目次
この記事の対象と結論
株式譲渡の必要書類は、会社の基本資料と財務資料から集めます。そのうえで、取引条件に合う契約・承認・引渡しの書類を整える順序です。借入の連帯保証がある場合は、保証契約の資料も早めに確認してください。
廃業や自己破産が頭をよぎると、書類を探すだけでも負担になります。すべてそろうまで相談を待つ必要はありません。再生型M&Aで事業を残せるかを検討しつつ、状況によっては法的整理が適切な場合もあります。
株式を譲るための書類と、社長の連帯保証を整理する書類は、分けて確認します。 売買契約への署名だけでは、保証の解除まで終わらないためです。手元の決算書と次の支払いが分かるメモから、会社と個人の責任を整理してください。
株式譲渡の必要書類は、使う段階ごとにそろえる
株式譲渡では、相談時からすべての原本を提出するとは限りません。現状の判断に使う資料を先に集め、条件が固まるにつれて正式な書類を整えます。
最初は会社・資金・借入が分かる資料から
廃業と譲渡で迷っている段階では、会社の現状を伝える準備が先です。買い手を探す時間が残っているか。事業を続けるために何が足りないか。判断には、決算の数字に加えて足元の現金も使います。
手元にあれば、次の資料をまとめてください。
- 直近の決算書と申告書
- 最近の試算表
- 預金残高が分かる資料
- 入出金予定を記した資金繰り表
- 借入返済予定表と保証契約書
- 定款と株主名簿
資金繰り表がなければ、入金予定日と支払予定日のメモから着手できます。残高には確認日を添えてください。決算時の預金と、今日使える預金は違います。
書類の完成度を競う場面ではありません。「給与の支払日が近い」「返済が遅れている」といった事情も伝えます。支払期限によっては、譲渡の検討と並行して資金不足への対応が必要になるためです。
会社の先行きが決まらない段階で相談する経営者は珍しくありません。家族や従業員にどう説明するか迷っていることも、現状として話して構いません。
段階別の一覧で書類名と提出先をそろえる
必要書類には、保管済みの資料と、譲渡に向けて作る書類があります。下表は、準備する書類名を段階別にまとめたものです。提出先は主な共有先を示しており、一括送信する意味ではありません。
相談から買い手の調査までは、次の資料を使います。
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| 段階 | 書類名 | 主な共有先 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 相談 | 決算書・申告書 | 仲介担当者 | 財務の把握 |
| 相談 | 試算表 | 仲介担当者 | 最近の損益 |
| 相談 | 預金残高・入出金明細 | 仲介担当者 | 手元資金の把握 |
| 相談 | 資金繰り表 | 仲介担当者 | 支払期限の把握 |
| 相談 | 借入返済予定表 | 仲介担当者 | 借入の洗い出し |
| 相談 | 借入契約書・保証契約書 | 担当者・専門家 | 保証範囲の確認 |
| 株式確認 | 定款・登記事項証明書 | 担当者・専門家 | 会社の定めの確認 |
| 株式確認 | 株主名簿 | 担当者・専門家 | 株主と株式数 |
| 株式確認 | 過去の譲渡契約書 | 担当者・専門家 | 取得経緯の確認 |
| 株式確認 | 取得代金の支払記録 | 担当者・専門家 | 取得経緯の裏付け |
| 開示前 | 秘密保持契約書 | 情報を受ける相手 | 開示条件の合意 |
| 調査 | 売掛金・買掛金明細 | 買い手・調査担当者 | 回収と支払の確認 |
| 調査 | 未納税金等の資料 | 買い手・調査担当者 | 未納と期限の確認 |
| 調査 | 在庫・設備一覧 | 買い手・調査担当者 | 資産の確認 |
| 調査 | 役員との貸借明細 | 買い手・調査担当者 | 個人との資金関係 |
| 調査 | 主要取引の契約書 | 買い手・調査担当者 | 取引継続の条件 |
| 調査 | 賃貸借・リース契約書 | 買い手・調査担当者 | 継続費用と保証 |
| 調査 | 許認可に関する書類 | 買い手・専門家 | 変更手続きの検討 |
