目次
この記事の対象と結論
個人が自社株を第三者へ売る場合、税金は原則として売却益にかかります。売却代金の全額に税率をかける計算ではありません。
借入の連帯保証を抱え、廃業を考えているなら、税額とあわせて納税後の生活資金を確かめてください。会社に借金があることと、株主に売却益が出ることは別の話です。会社が赤字でも、株を売る個人に税金が生じる場合があります。
判断の出発点は、会社のお金と個人のお金を分けることです。 株式の取得費を確認し、売却にかかる費用と納税額を見積もります。連帯保証の解除は、その計算とは別に条件を整える必要があります。
廃業か譲渡かを決めきれずに相談する経営者は珍しくありません。価格が決まっていない段階でも、支払期限と手元資金から整理を始められます。
株式譲渡の税金は「誰が売るか」と「利益」で決まる
経営者個人が保有株式を第三者へ譲る場合、譲渡所得等に課税されるのが基本です。会社が保有する株式を売る場合とは、計算の仕組みが異なります。
個人株主の税率は原則20.315%
個人の株式等の譲渡所得等には、原則として合計20.315%の税率が適用されます。内訳は所得税15%と住民税5%、復興特別所得税です。復興特別所得税は所得税額の2.1%で、適用期間は平成25年から令和19年までです。出典は国税庁タックスアンサー「株式等を譲渡したときの課税」で、2026年8月確認の内容です。
給与などの所得と分けて税額を計算する仕組みを、国税庁は「申告分離課税」と説明しています。ほかの所得と合算して税率を決める計算とは区別します。
ただし、税率だけでは納税額は出ません。取得時の支出や、売却に直接かかった費用の確認が先です。手元に残る金額を知るには、売却代金と売却益を分けて扱ってください。
税金の計算は売却代金から取得費などを引いて始める
基本となる計算は、次の形です。
> 株式の譲渡所得等=売却代金-取得費-譲渡費用等
取得費は、株式を取得するためにかかった金額などです。創業時に出資したのか、ほかの株主から買ったのかで、確認する資料が変わります。会社に貸したお金を、株式の取得費に混ぜないようにしましょう。
譲渡費用等は、売却との関係を確かめたうえで扱います。仲介報酬なども、契約内容と支払者の確認が必要です。会社が負担した費用を、そのまま個人の計算から引けるとは限りません。
まずは概算で構いません。ただし、取得費が不明な欄を推測で埋めると、税額の見込みもずれます。「確認済み」と「資料待ち」を分けた計算表にしておくと、契約直前の修正を減らせます。
会社の赤字と株主の売却益は別に計算する
会社が赤字だから、経営者の株式譲渡も非課税になる。そう考えるのは早計です。会社の損益と、個人が株を売って得た利益は、納税する主体が異なります。
債務超過でも、買い手が事業の継続価値を評価する場合があります。取引先との関係や従業員の技能を引き継ぎたい、という買収理由も考えられます。その結果、株式に譲渡価格がつくことがあります。
反対に、会社の決算上は利益が出ていても、個人の株式売却で利益が出るとは限りません。取得費と売却条件によるためです。決算書だけでは、社長個人の税額は決まりません。
借入残高を、個人の株式譲渡益からそのまま差し引く扱いにも注意してください。会社の借入は価格を決める材料になり得ますが、税務上の取得費とは別です。
売り手が法人なら個人向けの税率を使わない
株主が経営者個人とは限りません。持株会社などの法人が株式を保有しているなら、売却による損益はその法人側で確認します。個人向けの税率を、そのまま流用することは避けてください。
家族と株式を分けている場合も、売主ごとの整理が必要です。会社全体の売却代金と、社長自身が受け取る代金は一致しないことがあります。
契約書に署名する人と、実際に株式を保有する人が食い違う場合は確認が要ります。税額の計算より先の問題です。名簿だけで判断せず、取得時の記録も照らし合わせましょう。
最初に確認する事項は、次のとおりです。
- 株式を売るのは個人か法人か
- 各株主が何株を保有しているか
- 代金を誰がいくら受け取るか
- 株式を取得した経緯が分かるか
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手取りの計算では、税務上の利益と実際の出金を分ける
株式譲渡後の手取りは、売却代金から実際の費用と納税資金を差し引いて考えます。税務上の利益を計算する表と、現金の出入りを追う表を分けてください。
取得費は過去の支出、手取りはこれから使えるお金
