文書にする
- 契約の更新時期を整理する
- 従業員の役割を明確にする
経営者個人への依存が下がるほど、買い手は引継ぎ後を想像しやすくなります。顧客や従業員への告知時期は、情報管理を踏まえて決めます。
借入と保証は売却条件と並行して整理する
保証契約書の有無、対象となる借入、保証の範囲を確認します。会社の譲渡条件だけを先に決めると、連帯保証が残るリスクがあります。
金融機関との協議の主体は、経営者ご本人です。法的な対応が必要な場合は、依頼を受けた弁護士等が担います。
当社は、金融機関との協議に必要な資料の整備をおこないます。事業価値の説明資料やM&Aの条件設計を通じて、経営者ご本人の協議を支えます。
廃業と売却をまだ決め切れない方は、自己破産の前に検討したい会社売却という選択肢もあわせてご覧ください。
よくある質問
赤字会社の売却相場はいくらですか?
一律の相場はありません。現在の利益だけでなく、顧客、従業員、設備、許認可、将来の収益力、借入などを総合して条件が決まります。会社ごとの資料を見なければ、妥当な価格帯を絞るのは困難です。
債務超過なら売却価格はつきませんか?
債務超過でも、事業に引き継ぐ価値があれば売却候補になり得ます。当社の成約案件でも、債務超過の会社が含まれています。ただし、事業価値より債務やリスクが重い場合は、価格やスキームの検討が難しくなります。
売却すれば連帯保証は外れますか?
売却だけで連帯保証が自動的に外れるものではありません。金融機関の同意を前提に、買い手の信用力や最終契約の条件を確認します。譲渡価格と保証解除を別々に扱わず、同じ計画の中で進める必要があります。
廃業を決めた後でも相談できますか?
株主総会の決議や法的手続へ進む前なら、売却可能性を検討できる場合があります。資金繰りが悪化するほど時間は短くなるため、廃業を実行する前の相談が望まれます。状況によっては、法的整理が適切な場合もあります。
まとめ
赤字会社の売却相場は、赤字額だけでは決まりません。顧客、従業員、設備、許認可、将来の収益力などが評価対象になります。
債務超過や借入超過があっても、事業価値が残っていれば買い手を探せる場合があります。一方、売却できるかどうかは、資金が尽きるまでの時間にも左右されます。
数ヶ月の猶予がある段階で、次の順に進めてください。
1. 資金が持つ期限を確認する
2. 赤字の原因を数字で分ける
3. 借入と保証契約を整理する
4. 売却と廃業を比較する
5. 適した専門家へ相談する
廃業を決める前に売却可能性を調べることで、事業、雇用、連帯保証を含めた選択肢を比較できます。
この記事を書いた人
あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
他社で断られた案件のご相談も承っています。ご相談は無料です。
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最終更新日: 2026年8月21日