| 調査 | 雇用契約書・労働条件通知書 | 買い手・調査担当者 | 雇用条件の確認 |
| 調査 | 賃金台帳・勤怠記録 | 買い手・調査担当者 | 給与と未払い |
| 調査 | 就業規則・退職金規程 | 買い手・調査担当者 | 労務上の負担 |
条件の合意から実行後までに整える書類は、次のとおりです。
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| 段階 | 書類名 | 主な共有先 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 条件合意 | 基本合意書 | 売り手・買い手 | 作成する場合に使用 |
| 最終契約 | 株式譲渡契約書 | 売り手・買い手 | 代金と責任の合意 |
| 譲渡承認 | 株式譲渡承認請求書 | 対象会社 | 承認が必要な場合 |
| 譲渡承認 | 株主総会・取締役会議事録等 | 対象会社で保管 | 承認機関に応じる |
| 譲渡承認 | 株式譲渡承認通知書 | 承認請求者 | 承認結果の通知 |
| 引渡し | 株券 | 買い手 | 発行状況に応じる |
| 名簿更新 | 株主名簿書換請求書 | 対象会社 | 書換えの請求 |
| 名簿更新 | 書換え後の株主名簿 | 対象会社で保管 | 更新結果の確認 |
| 代金決済 | 振込記録・入金確認資料 | 売り手・買い手 | 支払いの照合 |
| 役員変更 | 辞任届・就任承諾書等 | 登記担当者等 | 交代内容に応じる |
| 役員変更 | 役員選任等の議事録 | 登記担当者等 | 決定内容の記録 |
| 本人確認等 | 本人確認書類・印鑑証明書 | 求める提出先 | 用途に応じる |
| 登記後 | 変更後の登記事項証明書 | 金融機関等 | 代表者変更の確認 |
| 保証確認 | 解除等を確認できる書面 | 保証人等 | 対象と効力の確認 |
各社に同じ書類が同じ形で必要になるわけではありません。承認機関や株券の扱い、役員交代の有無に合わせて絞り込みます。相続等で株式を取得している場合は、その経緯を示す資料も追加します。
管理表には保管場所と未確認事項を書き添えてください。「未作成」「捜索中」「内容確認中」を分けると、次の担当を決めやすくなります。
提出先と使い道を確かめてから開示する
初回相談では、仲介担当者へ財務と支払予定を先に伝えます。株式の所在に疑問があれば、定款と株主名簿も同時に共有してください。買い手探しの前提を確認するためです。
詳しい会社情報は、情報の使い方を取り決めてから開示します。一般に秘密保持契約と呼ばれるものです。名称だけで判断せず、次の内容に目を通します。
- 情報を使える目的
- 情報を共有できる相手
- 検討中止後の資料の扱い
- 従業員や取引先への接触方法
買い手が調査に進む段階では、依頼された項目と提出資料を対応させます。最初は個人名を伏せた一覧で足りることもあります。ただし、判断に影響する未払いや契約上の問題を隠すこととは別です。
原本を預ける場合は、受領する相手と返却予定も確認します。給与計算や支払いに使う資料は、社内で参照できる状態を残してください。開示した版と日付を記録しておくと、後の追加説明にも使えます。
定款と株主名簿で、譲渡する株式と承認の手続きを確かめる
契約書を作る前に、売り手が持つ株式と会社側の承認手続きを確認します。社長であることと、売却対象の株式をすべて持っていることは、同じ意味ではありません。
定款と登記事項証明書は照らし合わせて読む
定款では、会社の運営に関する定めを読みます。株式の譲渡に承認が必要か、株券を発行する定めがあるか。準備する書類に直結する確認です。
登記事項証明書では、登記されている会社の情報を確かめます。両方を照らし合わせ、手元の定款が古いままになっていないかも調べてください。
見る箇所は次のとおりです。
- 株式の譲渡制限に関する定め
- 譲渡を承認する機関
- 株券を発行する旨の定め
- 役員などの登記事項
- 定款変更の記録
設立時の定款しか見つからない場合は、その後の変更資料も探します。表紙の作成日だけでは、現在の内容か判断できません。担当者の記憶と資料が違うときは、その食い違いも確認事項として残してください。