株を取得したときの支出は、通常、過去に済んでいます。税額の計算では取得費として扱っても、今回の入金から同じ額が再び出ていくわけではありません。
ここを混ぜると、手取りを少なく見積もることがあります。一方、仲介報酬など今回支払う費用を落とすと、使えるお金を多く見積もってしまいます。
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| 項目 | 税額を計算する表 | 現金を確認する表 |
|---|---|---|
| 売却代金 | 収入として確認 | 入金日と金額を確認 |
| 株式の取得費 | 利益から控除を検討 | 過去の支出を確認 |
| 今回の譲渡費用 | 控除の可否を確認 | 支払日と金額を確認 |
| 株式譲渡の税金 | 計算した結果 | 納税資金を取り置く |
| 個人から会社への送金 | 別途扱いを確認 | 個人の出金に反映 |
会社への資金補填を予定しているなら、その出金も現金の表に載せます。ただし、出金したという理由だけで、株式譲渡益から引けるとは限りません。税務と資金繰りでは、見ているものが違うのです。
手取り表には、すでに払った費用も明示しておきましょう。精算時の支払いと重ねて引いていないかを確認できます。
取得費の資料がないときは、出資と貸付を分けて探す
創業から時間がたち、株式の取得費が分からないこともあります。記憶だけで金額を決めず、当時の出資や株式購入の記録を確認してください。
探す資料の候補は、次のようなものです。
- 設立時の出資を示す書類
- 株式を購入した際の契約書
- 増資時の払込みを示す記録
- 株式取得に伴う入出金の記録
会社へ入れたお金には、出資と貸付が混在しがちです。資金繰りが苦しくなるたびに社長が送金していた場合は、なおさらです。帳簿上の処理と実際の経緯を、税理士と照らし合わせます。
取得費が確認できない状態で、納税額を低めに見積もるのは避けましょう。未確認の項目が残る間は、生活費へ回せる金額も暫定扱いです。資料不足を早く共有すれば、契約後に慌てて調べる負担を抑えられます。
なお、現在の会社の資本金を、そのまま自分の取得費と置くのも避けてください。株式を買い受けた経緯や、保有する割合まで確認する必要があります。
仲介報酬は「誰が負担するか」まで確認する
同じM&Aの費用でも、株主個人の支出か、会社の支出かで扱いが変わります。請求書の宛名だけでなく、依頼内容と契約上の負担者を確認してください。
見落としやすいのが、複数の業務をまとめた報酬です。売却の仲介に加え、会社の会計整理などを含む場合があります。その全額を同じように扱えるかは、検討が要ります。
支払額を税務上どこまで差し引けるかは、税理士が資料にもとづいて判断する部分です。仲介会社の手取り説明と、申告用の計算が一致しているかも確かめましょう。
株式の売却自体と、仲介サービスへの支払いは別の取引です。株式譲渡が消費税の非課税取引でも、関連費用まで同じ扱いになるとは限りません。見積書では税込みの支払額を確認しておくと、出金の不足を防ぎやすくなります。
会社への貸付金の回収を株式代金に混ぜない
社長が会社に貸しているお金がある場合、その貸付金をどう扱うかも決めます。株式を譲れば、貸したお金も一緒に返ってくるという関係ではありません。
買い手の提案書に「総額」とだけ書かれていると、内訳が見えにくくなります。株式の対価と貸付金の返済を分け、それぞれの支払者と受取人を確認しましょう。
- 株式代金として受け取る金額
- 貸付金の返済として受け取る金額
- 今回は回収できずに残る金額
- 貸付金の扱いに関する合意内容
返済を受ける原資が会社のお金なら、会社側の資金繰りにも影響します。給与や仕入代金の支払いを圧迫しないか。買い手の事業計画とも突き合わせて判断します。
内訳のない手取り額は、判断材料として不十分です。貸付金を残すのか、別に譲るのかという条件も、口頭で済ませないでください。合意内容を分けてから、税務上の扱いを確認します。
株式譲渡・事業譲渡・清算では、お金を受け取る人が違う
個人株主による株式譲渡では、通常、代金は株主が受け取ります。事業譲渡では会社が対価を受け取り、清算では債務などを整理した後の財産が分配の対象になります。
株式譲渡では会社の借入も会社に残る
株式譲渡は株主が変わる取引であり、会社そのものは続きます。借入金などの債務も、原則として会社に残ります。株式代金が社長に入金されても、会社の預金が同額増えるわけではありません。
