用語集 > 企業価値担保権
企業価値担保権とは、事業性融資の推進等に関する法律(令和6年法律第52号)で新設された担保権で、会社の総財産(将来取得する財産を含む)を一体として担保にできます。不動産や個人保証に頼らず、事業の価値や将来性を担保に融資を受けることを狙った制度で、2026年5月25日に施行されました。
条文・原文の核心
『一体として、企業価値担保権の目的とすることができる』事業性融資の推進等に関する法律7条1項(原文)
『保証契約であって保証人が法人でないもの』同法12条1項1号(権利を行使できない契約の一つ)(原文)
仕組み
- 会社の総財産(将来取得するものを含む)を、一体として担保の目的にできます(法7条1項)。
- 企業価値担保権を持つ者は、他の債権者に先立って配当を受けられます(同条2項)。
- 設定には、会社と企業価値担保権信託会社の間の信託契約(企業価値担保権信託契約)が使われます(法6条3項・8条)。
- 会社は、取締役の決定、取締役会や株主総会の決議など、会社の形態ごとに定められた手続で設定します(法10条)。
- 担保権を実行するときは、裁判所が関与する実行手続によります。
個人保証との関係(法12条)
この担保権で担保される債権(特定被担保債権)に係る債務については、法人でない人(個人)を保証人とする保証契約の権利を、債権者は行使できません(法12条1項1号)。生活の本拠として使っている不動産などに設定した担保権も同様です(同項2号)。ただし、会社が事業や財産の状況について虚偽の報告をしたことを停止条件にするなど、主務省令で定める要件を満たす個人保証契約等には、この制限は適用されません(同条4項)。
条件と注意点
- 制限が及ぶのは、企業価値担保権で担保される借入に係る保証だけです。企業価値担保権が付いていない既存の借入の連帯保証が、この法律によって自動的に外れるわけではありません。
- 企業価値担保権は、他人の債務を担保するために設定できません(法13条1項)。債務の引受けや債務者の交替があったときも、担保権をそのまま引受人の債務に移すことはできません(同条2項〜4項)。
- 対象となるのは、金融機関等からの会社に対する貸付けのうち、不動産担保や個人保証に担保されないもの(事業性融資)を中心とします(法2条1項)。
- どの金融機関が、どの会社に、どの条件で使うかは、2026年の施行後に各金融機関が個別に取り扱いを始めている段階です。
中小企業の社長にとっての意味
新しく借りる融資で、不動産や個人保証に頼らない選択肢が増えました。ただし、すでに負っている連帯保証を外す制度ではありません。いま保証している借入については、経営者保証ガイドラインや、会社の整理・事業の引継ぎの中で扱いを考えることになります。
よくある質問
企業価値担保権ができたので、いまの連帯保証は外れますか
外れません。法12条の制限が及ぶのは、企業価値担保権で担保される債権に係る債務についてです。既存の借入にある連帯保証は、この法律だけでは変わりません。
企業価値担保権はいつから使えますか
事業性融資の推進等に関する法律は2026年5月25日に施行されました。実際の取り扱いは、各金融機関が個別に判断して始めています。
関連する用語
- 経営者保証ガイドライン:経営者保証ガイドラインとは、中小企業の借入で経営者個人の保証に頼らない融資のあり方と、すでに負っている保証債務を整理するときの準則を示した指針です。
- 債務超過:債務超過とは、会社の財産をすべて使っても、負債を完済できない状態のことです。
- 中小企業活性化協議会:中小企業活性化協議会とは、産業競争力強化法に基づき47都道府県すべてに置かれた公的機関で、収益力の改善や事業再生を目指す中小企業の相談に、無料で応じます。
出典
この用語集は一般的な制度の説明です。個別の会社への当てはめは、弁護士など専門家にご相談ください。条文は e-Gov 法令検索の原文で確認しています(2026年10月23日時点)。法令や制度は改正されることがあります。
赤字・債務超過の会社のM&Aや連帯保証のご相談は、あさひ国際会計(03-5657-7496・平日9:00〜19:00)まで。相談先の選び方は赤字・債務超過の会社は、どこに相談すればいいかにまとめています。