目次
この記事の対象と結論
株式会社の廃業は、会社の支払いを終えられるか、社長の連帯保証をどう扱うかによって進め方が変わります。借入が残っていても、廃業と社長個人の自己破産が同じ結論になるとは限りません。
返済日が近づくたびに眠れず、従業員や家族にどう話すか悩む。そんな状態で相談する経営者は珍しくありません。書類がそろうまで抱え込む必要もありません。
最初に確かめるのは、会社を閉じるまでの支出を含めて完済できるかです。 難しい場合は法的整理を検討し、引き継げる事業があるならM&Aも比較します。法人を終える判断と、事業を残す判断は分けて考えられます。
支払いが迫っている場合は、直近の入出金と保証契約を先に整理してください。廃業届や登記だけを進めても、借入や保証の問題が片づくわけではありません。
株式会社の廃業は「完済できるか」で進路が変わる

廃業・解散・清算はそれぞれ違う場面を指す
事業をやめることを、一般に廃業と呼びます。一方、株式会社を法的に終える過程では、解散と清算という言葉を使います。営業を止めた日が、そのまま会社の手続きの終了日になるとは限りません。
株主総会の決議による解散は、会社法第471条に定められた解散事由のひとつです。その後、売掛金の回収や財産の処分を進め、債務を支払う段階が清算に当たります。解散した瞬間に法人が消える、という理解では順序を誤ります。
なお、破産手続開始の決定も解散事由に含まれます。この場合は通常の清算と同じ経路をたどるのではなく、破産手続の中で財産や債務を処理します。解散という言葉だけでは、どの手続きが進んでいるかは分かりません。
決算書の純資産と、廃業に使える現金を分ける
貸借対照表で資産が負債を上回っていても、その金額をすぐ支払いに使えるとは限りません。回収に時間がかかる売掛金もあれば、帳簿価格では売れない設備もあります。廃業時には、現金になる額と日付で見直します。
反対に、決算上の債務超過だけで事業の価値までは決まりません。継続する取引や働き手を評価する買い手が見つかる可能性はあります。ただし、売却の見込みと、期日までに使える資金は別です。
確認する項目は次のとおりです。
- 売掛金の回収予定日と回収見込額
- 在庫や設備の売却見込額
- 借入と買掛金の支払残高
- 給与や税金などの未払額
- 退去費用と手続き費用
閉じる費用を加えたら資金が足りない。その場合は、通常の清算を前提に進めてよいか、再検討が必要になります。
返せない債務があるなら、法的整理も比較する
期日が来た債務を一般的、継続的に支払えない状態を、破産法では支払不能と呼びます。法人では債務超過も問題になりますが、資金が不足したという事情だけで個別の結論は出せません。
裁判所を通じて財産や債務を整理する選択肢には、破産や特別清算があります。特別清算は、すでに解散して清算中の株式会社を対象とする手続きです。清算の遂行に著しい支障を来す事情や、債務超過の疑いが開始の条件になります。
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| 選択肢 | 検討の出発点 | 事業の扱い |
|---|---|---|
| 通常の清算 | 債務を支払える見込み | 終了を前提 |
| 破産・特別清算 | 完済が難しい事情 | 清算を検討 |
| M&A | 引継ぎ価値と買い手 | 継続を検討 |
特別清算と破産のどちらが適するかは、債権者の状況などでも変わります。清算中に債務超過の疑いが生じた場合、清算人には特別清算の申立義務を定める規定もあります。自己判断で清算結了まで進めないでください。
手元資金が尽きる日と、事業を引き継げる日を比べる
買い手探しを始めても、その間の給与や仕入れは発生します。話がまとまりそうだからと、未確定の譲渡代金を資金繰りに入れるのは危うい判断です。入金が遅れた場合の不足額まで確認します。
資金繰り表では、入金を「確定」と「見込み」に分けてください。支出側には、営業を止めても残る賃料や精算費用を載せます。帳簿上の利益より、いつ現金が足りなくなるかを見るための表です。
譲渡の準備中に支払不能の懸念が強まったら、法的整理の検討も進める必要があります。買い手の返事を待つことが、そのまま経営判断になるわけではありません。継続するほど損失が増える事業では、停止を検討する場面もあります。
詳しくは廃業とM&Aの比較|メリット・デメリットと判断基準を解説をご覧ください。
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通常の清算は、営業停止後にも手続きが続く