「会社を売ったお金で借入を返す」と考えているなら、資金の流れを具体化してください。誰の口座から、誰へ支払うのか。個人の売却代金を使うなら、納税後に充てられる金額で考えます。
買い手が会社へ資金を入れる計画と、売主へ株式代金を払う計画も分けて確認します。どちらかだけ決まっていても、事業の継続と個人の生活を両立できるとは限りません。
出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月公表、2026年8月確認)。ガイドライン掲載ページ
事業譲渡では会社の納税と支払いが先に見える
会社が事業を譲る場合、譲渡による収益は法人税の計算に関わります。個人の株式売却と同じ税率で、社長の手取りを計算することはできません。
代金を受け取るのは会社です。その後に会社が負担する税金や、残った債務への支払いを考えます。会社に入ったお金を、そのまま社長の生活費として扱うことも避けてください。
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| 比較項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 | 清算 |
|---|---|---|---|
| 主な受取人 | 売主である株主 | 譲渡する会社 | 残余財産を受ける株主 |
| 税務の出発点 | 株主の譲渡損益 | 会社の譲渡損益 | 分配金の性質 |
| 会社の借入 | 原則として残る | 承継条件を確認 | 整理の見通しを確認 |
| 個人の手取り | 費用・納税後を試算 | 個人への移転も検討 | 分配可能額から試算 |
借入が多い会社では、税率の比較より先に、支払い後にいくら残るかを見ます。事業譲渡後の会社に債務が残るなら、その整理まで含めて比べましょう。
買い手が事業譲渡を希望している場合、株式譲渡と同額の提示でも意味が違います。会社に残る仕事と費用を確認し、個人への資金移転まで試算する必要があります。
詳しくは事業譲渡と株式譲渡の違いを比較|借入・連帯保証・従業員の行方をご覧ください。
清算時の分配金をすべて株式の売却益と扱わない
会社を解散し、残った財産を株主が受け取る場合、受取額の性質を分けて計算します。全額に株式譲渡の税率をかけるだけでは済まないことがあります。
国税庁の説明では、分配額から「みなし配当」とされる部分を除きます。その残額が、株式等の譲渡所得等の収入金額とみなされる枠組みです。非上場株式の清算に伴うみなし配当は、総合課税の配当所得として扱われます。
出典:国税庁「株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる場合」、国税庁「配当金を受け取ったとき(配当所得)」
総合課税は、ほかの対象所得とあわせて税額を計算する仕組みです。株式譲渡と清算で受取額が近くても、税引後の金額が同じとは限りません。廃業を比較対象にするなら、清算費用も含む試算が要ります。
そもそも分配できる財産が残るかも確認してください。帳簿に資産が載っていても、その金額で換金できるとは限らないためです。
株式の消費税と事業資産の消費税を分けて見る
株券などの有価証券等の譲渡は、消費税の非課税取引とされています。個人の株式譲渡益への課税とは、別の税金の話です。
国税庁は、有価証券等の譲渡を「非課税となる取引」に挙げています。株式を売って消費税がかからなくても、売却益に所得税などが生じる可能性は残ります。
事業譲渡では、譲る財産ごとに消費税の扱いを確認します。非課税取引の一般原則を当てはめると、土地などは課税資産と分ける必要があります。取引全体をひとまとめにして判断しないでください。
見積書や契約書では、価格の内訳と税込み・税抜きの表示をそろえます。消費税の負担を含めた会社の入出金が見えれば、株式譲渡との比較もしやすくなります。
納税資金は契約時点から残し、入金の遅れにも備える
株式譲渡を決める際は、納税見込額を使えるお金から分けておきます。代金の入金時期と課税の時期がずれる条件では、資金不足が起きないか先に検討してください。
入金額をそのまま生活費や返済に回さない
廃業を考える局面では、売却代金の使い道がすでに決まっていることがあります。滞った支払いを済ませたい。家族の生活費を残したい。その気持ちは自然です。
ただ、税金の支払いを後回しにした資金計画では、譲渡後に困るおそれがあります。手取りの試算を受け取ったら、「税引後か」「費用支払後か」を確認してください。
使途を分ける際の確認項目は、次のとおりです。
- 譲渡に伴う費用の支払額
- 所得税などの納税見込額