承認する機関を取り違えると、用意した議事録が手続きに合わないおそれがあります。ひな形へ社名を入れる前に、現在の定めを読む順序です。
株主名簿で説明しきれない経緯は取得資料で補う
株主名簿は、誰がどの株式を持っているかを確認する出発点です。記載と実態に食い違いがある場合には、過去の取得経緯も調べることになります。
親族の名義が残っている。以前の譲渡が名簿へ反映されていない。出資した人と記載された人が違う。心当たりがあれば、契約直前まで伏せずに伝えてください。
経緯を確かめる際には、次の資料が役立ちます。
- 過去の株式譲渡契約書
- 株式取得時の支払いの記録
- 過去の譲渡承認に関する書類
- 相続などで取得した経緯の資料
他の株主の意思を確認せず、その人の株式まで売却対象に含めないよう注意してください。名簿を書き換えるだけでは、権利関係の問題は解消しません。
家族が株主に含まれる場合も、口頭の了解だけで進めると認識がずれるおそれがあります。詳しくは家族への株式譲渡に必要な書類一覧と、売買・贈与で変わる準備と借入の確認をご覧ください。
株券と譲渡承認の書類は会社の定めに合わせる
「株券を見たことがない」という記憶だけで、株券は関係ないと判断しないでください。株券発行の定めと、実際の発行状況を分けて確認します。
発行済みであれば、保管場所と保管者を調べます。発行する定めがあるのに未発行なら、実行までに必要な対応を確認してください。紛失している場合は、契約書への署名だけで進めず、個別の手続きを検討します。
譲渡承認が必要な会社では、次の順に書類を整えます。
1. 承認請求者が会社へ承認請求書を出す
2. 会社が承認機関に応じた決定を記録する
3. 会社が請求者へ承認結果を通知する
議事録は、定款等で確認した承認機関に合わせて作ります。売り手と買い手が署名した契約書だけで、会社の承認記録まで兼ねられるとは限りません。
承認日と譲渡実行日の関係も確認してください。未了の手続きを済んだように記録したり、後から日付を合わせたりせず、実際の経緯に沿って整えます。
財務・契約・労務の資料で、会社に残る負担を示す
株式譲渡では法人格が変わらず、借入などの債務も会社に残ります。買い手が引継ぎ後の負担を判断するため、必要書類には財務や事業の実態を示す資料も含まれます。
決算書に足元の入出金と未払いを添える
決算書だけでは、会社の現在地を説明しきれないことがあります。決算後に売上が落ちた場合や、支払いが遅れ始めた場合は、その変化を補ってください。
実態に応じて、次の資料を添えます。
- 最近の試算表
- 預金の入出金明細
- 売掛金と買掛金の明細
- 税金や社会保険料の未納状況
- 在庫や設備の一覧
- 社長と会社の貸し借りの明細
売掛金は、帳簿上の金額と回収できる見込みを分けて説明します。支払いが遅れている取引先があれば、経緯も記録してください。現金化できる時期が違えば、会社を続けるための資金も変わります。
社長が会社へ貸しているお金は、株式の売却代金とは別の論点です。返済するか、残すかで譲渡条件が変わります。会社が社長へ貸している場合も、残高と経緯の確認が必要です。
未払いの一覧には、金額だけでなく支払期日や相手への説明状況も添えます。督促を受けているかどうかで、検討できる時間が変わるためです。
取引契約と許認可は経営体制が変わる場面を読む
株主が変わっても会社自体は残ります。ただし、取引先への連絡や承諾まで不要になるとは限りません。契約には、株主や経営体制の変更に関する定めがある場合があります。
事業に合わせて、次の資料を確認します。
- 主要な販売先や仕入先との契約書
- 店舗や事務所の賃貸借契約書
- 設備や車両のリース契約書
- 許認可に関する書類
- 契約変更や更新時の合意書
基本契約が見つかっても、その後の合意で条件が変わっていることがあります。付属の書面や変更通知も調べてください。解約の通知をすでに出している契約があれば、その事実も共有します。
許認可については、会社が続くことと変更の届出等の要否を分けて確認します。代表者の交代や事業の運営体制によって、確認する内容が異なるためです。
