この記事の対象と結論

社会保険料の支払期限が迫り、借入返済や給与との優先順位に悩んでいる経営者を対象にしています。

結論からいうと、社会保険料を滞納した会社でも、売却を検討する余地はあります。滞納があるという理由だけで、M&Aの対象外になるとは限りません。

ただし、滞納額や資金繰りを隠したまま進めると、買い手の判断が遅れます。借入と連帯保証を含め、会社の負担を早い段階で開示することが欠かせません。

今日おこなうことは、支払予定と手元資金の確認です。明日までには、専門家への相談と資料の準備を始めてください。相談する経営者は珍しくありません。恥ずかしさから一人で抱え込む必要はないのです。

今日・明日に確認すること

今日中に支払予定を一覧にする

最初に、今後7日間の入出金を日付順に並べます。社会保険料だけを見ても、会社全体の危険度は判断できません。

次の項目を確認してください。

1. 現預金の残高
2. 取引先からの入金予定
3. 給与と外注費の支払日
4. 社会保険料などの支払予定
5. 借入返済と手形の決済日

数字が確定していない項目には、未確認と記載します。曖昧な記憶で資金繰りを組まないことが大切です。

手形・小切手を利用している会社は、とくに決済日を確認してください。6か月間に2回の不渡りが生じると、その後2年間、参加銀行との当座預金取引と貸出取引が禁止されます。出典は全国銀行協会「電子交換所」です。

明日までに滞納額と資料をそろえる

社会保険料の滞納について、金額と対象期間を整理します。担当者から届いた書面も、捨てずにまとめてください。

M&Aの初期判断では、次の資料が役立ちます。

  • 直近の決算書
  • 最新の試算表
  • 今後の資金繰り表
  • 借入返済予定表
  • 連帯保証の資料
  • 滞納状況が分かる書面

資料がすべてそろうまで、相談を待つ必要はありません。手元にある範囲で連絡し、不足資料を確認する進め方もあります。

新たな約束をする前に資金繰りを確認する

焦っていると、支払える見込みのない日付を伝えたくなるかもしれません。しかし、その約束が会社売却の進行と両立するかは、慎重に見極める必要があります。

まず、今後の入金と支出をもとに現実的な資金繰りを作ります。そのうえで、経営者ご本人が関係先と協議してください。法的な判断や代理交渉が必要な場合は、弁護士などへの依頼を検討します。

資産や事業を独断で動かさない

会社の預金や在庫、車両、設備は、買い手が事業価値を判断する材料です。個人への資金移動や、説明しにくい資産処分があると、確認事項が増えてしまいます。

すでに資金移動をした場合も、隠さず経緯を整理してください。何に、いつ、いくら使ったのかを説明できる状態にします。

社会保険料を滞納した会社の売却可能性

滞納だけで決まらない
売却可能性の判断軸

滞納の有無だけでは決まらない

買い手は、社会保険料の滞納だけを切り離して見ません。事業の収益力や顧客基盤、人材、設備、許認可の状況などを合わせて検討します。

売却可能性を左右しやすい要素は、次のとおりです。

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確認項目 買い手が見る内容 準備するもの
滞納状況 金額・経緯 関係書面
資金繰り 支払継続性 資金繰り表
事業価値 収益・顧客 試算表
借入 残高・保証 借入資料

