用語集 > 第二会社方式
第二会社方式とは、赤字・債務超過の会社の事業を別の会社(第二会社)に移し、元の会社を清算するなどして整理する方法の、実務上の呼び名です。会社法に出てくる用語ではなく、事業譲渡や会社分割といった手続を組み合わせて行います。事業は続けられますが、元の会社の債務や連帯保証が、それだけで自動的に消えるわけではありません。
条文・原文の核心
『残存債権者は、新設分割設立株式会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる』会社法764条4項(原文)
仕組み
赤字や債務超過で元の会社をそのまま続けるのが難しいとき、価値のある事業(取引先・従業員・許認可・設備など)だけを新しい会社または既存の別会社に移します。事業を移したあとの元の会社は、特別清算や破産などで整理するのが一般的です。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」も、事業再生の場面では第二会社に事業を移す方式が多く選ばれ、中小企業活性化協議会の関与のもとで事業譲渡等を行い、その後に元の会社を特別清算で整理する例があると説明しています(同ガイドライン p.127)。
事業を移す手続には、事業譲渡と会社分割があります。新しく会社を作って移す場合は新設分割が使われることが多く、既存の別会社に移す場合は事業譲渡か吸収分割が使われます。
条件と注意点
- 債権者を害する移し方は請求を受けることがある。残された債権者を害することを知って会社分割や事業譲渡をすると、残存債権者は、承継した財産の価額を限度として、事業を受け取った会社に請求できます(会社法759条4項・764条4項・23条の2)。吸収分割と事業譲渡では、受け取った会社が害することを知らなかったときは請求できませんが、新設分割にはこの但書がありません。
- ただし、元の会社が破産などになると請求できなくなる。元の会社について破産手続開始・再生手続開始・更生手続開始の決定があったときは、残存債権者はこの請求の権利を行使できません(759条7項・764条7項・23条の2第3項)。
- 対価が低すぎると問題になりうる。中小M&Aガイドライン(第3版)は、事業譲渡等の対価が不当に低額な場合のリスクとして、この規定に触れています。
- 連帯保証は別の問題。会社の事業を移しても、経営者が負っている連帯保証は、金融機関との間で別に扱いが決まるまで残ります。
中小企業の社長にとっての意味
従業員や取引先を残したまま、借入の重い元の会社と事業を切り離せる可能性がある方法です。一方で、どの債権者にどう説明し、誰が事業を引き継ぐのかによって、使える手続も、後から請求を受けるリスクも変わります。会社ごとの当てはめは、弁護士や、赤字・債務超過のM&Aを扱う専門家と一緒に検討する内容です。
よくある質問
第二会社方式をとれば、借入はなくなりますか
いいえ。事業を新しい会社に移しても、元の会社の借入は元の会社に残るのが通常で、その整理は別の手続で行います。経営者の連帯保証も、それだけでは外れません。
第二会社方式は法律に定められた手続ですか
いいえ。会社法上の用語ではなく、事業譲渡や会社分割などを組み合わせた実務上の呼び名です。使う手続ごとに、会社法の条文が適用されます。
関連する用語
- 事業譲渡:事業譲渡とは、会社が事業の全部または一部を、資産・契約・従業員などを個別に移す形で他社に譲ることです。
- 会社分割:会社分割とは、会社が事業に関して持つ権利義務の全部または一部を、他の会社(吸収分割)、または分割で新しく設立する会社(新設分割)に承継させる手続です(会社法2条29号・30号)。
- 詐害事業譲渡:詐害事業譲渡とは、譲渡会社が、譲受会社に承継されない債務の債権者(残存債権者)を害することを知りながら、事業を譲渡することです。
- 特別清算:特別清算とは、すでに解散して清算中の株式会社に、債務超過の疑いなどがあるときに、裁判所の監督のもとで行う清算手続です(会社法510条以下)。
- 中小企業活性化協議会:中小企業活性化協議会とは、産業競争力強化法に基づき47都道府県すべてに置かれた公的機関で、収益力の改善や事業再生を目指す中小企業の相談に、無料で応じます。
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出典
この用語集は一般的な制度の説明です。個別の会社への当てはめは、弁護士など専門家にご相談ください。条文は e-Gov 法令検索の原文で確認しています(2026年10月23日時点)。法令や制度は改正されることがあります。
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