廃業準備として店舗や設備の契約を解約すると、譲渡後の営業に影響することがあります。解約済みか、撤回できるか、まだ通知していないか。書類に残る状況から判断してください。
雇用条件と未払いを整理して従業員への説明につなげる
従業員への影響を考えるなら、雇用条件と未払いの実態をつかむ作業から始めます。株式譲渡では雇用主である会社が残るため、現在の雇用関係も調査の対象です。
事実を確認できる資料をまとめてください。
- 雇用契約書や労働条件の通知書
- 賃金台帳と給与の支払い記録
- 勤怠の記録
- 就業規則や退職金に関する規程
- 未払い賃金などの把握資料
買い手に伝えた条件と従業員への説明が違うと、不安を広げるおそれがあります。説明する時期や内容は、譲渡条件がどこまで固まっているかを踏まえて決めます。
中小企業庁の資料には「簿外債務・偶発債務リスク」という表現があります。帳簿に十分表れていない負担も調べる趣旨です。出典は「中小M&Aガイドライン(第3版)」のスキーム比較、p.48です。令和6年8月公表、2026年8月15日確認の資料です。中小企業庁の公表ページから参照できます。
会社の実態やリスクを調べる作業を、デュー・ディリジェンスと呼びます。悪い数字があることだけを恐れず、判明していることと未確認のことを分けて伝えてください。
株式譲渡契約書には、価格と引渡し後の責任を残す
株式譲渡契約書では、代金に加えて実行の条件と売り手に残る責任を確認します。署名を急ぐと、退任後の負担を見落とすおそれがあります。
対象株式・代金・実行条件を手元の資料と照合する
契約書を読む際は、株主名簿と合意済みの条件を手元に置きます。対象の株式と売り手が一致しているか。代金は誰へ、いつ支払われるか。条項ごとに照らし合わせてください。
確認する内容は次のとおりです。
- 売り手と買い手の名義
- 対象となる株式と株式数
- 譲渡代金と支払いの方法
- 譲渡を実行するための条件
- 引き渡す書類と物品
- 条件が整わない場合の扱い
株式の売却代金は株主が受け取るお金です。会社の運転資金と同じ財布として扱わないようにします。買い手が会社へ資金を入れる予定なら、金額と時期を別に明らかにしてください。
契約締結と譲渡実行の日が離れる場合は、その間の資金繰りも検討します。給与や仕入れの支払いは続きます。代金の入金予定だけで、会社の支払いまで賄えると判断しないでください。
口頭で合意した支援が契約書に載っていない場合は、記載するか確認を求めます。「買収後に考える」という説明しかない部分は、未確定の条件として残ります。
申込書や基本合意書でも先に約束が生じる場合がある
最終契約の前でも、書面の内容によって費用負担や行動の制限が生じます。「申込書」「基本合意書」という表題だけで、拘束されないと判断しないでください。
基本合意書は、調査や最終契約へ進むための主要な条件を整理する際に使います。作成するかどうかも、案件に応じて検討する事項です。
署名前には、次の条項を読みます。
- 他の買い手と話せる範囲
- 検討を中止できる条件
- 中止した場合の費用負担
- 情報開示と秘密保持の範囲
- 最終契約までの予定
価格の記載があっても、調査後に変更できる内容なら受取額は未確定です。一方で、費用負担など一部の条項には効力を持たせている場合があります。
分からない箇所は、署名前に質問を残してください。説明を受けた日と回答も記録すると、修正版へ反映されたか確認できます。差し替えがあったときは、署名する版を取り違えないようにします。
表明保証と退任後の仕事は負担の範囲まで読む
会社について説明した内容が事実と違った場合、売り手が責任を負う条項が設けられることがあります。説明した事実の正しさを契約で約束する部分を、表明保証と呼びます。
引渡し後の請求につながる可能性があるため、難しい言葉でも読み飛ばせません。何について、どこまで責任を負うのかを確認してください。
- 説明の対象となる事実
- 未確認事項や例外の記載
- 責任を負う期間
- 補償の範囲と上限
- 請求を受けた際の手続き
把握している未払いを「ない」とする書面へ署名しないでください。未解決の事項は、資料と契約の両方で扱いを明らかにします。調査で伝えたというだけで、契約上の責任まで整理されたとは限りません。