- 個人が負担する返済の予定額
- 譲渡後の暮らしに残す金額
入金された金額と、自由に使える金額は同じとは限りません。 納税資金は、生活費の残高と区別して管理します。最終的な税額が未確定なら、税理士に見積もりの前提も聞いておきましょう。
家族と生活費の見通しを共有する際も、売却価格だけを伝えないようにします。使える金額と、まだ動かせない金額を分けたほうが、譲渡後の暮らしを考えやすくなります。
分割払いは入金と課税の時期をそろえて確認する
買い手から代金を分割して払いたいと言われた場合、総額だけで判断しないでください。受け取る前のお金を、納税資金に数えてしまう危険があるためです。
分割払いにすれば、課税も支払回数に応じて分かれるとは限りません。株式を譲る時期や契約条件をもとに、どの年の所得となるかを税理士に確認します。
価格の一部が後日の条件達成で決まる場合も、整理が要ります。未確定の対価と、確定済みだが未入金の対価は事情が異なります。契約書を示したうえで、税務と回収の両面から検討してください。
- 株式を譲る時期
- 代金が確定する条件
- 実際に入金される予定日
- 納税に必要なお金の確保方法
契約を急ぐ事情があっても、入金予定表は省かないようにします。支払いが遅れた場合の生活資金まで見ておくと、条件を受け入れられるか判断しやすくなります。
会社の滞納税と個人の譲渡税を同じ表で相殺しない
会社が税金を滞納している場合、株式譲渡後の事業継続にも影響します。買い手への説明に含め、支払いの見通しを整える必要があります。
一方、社長個人の株式譲渡にかかる税金は、別の納税義務です。会社に滞納があるという理由で、個人の譲渡益に対する税額が減るわけではありません。
資金繰り表も、納税する人ごとに分けましょう。会社名義の税金を社長が負担する提案があるなら、法的・税務上の扱いを確認します。原資が個人の売却代金なら、社長の手取りはその分減ります。
通知書にある名義と期限も確認対象です。未納の情報を曖昧にしたまま買い手と話を進めると、後から条件の見直しが必要になりかねません。
未納額のほか、すでに支払った分を示す記録もそろえてください。古い資料をもとにすると、買い手への説明と実際の残高にずれが生じます。
納税が難しい場合は猶予の要件を個別に確かめる
納税資金を確保できない見込みなら、使える制度の要件を早めに検討します。ただし、払えないと伝えるだけで税金が減る仕組みではありません。
国税通則法の納税の猶予は、廃業や著しい損失などの事情が前提です。その事情にもとづき、一時に納付できないと認められる場合に検討されます。申請にもとづく猶予期間は1年以内です。出典は国税通則法第46条で、2026年8月19日に条文を確認しています。
国税徴収法の換価の猶予は、別の制度です。一時の納付で事業や生活の維持が難しくなるおそれなどが要件となります。申請によるものは納期限から6月以内の申請が必要で、猶予期間は1年以内です。出典は国税徴収法第151条の2で、2026年8月19日確認の内容です。
会社の廃業という事情だけで、社長個人の譲渡税にも適用されるとは限りません。納税者本人の状況と申請要件を税理士に確認してください。猶予を受けられる前提で代金を使い切ることは避けましょう。
申告と納付の準備も分けて進めます。お金が足りないからといって、税額の確認まで止めると、必要な対応を判断しにくくなります。
廃業との比較では、税引後の手取りと連帯保証を並べる
株式譲渡を選ぶかどうかは、税金の少なさだけでは決められません。個人に残るお金に加え、会社の事業と借入、経営者の連帯保証がどうなるかを並べて判断します。
安い譲渡価格でも負担の減少まで含めて比べる
廃業を検討している会社では、高い株価より、事業を引き継ぐ条件が判断を左右する場合があります。会社の支払いが続くのか。従業員が働き続けられるのか。経営から離れた後の負担も含めて考えます。
ただし、価格が低ければ受け入れてよいという意味ではありません。買い手に会社を維持する資金があるか、提示条件が具体的かを確認する必要があります。
比較する表には、次の項目を入れてください。
- 個人に残る税引後の金額
- 会社に残る借入と支払い
- 連帯保証の解除に向けた条件
- 従業員と取引先への影響
廃業案についても、設備の処分や契約の終了などに伴う出金を整理します。譲渡案だけ詳細にし、廃業案を「何も残らない」と決めつけては、比較になりません。
なお、取引価格を下げれば税金も軽くなるという理由だけで条件を決めないでください。価格の妥当性や取引の経緯も、専門家に確認する対象です。