株主と清算人を確認してから解散を決める
社長が廃業を決意しても、株主総会の決議に必要な条件は別に確認します。株主が家族や元役員に分散している場合は、誰がどれだけ議決権を有するかを調べるところからの着手です。
株主総会による解散には、原則として特別決議が必要です。議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要します。出席要件は、定款で3分の1以上に軽減できる規定があります。
解散後の清算を担う人が清算人です。定款や株主総会で別段の定めがなければ、解散時の取締役が清算人になります。名前だけ決めれば済む役割ではありません。
清算人は、残る財産と債務を把握して処理を進めます。社長を退いたつもりで連絡や書類を放置すると、手続きが止まるおそれがあります。
解散登記と債権者への知らせを進める
解散の登記は解散の日から2週間以内、清算人の登記も原則として解散の日から2週間以内です。清算人を別に選任した場合は、選任日を基準に期限を確認します。
さらに、解散後は遅滞なく債権者への官報公告が必要です。判明している債権者には個別の催告もおこないます。借入先を把握しているから公告は省ける、という手続きではありません。
会社法第499条では、債権を申し出てもらう期間を2か月以上としています。このため、通常の清算を数日で終える前提は立てられません。これは債権申出期間の下限であり、廃業全体の所要期間を示す数字ではありません。
1. 解散と清算人に関する事項を確認する。
2. 期限を確認して登記を申請する。
3. 官報公告と個別の催告を進める。
4. 債権の申出を清算の記録に反映する。
売掛金の回収と契約の精算を並行して進める
営業を止めると、入金の確認や請求書の発行が後回しになりがちです。しかし、未請求の売上や返還予定の保証金も清算資金に関わります。回収する担当者と連絡先を残してください。
契約ごとに、終了の条件も違います。店舗や事務所を明け渡しても、原状回復費用の金額が後で決まることがあります。リース物件を自社の所有物と取り違え、売却の対象にしない確認も必要です。
- 売掛金の請求状況と回収予定を確かめる。
- 賃貸借契約の解約条件を確認する。
- リース物件の返却条件を整理する。
- 前受金や預り品の返還先を確認する。
- 税務申告と届出の予定を整理する。
入金額だけを見て株主へ資金を戻すと、後から支払いが判明するおそれがあります。残る契約と債務を一覧にし、精算状況を更新していきます。
清算結了の登記までに、未処理を洗い出す
債務の支払いなどを終え、残余財産があれば分配を進めます。その後の決算報告や承認にも手続きがあります。登記だけ先に済ませて、支払義務を消すことはできません。
清算結了の登記は、決算報告について株主総会の承認を受けた日から2週間以内です。終了時点を営業停止日と混同すると、必要な担当者や書類を早く手放してしまいます。
最後まで確認したいのは、処理が終わった根拠です。
- 未回収の債権が残っていないか。
- 未確定の請求や争いが残っていないか。
- 税務上の処理が整理されているか。
- 清算の入出金を説明できるか。
途中で完済が難しいと分かった場合は、通常の清算を続けられるか見直します。法人の登記と経営者保証の終了確認も別に必要です。
出典:会社法第309条・第478条・第499条・第926条〜第929条(e-Gov法令検索)
株式会社を廃業する費用は、登記代だけでは足りない
登録免許税と、会社ごとに変わる支出を分ける
通常の解散・清算で必要となる登録免許税は、次のとおりです。合計4万1千円は、廃業費用の総額ではありません。
| 登記の種類 | 登録免許税 |
|---|---|
| 解散 | 3万円 |
| 清算人・代表清算人 | 9千円 |
| 清算結了 | 2千円 |
このほか、官報公告の実費や、依頼する場合の司法書士報酬がかかります。税務申告を依頼する費用も別に確認します。公告や専門家報酬を含めた全国共通の総額として、この表は使えません。
店舗や設備のある会社では、撤去と原状回復の支出も見積もります。保証金の返還を見込んでいても、精算後の額や返還時期が未定なら、先に払う費用の財源にはできない場合があります。
見積書には金額だけでなく、支払期日も必要です。最終的な収支が合っていても、途中の支払いに間に合わないことがあるためです。
法人破産の裁判所費用と弁護士費用は別枠
完済が難しく法人破産を検討する場合は、清算登記の費用表とは分けて計算します。申立てを依頼する弁護士の費用と、裁判所へ納める費用が必要になります。