退任後の引継ぎ業務も負担になり得ます。期間や担当する仕事に加えて、報酬と費用の扱いも確認します。家族との生活や次の仕事に影響するため、「必要な協力をする」の一文だけでは判断しにくい部分です。
連帯保証の資料は、株式の書類と別に確認する
連帯保証の解除には、金融機関等の同意が前提となります。売り手と買い手の合意だけでは完了しないため、借入ごとの契約と解除に向けた条件・進捗を確認します。
借入先ごとに契約・残高・保証人を対応させる
借入の総額だけでは、社長にどの責任が残るか分かりません。返済予定表で借入を洗い出し、各契約に保証が付いているか確認します。
借り換えや追加借入がある場合、古い契約だけでは現在の関係を説明できないことがあります。契約変更の書類も調べてください。
借入ごとの整理表には、次の情報を記します。
- 借入先と対象の借入
- 確認日時点の残高
- 毎回の返済額と返済日
- 保証人の氏名
- 担保の有無と対象
- 返済条件の変更や延滞の状況
家族が保証人になっている借入は、社長本人の保証と区別します。不動産などの担保も別の確認事項です。社長の保証への対応が決まっても、家族や自宅に関する条件まで解決したとは限りません。
契約書が手元にない場合は、取得方法の確認を課題として残します。通帳で返済額が分かっても、保証の範囲までは分かりません。賃貸借やリースにも個人保証が付いていないか、契約の確認範囲を広げてください。
買い手の約束と金融機関の同意を混同しない
「買い手が保証を引き受ける」と契約書にあっても、その約束だけでは保証契約は変わりません。買い手の義務を定めることと、金融機関の同意を得ることは別です。
中小企業庁は、最終契約の主要項目として「経営者保証の扱い」を示しています。解除等の義務や、実施されなかった場合の扱いを取り決める趣旨です。出典は「中小M&Aガイドライン(第3版)」p.49の最終契約に関する記載です。令和6年8月公表、2026年8月15日確認の資料です。中小企業庁の公表ページも参照できます。
書類では、次の内容を具体化します。
- 解除等の対象となる保証
- 買い手がおこなう対応
- 金融機関へ提出する資料
- 手続きの予定と進捗確認
- 実施されなかった場合の扱い
買い手の資力や資金の準備も判断に関わります。買収価格だけが示され、保証への対応が口約束のままなら、署名前に条件を詰める必要があります。
詳しくは株式譲渡と連帯保証人の行方|会社が残るM&Aで確認したい判断軸をご覧ください。
署名から代表者変更登記、解除確認まで記録をつなぐ
株式の引渡し完了と、連帯保証の解除完了は別々に確認します。 株主名簿の変更や社長の退任だけで、保証の整理まで終わったとは判断できません。
中小M&Aガイドライン第3版は、正式な解除・移行を実行後の代表者変更登記につなげて説明しています。最終的な実施は金融機関等の判断によります。出典は同資料p.51の経営者保証に関する留意事項です。令和6年8月公表、2026年8月15日確認の記載です。
書類の流れは、次のように管理します。
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| 時点 | そろえる記録 | 主な確認者 |
|---|---|---|
| 署名前 | 保証一覧・対応条件 | 経営者・専門家 |
| 契約署名 | 保証条項を含む契約書 | 売り手・買い手 |
| 引渡し | 実行記録・未了事項表 | 売り手・買い手 |
| 代表者変更登記後 | 変更後の登記事項証明書 | 金融機関等 |
| 正式な解除・移行後 | 対象と効力が分かる書面 | 保証人・専門家 |
署名前には、経営者本人が金融機関へ必要資料と条件を確認します。事前の説明や見通しがあっても、正式な解除済みの記録とは分けて保管してください。
引渡し後は、会社側の登記担当者から変更の完了を確認します。そのうえで、求められた登記事項証明書等を金融機関へ提出する流れです。提出者と連絡担当者は、経営体制の交代前に決めておきます。