詳しくは廃業とM&Aの税金で手取りは変わる、会社と個人に残るお金を分けて試算をご覧ください。
株式を売っても連帯保証の解除は別途確認する
株式譲渡契約は、売主と買い手の間の合意です。金融機関と経営者の保証契約が、その合意だけで消えるわけではありません。
最終契約では、保証の解除に向けて買い手が何をおこなうかを具体化します。それでも、解除や移行の実施には金融機関等の判断が関わります。契約書に条項があることと、解除が済んだことを分けて管理してください。
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、保証の扱いは最終契約の主要項目です。解除・移行が進まないリスクへの留意も示されています。2024年8月公表の資料を、2026年8月に確認した内容です。
税引後の手取りが見えても、保証の確認が終わるまでは個人の負担を判断しきれません。 金融機関ごとに対象となる保証を整理し、確認書類と手続きの進み具合を追います。
詳しくは株式譲渡と連帯保証人の行方|会社が残るM&Aで確認したい判断軸をご覧ください。
債務超過でも、譲渡の検討と税務確認は進められる
債務超過だから株式譲渡の検討に意味がない、と決める必要はありません。買い手が引き継ぎたい事業と、会社の借入の状況を整理します。そのうえで条件を検討できる場合があります。
当社が支援して成約した案件には、売上1億円台の運送業の会社もあります。債務超過は3,000万円規模で、従業員は10名前後でした。これは2026年8月の社内集計で確認した成約例です。
ただし、この事例から譲渡価格や税額は分かりません。債務超過額と個人の株式取得費は別の数字だからです。同じ規模の会社でも、株主の手取りは売却条件によって変わります。
従業員や取引先への責任を感じ、相談をためらう方もいます。判断に使うのは、継続に要る資金と期限です。事業を引き継ぐ案と終了する案を比べれば、何を残せるかが具体的になります。
譲渡を待つ間にも、給与や仕入代金の支払日は来ます。買い手探しに使える期間を資金繰りから確かめ、難しい場合の整理も並行して検討してください。
契約までにそろえる資料と、専門家に確認する順序
税額と手取りを固めるには、株式の資料と譲渡条件を照合します。会社の支払予定も確認し、契約書が完成する前に税務と資金繰りの見通しをつけてください。
資料は株主個人と会社に分けて用意する
資料をひとまとめにすると、誰の取得費で、誰の借入なのかが見えにくくなります。株主個人の資料と、会社の資料を分けて用意してください。
株主側で確認する資料は、次のとおりです。
- 株主名簿と株式取得の記録
- 出資や株式購入の支払資料
- 株式譲渡の提案書や契約案
- 仲介報酬などの見積書
会社側は、支払いが続けられるかを確かめる資料が中心です。
- 直近の決算書と試算表
- 現時点の資金繰り表
- 借入と返済予定が分かる資料
- 保証契約と未納に関する資料
すべてそろうまで相談を待つ必要はありません。見当たらない書類は、そのまま不足資料として伝えます。支払期限が迫っているなら、手元資金と直近の出金予定を先に共有してください。
資料の不足と、条件が決まっていないことは別です。何が未確認なのかを分けておけば、税理士や弁護士への確認も進めやすくなります。
税額は税理士、契約と保証の法的判断は弁護士が担う
税理士には、取得費と譲渡費用の扱いを確認し、納税額を試算してもらいます。売主や支払条件が変わった際に、税額を更新する役割も必要です。
弁護士は、譲渡契約の法的な確認や、保証債務を含む法律問題を扱います。債権者との交渉では、経営者本人が主体になります。必要に応じて依頼する弁護士等の専門家も、その役割を担います。
M&Aの仲介は、買い手の探索や条件の整理を担う役割です。名称だけで判断せず、誰が何を担当するのかを聞いてください。
- 税額試算と申告の担当者は誰か
- 契約の法的確認を誰が担うか
- 保証の扱いをどう確認するか
- 各業務の費用がどこまで含まれるか
廃業を主に扱う専門家と、事業の継続を前提に再生を扱う専門家では、得意分野が異なります。状況によっては法的整理が適切な場合もあります。弁護士から整理を勧められているなら、その理由と資金の期限も共有してください。
M&Aを希望していても、事業の継続や支払いの見通しが立つかを検討します。従業員や債権者への影響まで含めて、採れる選択肢を確認するためです。
条件が変わったら手取りの表も更新する
