用語集 > 事業譲渡

事業譲渡とは、会社が事業の全部または一部を、資産・契約・従業員などを個別に移す形で他社に譲ることです。株式譲渡と違い、譲る範囲を選べます。債務は当然には移らず、買い手が引き受けるものを契約で決めます。

条文・原文の核心

『株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない』会社法467条1項(原文)

仕組み

事業譲渡では、譲る対象(資産、取引先との契約、従業員、許認可など)を一つずつ特定し、買い手との契約で移します。会社そのものは売り手に残るので、売り手の会社は譲渡代金を受け取って存続します。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、事業譲渡は承継する財産を選べ、売り手の法人格から切り離せるため、簿外債務や偶発債務のリスクを比較的遮断しやすい、と説明しています。ただし、承継する財産の特定、不動産の登記など対抗要件の具備、許認可の取得といった作業が必要になります。

条件と注意点

  • 株主総会の承認が要る。事業の全部の譲渡や、重要な一部の譲渡は、効力発生日の前日までに株主総会の決議による承認が必要です(会社法467条1項)。譲る資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えない場合は、この承認が不要です(同項2号かっこ書)。
  • 売り手は同じ事業をしばらくできない。譲渡会社は、別段の意思表示がない限り、同じ市町村と隣接する市町村の区域内で、譲渡日から20年間は同じ事業を行えません(会社法21条1項)。
  • 「債務は移らない」と単純には言えない。譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使うと、譲受会社も譲渡会社の事業で生じた債務を弁済する責任を負うことがあります(商号続用の責任・会社法22条)。また、残された債権者を害することを知って事業を譲渡した場合は、その債権者が譲受会社に請求できることがあります(詐害事業譲渡・会社法23条の2)。
  • 連帯保証の扱いは、事業譲渡でも株式譲渡でも、最終契約で取り決める共通の項目です。解除や引継ぎは最終的に金融機関の判断によるため、事業譲渡だから保証が自動的に外れる、ということはありません。

中小企業の社長にとっての意味

赤字・債務超過の会社でも、事業そのもの(取引先、従業員、設備など)に価値を見いだす買い手には、必要な部分だけを引き継いでもらえる可能性があります。その分、契約ごとの同意や許認可の手続に手間がかかり、売り手の会社に残る借入の整理も別に考える必要があります。株式譲渡との違いを比べて選びます。

よくある質問

事業譲渡をすれば、会社の借入は買い手に移りますか

当然には移りません。買い手が引き受ける債務は契約で決めます。債権者の同意が必要な場合もあります。借入は売り手の会社に残るのが通常です。

事業譲渡に株主総会の承認は必要ですか

事業の全部の譲渡や、重要な一部の譲渡では、効力発生日の前日までに株主総会の決議が必要です(会社法467条1項)。ただし、譲る資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えない場合は不要です。

関連する用語

  • 株式譲渡:株式譲渡とは、会社の所有者である株主が、持っている株式を他者に売ることです(会社法127条)。
  • 会社分割:会社分割とは、会社が事業に関して持つ権利義務の全部または一部を、他の会社(吸収分割)、または分割で新しく設立する会社(新設分割)に承継させる手続です(会社法2条29号・30号)。
  • 商号続用の責任:商号続用の責任とは、事業を譲り受けた会社が譲渡会社の商号を引き続き使う場合に、譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負うという、会社法22条1項のルールです。
  • 詐害事業譲渡:詐害事業譲渡とは、譲渡会社が、譲受会社に承継されない債務の債権者(残存債権者)を害することを知りながら、事業を譲渡することです。
  • 第二会社方式:第二会社方式とは、赤字・債務超過の会社の事業を別の会社(第二会社)に移し、元の会社を清算するなどして整理する方法の、実務上の呼び名です。

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出典

この用語集は一般的な制度の説明です。個別の会社への当てはめは、弁護士など専門家にご相談ください。条文は e-Gov 法令検索の原文で確認しています(2026年10月23日時点)。法令や制度は改正されることがあります。

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