金融機関の追加条件が未了なら、保証の確認欄は未了のままです。書面を受け取ったら、対象の借入と保証人、効力が生じる日を照合します。別の借入や家族の保証もある場合は、それぞれ確認してください。
金融機関との協議の主体は経営者ご本人です。必要に応じて、依頼する弁護士等の専門家が対応します。当社は必要資料の整備や事業価値の説明資料の作成を担います。M&Aの条件設計も含め、ご本人の協議を支える後方支援の立場です。
不足資料を補いながら、署名から引渡しへ進める
資料が足りない場合は、不足の理由と確認方法を整理して検討を進めます。ただし、権利関係や承認など実行の前提に関わる不足は、解消を確かめてから進む必要があります。
見つからない書類は「不明」と記録する
書類がないときに避けたいのは、記憶だけで内容を埋めることです。「保証は付いていないと思う」という説明は、裏付けが見つかるまで未確認として扱います。
不足資料は、次の形で管理してください。
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| 不足しているもの | 当面の確認材料 | 残す課題 |
|---|---|---|
| 最新の定款 | 定款・変更記録 | 現在の内容の確認 |
| 株主名簿 | 過去の取得資料 | 株主と株式数の確認 |
| 借入契約書 | 返済予定表・通帳 | 契約内容の確認 |
| 最近の試算表 | 帳簿・入出金記録 | 足元の財務の整理 |
| 取引契約書 | 請求書・過去の連絡 | 契約条件の確認 |
表の確認材料で、正式な書類をどの場面でも代替できるわけではありません。事実を調べる手掛かりとして使います。
試算表の更新が遅れているなら、入出金記録で初期検討を進める余地があります。一方、売り手の株式数に争いがある場合は、先に権利関係を整理する必要があります。資料不足の影響は同じではありません。
社内で探す担当者と再取得の担当者を決め、回答予定日を残してください。過去の日付で書類を作り直したり、実際にはない合意を記録したりせず、判明している事情から補う方法を検討します。
引渡し当日は支払いと書類を一覧で照合する
契約条件を満たし、代金の支払いや株式の引渡しを実行する段階をクロージングと呼びます。当日は、契約書の引渡し条項と次の一覧を照合します。
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| 照合する書類等 | 渡す側・確認する側 | 照合内容 |
|---|---|---|
| 締結済み株式譲渡契約書 | 売り手・買い手 | 最終版と実行条件 |
| 承認請求書・承認通知書 | 会社・取引当事者 | 対象株式と承認 |
| 承認を記録した議事録等 | 会社・確認担当者 | 決定機関と内容 |
| 株券 | 売り手から買い手 | 必要な場合の現物 |
| 振込記録・入金確認資料 | 買い手・売り手 | 金額と着金 |
| 株主名簿書換請求書 | 請求者から会社 | 対象株式と名義 |
| 書換え後の株主名簿 | 会社・確認担当者 | 変更結果 |
| 辞任届・就任承諾書等 | 関係者から担当者 | 役員交代がある場合 |
| 役員選任等の議事録 | 会社から担当者 | 登記準備の状況 |
| 印章・通帳等の受領記録 | 旧担当者・新担当者 | 物品と受領者 |
| 保証手続きの未了事項表 | 売り手・買い手 | 担当と次の期限 |
一覧の全項目が、すべての案件で当日交付となるわけではありません。株券を発行しない会社では、その前提に合わせます。名簿の更新や物品の引渡しも、合意した時期を記入してください。
当日の進行は、次の順で担当者とすり合わせます。
1. 実行条件と承認書類を照合する
2. 契約に沿って決済と引渡しを進める
3. 着金と書類・物品の受領を記録する
4. 名簿の更新状況を確認する
5. 登記と保証の未了事項を引き継ぐ
振込操作の記録と、売り手口座への着金は分けて確認します。書類が届いていなければ、受領済みにはしません。実行条件が満たされていない場合は、実行の延期や条件変更を契約に沿って検討します。
本人確認書類や印鑑証明書は、提出先が求める条件に合わせて事前に用意します。発行時期と原本の要否も確認してください。株式譲渡そのものと役員変更の登記は、別の手続きとして管理します。