滞納があっても、事業に価値があり、全体像を説明できれば検討対象になりえます。反対に、情報が不明確なままでは、買い手が判断しにくくなります。

株式譲渡では会社の負担も確認される

株式譲渡では、会社そのものの経営権が買い手へ移ります。そのため、買い手は資産だけでなく、借入や滞納を含む負担も詳しく確認します。

社会保険料の滞納を簿外にしたり、小さく見せたりする方法は避けるべきです。後から判明すれば、条件の見直しや取引中止につながるおそれがあります。

滞納の理由も説明材料になります。単発の入金遅延なのか、恒常的な赤字なのかで、必要な対応は変わるためです。

事業譲渡という設計もある

会社全体ではなく、事業の一部を譲る事業譲渡も選択肢です。どの資産や契約を対象にするのかを個別に設計します。

ただし、事業だけを譲れば経営者の問題がすべて解消するわけではありません。売り手企業に社会保険料の滞納や借入が残る可能性も考える必要があります。

株式譲渡と事業譲渡のどちらが合うかは、事業価値だけでは決まりません。残る債務や連帯保証、譲渡代金の使い方まで含めた検討が必要です。

赤字や債務超過でも余地はある

当社が支援して成約した案件では、財務資料が残る9件のおよそ3分の2が債務超過でした。債務超過額は、3,000万円から6,000万円規模が中心です。

たとえば、運送業で売上1億円台、債務超過3,000万円規模、従業員10名前後の会社もあります。財務状況だけで売却可能性を決めつけることはできません。

詳しくは「債務超過の会社は売却できるか。価格と進め方」をご覧ください。

売却条件と連帯保証への影響

譲渡代金だけで判断しない

社会保険料を滞納している場面では、見かけの譲渡価格だけで買い手を選ぶと危険です。売却後に何が会社へ残るのかを比べる必要があります。

主な比較項目は、次のとおりです。

  • 滞納分の扱い
  • 借入の扱い
  • 連帯保証の扱い
  • 従業員の雇用
  • 実行までの資金繰り
  • 経営者の引継ぎ期間

条件を一つずつ書面に落とし、全体として経営者の再出発につながるかを確認します。

会社売却と連帯保証は別の論点

会社を売却しても、借入の連帯保証が自動的に外れるとは限りません。保証の解除には金融機関の同意が前提となります。

当社では、これまで成約に至った案件のいずれも、連帯保証の解除まで見届けています。ただし、すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。

詳しくは「会社を売却しても連帯保証が外れない理由と解除に向けた進め方」をご覧ください。

買い手の資力と実行能力を確認する

社会保険料の支払期限が迫ると、早く買うという言葉に期待したくなります。しかし、買い手が資金を用意できるかも確認が必要です。

M&A支援機関協会は、自主規制ルールで譲受け事業者の資力についての調査義務を定めています。また、2024年10月1日から特定事業者リストを運用しています。

このリストは、不適切な譲受け事業者の情報を加盟社間で共有する仕組みです。M&A取引の実行日から60営業日以内に経営者保証が解除されない場合、掲載の対象になりえます。

保証解除を契約条件として確認する

M&A支援機関協会の改正された自主規制ルールは、2025年1月1日に施行されました。最終契約書の草案を作る際、経営者保証の解除を譲受け事業者に義務付ける条文案を盛り込むことを定めています。

2024年9月には、広告営業規程の附則3項として、経営者保証解除に関するサンプル条項も公表されました。

制度が整っても、個別案件の確認は残ります。対象となる借入を洗い出し、金融機関の同意や解除確認までの手順を設計します。

7日以内に売却可能性を見極める流れ

今日から順に着手
7日以内の進め方

1日目は資金ショートの日を特定する

まず、会社の資金がいつ足りなくなるのかを日付で示します。「今月が厳しい」では、打ち手の順番を決められません。

入金が遅れた場合と、予定どおり入った場合の両方を作ります。数字の幅が見えれば、M&Aの検討に使える時間も分かります。

税金の滞納も重なっている方は「会社が税金を滞納すると差押えはいつ?7日以内に進める回避手続」もご覧ください。

2日目までに初期資料を共有する

相談時には、会社の良い面だけでなく、滞納や借入も伝えます。事情を伏せるほど、後の確認に時間がかかります。

初期段階では、詳細な資料集を完成させるより、売却可能性を判断できる情報を早く共有することが先です。資料が不足していれば、専門家と優先順位を決めます。

3日目以降は事業価値を整理する

買い手が引き継ぎたいものを明確にします。決算書に表れにくい価値もあるため、現場の情報を整理してください。

  • 継続的な取引関係
  • 技術を持つ従業員
  • 車両や設備
  • 受注残と商談
  • 営業上の許認可
  • 地域での事業基盤

同時に、赤字の原因も分解します。事業自体の採算が悪いのか、借入返済などの負担が重いのかで、買い手への説明は変わります。

7日以内に進め方を選ぶ

初期検討の結果をもとに、M&Aを進めるか、別の再生策や法的整理を検討するかを判断します。

→ 横にスクロールできます

選択肢 主な目的 相談先
再生型M&A 事業を引き継ぐ M&A支援機関
経営改善 収益を立て直す 活性化協議会
法的整理 債務を法的に整理 弁護士
保証債務整理 個人保証を整理 弁護士など