最初の見積もりが、最終的な手取りになるとは限りません。調査を通じて会社の未払金などが判明し、価格や支払条件が変わる場合があります。
更新の対象は、譲渡価格だけではありません。費用負担や貸付金の返済条件が変われば、個人の現金収支も変わります。税額試算に使った契約案が古くなっていないか確かめてください。
確認は次の順序で進めます。
1. 売主と売却対象の株式を確定する
2. 取得費と費用の資料を税理士に渡す
3. 入金・納税・生活資金の予定を並べる
4. 最終条件で税額と保証の扱いを再確認する
契約書と手取りの表が、同じ条件を前提にしているかが確認点です。説明を受けた条件が書面に反映されていなければ、署名前に差を埋めます。
口頭の安心だけで、納税資金を使う予定を立てないようにしましょう。変更した日付と内容を残しておけば、どの条件で試算したかも追いやすくなります。
当社の報酬と、納税・専門家費用は分けて見積もる
あさひ国際会計株式会社への相談は無料です。仲介は着手金なしの成功報酬のみで、成約時に譲渡代金の中から精算します。そのため、当社の仲介報酬について、売り手の手元からの持ち出しは0円です。2026年8月に確認された当社の料金方針です。
成功報酬が無料という意味ではありません。税金や別途依頼する専門家の費用は分けて確認してください。報酬額と精算後の手取りは、具体的な条件を確認してから判断できます。
手元資金が足りない場合は、その段階でお伝えください。価格や費用が未確定のまま、負担できると決める必要はありません。譲渡代金と必要な支出を並べ、成立可能な条件を検討します。
当社は再生型M&Aの仲介と、連帯保証の解除を見据えた条件設計を担います。金融機関への説明資料や事業価値の資料を整える後方支援が役割です。経営者ご本人の協議に必要な準備を支えます。
交渉の主体は、ご本人と必要に応じて依頼する弁護士等の専門家です。納税の判断や法律上の判断についても、各専門家の担当範囲を明らかにして進めます。
よくある質問
株式譲渡の代金すべてに税金がかかりますか?
個人株主の一般的な第三者への売却では、代金から取得費や譲渡費用等を引いた利益が計算の出発点です。取得費は、会社の資本金や借入残高と同じとは限りません。本人が株式を取得した経緯と支払資料を確認してください。手取りを計算する際は、税務上の利益とは別に、今回の現金の出入りも追います。
赤字で債務超過の会社を売っても申告の確認は必要ですか?
会社の赤字や債務超過だけでは、株主個人の申告の要否は決まりません。個人の売却益の有無と、その年の取引内容などをもとに確認します。会社の決算書に加え、株式の取得費と譲渡契約を税理士に示してください。「会社にお金がないから個人にも課税されない」と考えて処理を止めないようにしましょう。
自分の会社に株式を買い取ってもらう場合も同じですか?
発行会社による自己株式の取得では、受取額の一部がみなし配当として扱われる場合があります。第三者への株式譲渡と同じ計算を、そのまま当てはめることは避けてください。会社側に買取資金があるかも検討が必要です。買い手が誰なのかを最初に伝え、税務と会社の資金繰りを確認します。
連帯保証が外れれば、株式譲渡の税金もなくなりますか?
連帯保証の解除と、株式を売って得た利益への課税は別の問題です。保証が解除されても、売却益への税金がなくなるとは限りません。また、保証債務の整理を伴う場合は、単純な株式売却だけの試算では足りないことがあります。株式代金と債務の扱い、保証の条件を分けて専門家に示してください。
まとめ
状況によっては法的整理が適切な場合もあります。株式の取得費が分かる資料と売却条件を用意し、支払期限と手元資金を添えて、廃業との比較や連帯保証の条件を当社の無料相談でお知らせください。
▶ 関連資料:『会社が倒産したら、自己破産するしかないのか?』(全19ページ・無料)をダウンロードいただけます。
▶ あわせて読まれています:『相談してから、事業が引き継がれるまで』(全14ページ)(無料)
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この記事を書いた人
あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
他社で断られた案件のご相談も承っています。ご相談は無料です。
無料相談はこちら / お急ぎの方はお電話でも承ります 03-5657-7496
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最終更新日: 2026年9月25日