依頼範囲と費用を資料準備の段階で明らかにする
費用は、仲介報酬と法律・税務・登記などの個別業務を分けて確認します。担当が曖昧だと、必要な確認が抜けたり、想定外の費用が生じたりします。
仕事の分担を整理する際は、次の区別が目安になります。
| 担当 | 主に確認すること |
|---|---|
| M&A仲介会社 | 買い手探し・条件整理 |
| 弁護士 | 契約・法的責任の検討 |
| 税理士 | 譲渡に伴う税務 |
| 司法書士 | 登記に関する手続き |
各担当が扱う範囲と、別途依頼が要る仕事を確認してください。契約の確認を依頼する場合も、書類の体裁だけか、保証や補償の条項まで含むかで範囲が変わります。
あさひ国際会計株式会社の相談は無料で、着手金なしの成功報酬のみです。報酬は成約時に譲渡代金の中から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。成功報酬まで無料になる意味ではありません。
個別に依頼する専門家の費用や税金は、仲介報酬と区別して確認します。支払える見通しがない場合は、依頼範囲と支払時期を契約前に相談してください。費用を払えないという事情だけで、必要な法的確認を省くのは避けます。
詳しくは株式譲渡の専門家に頼む仕事がわかる、廃業検討中の社長のための依頼ガイドをご覧ください。
よくある質問
株式譲渡の必要書類は、会社の定めや取引条件によって変わります。相談開始に使う資料と、譲渡実行までに整える書類を区別すると、準備の順序をつけやすくなります。
株式譲渡契約書のひな形だけで進められますか?
ひな形は確認事項を拾う参考になりますが、自社の取引をそのままカバーするとは限りません。譲渡承認や株券の扱いに加え、借入・保証・未払いの事情を反映する必要があります。とくに売り手の責任と保証への対応は、合意した条件と照合してください。空欄を埋める作業だけで署名へ進まない方が安全です。
決算書が古く、株主名簿も見つからない状態で相談できますか?
資料が不十分でも、現状を伝えるところから相談できます。古い決算書には対象期間を明記し、現在の預金残高と支払予定を添えてください。株主名簿がなければ、株主と認識している人と取得の経緯をメモにします。ただし、そのメモだけで権利関係が確認できた扱いにはしません。相談を始めることと、譲渡を実行できることは分けて考えます。
株式譲渡の書類を法務局へ一式提出するのですか?
株式譲渡の書類すべてを、法務局へ一括提出する手続きではありません。売買契約や会社内部の承認、株主名簿の書換えは、それぞれ目的や保管先が異なります。代表者や役員などの登記事項も変わる場合は、変更に応じた登記の書類を用意します。株式が移る手続きと、登記された内容を変える手続きを区別してください。
買い手から「保証は後で外す」と言われたら署名してもよいですか?
その説明だけで署名を決めるのは避けてください。保証解除には金融機関等の同意が前提となります。対象の保証や金融機関の条件に加え、実施されなかった場合の扱いを確認します。代表者変更登記後の正式な手続きを待つ場合も、担当者と確認予定は事前に詰められます。見通しの裏付けがない状態と、条件を確認して手続きを待つ状態を区別してください。
まとめ
手元の決算書と借入資料をまとめ、次の支払日と不足書類をメモにしてください。連帯保証がある方は、その事情も添えて無料相談へお伝えいただければ、資料整理と譲渡条件の検討から着手できます。
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この記事を書いた人
あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
他社で断られた案件のご相談も承っています。ご相談は無料です。
無料相談はこちら / お急ぎの方はお電話でも承ります 03-5657-7496
—FIGURES—
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—END FIGURES—
最終更新日: 2026年10月23日