破産手続きを主に扱う専門家と、事業を残す前提の再生を扱う専門家では、得意分野が異なります。状況によっては、破産・清算などの法的整理が適切な場合もあります。

相談時に確認したい支援内容

M&A支援機関には役割を確認する

相談先には、赤字や債務超過の会社を扱った経験があるかを確認します。社会保険料の滞納だけでなく、借入と連帯保証をまとめて見られるかも判断材料です。

あさひ国際会計株式会社は、再生型M&Aの仲介を専門としています。金融機関との協議に必要な資料の整備や、事業価値の説明資料の作成、M&Aの条件設計を通じて、経営者ご本人の協議を支えます。

弁護士へつなぐ場面を確認する

法的な判断や代理交渉が必要な場面では、弁護士への依頼を検討します。M&Aと法務の検討を並行させることもあります。

相談先を選ぶ際は、M&Aだけを前提にしていないか確認してください。事業を残す案と法的整理の両方を見ながら、時間と資金の制約に合う方法を選びます。

公的窓口も利用できる

中小企業活性化協議会は、47都道府県すべてに設置された公的機関です。相談無料、秘密厳守、事前予約制とされています。

収益力改善支援、プレ再生支援・再生支援、再チャレンジ支援を扱います。再チャレンジ支援には、保証債務に悩む経営者などの保証債務の整理・清算も含まれます。

窓口は中小企業庁の「中小企業活性化協議会」で確認できます。

報酬と対応速度を確認する

当社への相談は無料で、着手金はありません。報酬は成約時に譲渡代金の中から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。

赤字・債務超過案件は、おおむね2〜4週間で成約しています。相談から最短5日でクロージングした実績もあります。ただし、案件ごとに必要な確認や関係者の同意が異なります。

平日の営業時間内にいただいたご連絡には、最短当日に対応します。期限が迫っている場合は、支払日と手元資金を最初にお伝えください。

よくある質問

社会保険料を滞納した会社でも買い手は見つかりますか?

事業に顧客、人材、設備、許認可などの価値があれば、買い手が検討する余地はあります。滞納額だけでなく、借入や連帯保証、今後の資金繰りを開示し、買い手が負担の全体像を判断できる状態にすることが必要です。

滞納を解消してから相談したほうがよいですか?

先に相談したほうがよい場面があります。滞納を解消するために運転資金を使い切ると、給与や事業継続に影響するかもしれません。支払期限、手元資金、売却に必要な期間を整理し、経営者ご本人が関係先と協議してください。

会社を売却すれば連帯保証も外れますか?

会社売却だけで連帯保証の解除が決まるわけではありません。金融機関の同意が前提です。対象となる保証を洗い出し、買い手の資力や契約条件、解除確認までの流れを含めて検討します。

資料が不足していても相談できますか?

手元にある資料だけでも相談できます。まず、現預金、直近の支払日、滞納額、借入残高、連帯保証の有無を伝えてください。その後、売却可能性の初期判断に必要な資料から順にそろえます。

まとめ

社会保険料を滞納した会社でも、売却可能性が残っていることはあります。判断の中心になるのは、滞納の有無だけではありません。事業価値、資金繰り、借入、連帯保証を一体で整理する必要があります。

今日中に支払予定と手元資金を確認し、明日までに相談を始めてください。情報を隠さず、7日以内にM&Aと他の選択肢を比較します。

時間がたつほど、給与や取引先、家族への影響が広がるおそれがあります。法的整理が適切な場合も含め、残された選択肢を早い段階で見極めることが、次の一歩につながります。

この記事を書いた人

あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を伴う再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介に携わっています。
他社で断られた案件のご相談も承っています。ご相談は無料です。

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最終更新日: 2026年8月17日