東京地方裁判所の令和8年1月1日版の一覧では、法人の自己破産の申立手数料は1,000円です。弁護士を代理人とする自己破産の管財事件では、予納金の基準は最低20万円。これに法人1件あたり16,264円が加わります。
通常の自己破産申立ての予納郵券は4,950円です。ただし、事案によって金額が変わる旨も示されています。本人申立てや債権者による申立ては別の基準です。
これらは裁判所に納める分だけです。弁護士報酬には全国一律の基準がないため、依頼内容に応じて確認します。会社と社長個人の両方を扱う場合は、それぞれの見積もりを分けてもらうと不足を把握しやすくなります。
費用を払えないときは、資産と支払順序を点検する
手続き費用が不足している場合、会社を放置するほど負担が軽くなるとは限りません。賃料などの支出が続く一方、売掛金の回収資料が失われるおそれもあります。まず不足額を見える形にします。
確認したいのは、現預金に加えて、回収できる債権や処分可能な資産です。ただし、売却を急いで安く手放す判断は避けてください。担保や所有権、後の手続きへの影響を確認する必要があります。
費用を捻出したいからと、親族への返済を先に済ませる判断にも注意が要ります。債務整理を見据える場面では、支払い方そのものが問題になる場合があります。具体的な処分や返済は、委任する弁護士等の確認を受けて進めます。
個人で新たな借入をして穴埋めする前に、会社側で使える資金を確かめましょう。負担を個人へ移すと、その後の生活再建も難しくなるおそれがあります。
M&Aの報酬と、譲渡後に残る支出を混ぜない
あさひ国際会計株式会社の相談は無料で、着手金はありません。成功報酬のみで、成約時に譲渡代金の中から精算します。そのため、当社への仲介報酬について売り手の手元からの持ち出しは0円です。
成功報酬まで無料という意味ではありません。また、会社の未払金や税金、別途依頼する専門家の費用までなくなる説明でもありません。何を譲渡代金から払い、何が別途必要かは個別に整理します。
特に事業譲渡では、代金を受け取る主体と、残る借入の返済主体を確認します。譲渡代金の全額を社長の生活費に回せると考えるのは早計です。残る法人を清算する費用も検討対象になります。
比較する際は、仲介報酬の有無だけで決めないでください。廃業と譲渡のそれぞれについて、最終的な負担と支払時期を並べると、現実的な選択肢が見えてきます。
廃業後の連帯保証は、会社とは別に確認する
株主としての立場と、保証人としての責任を分ける
会社の借入について考える際は、誰が借り、誰が保証したのかを契約で確かめます。株主や社長という肩書きだけを見ても、保証責任の範囲は分かりません。
会社名義の借入でも、社長が個人で連帯保証を付けていることがあります。反対に、すべての借入に同じ保証人が付いているとは限りません。借入ごとに契約書と残高を照合してください。
民法第446条では、保証契約は書面等によることが効力の条件です。手元に紙が見当たらないだけで、保証がないとは判断できません。電磁的記録も確認対象になります。
借入一覧には、保証人と担保の欄を設けます。自宅が担保に入っているのか、個人保証だけなのかも別の確認事項です。名称の似た書類を混ぜず、契約の相手と対象を整理します。
連帯保証では、先に会社へ請求するよう求められない
通常の保証には、先に主たる債務者へ催告するよう求める権利があります。また、一定の条件を証明すれば、先に主たる債務者の財産へ執行するよう求める権利もあります。
民法第454条により、連帯保証人にはこれらの権利がありません。会社に財産が残っているから社長への請求は後になる、と予定するのは危険です。会社側の清算が終わるのを待たず、請求を受ける可能性があります。
ただし、実際の請求時期や範囲は契約と債務の状況によります。届いた通知は、封筒も含めて保管してください。
- 請求の相手方と対象の借入を確認する。
- 請求額と回答期限を記録する。
- 保証契約書と通知を対応させる。
- 不明点を弁護士等へ確認する。
会社を閉じる手続きと、個人の保証を終える手続きは別です。 清算の完了だけで安心せず、保証の扱いまで確認します。
出典:民法第446条・第452条〜第454条(e-Gov法令検索)
保証債務の整理には、会社側の手続きなどの要件がある
経営者保証に関するガイドラインは、一定の条件下で保証債務の整理を検討する枠組みを示しています。会社が廃業するから利用できる、という仕組みではありません。
すでに負っている保証を整理する場面は、同ガイドライン第7項(1)が対象です。主な確認項目は次のとおりです。
- 保証契約が第3項の要件を満たすこと。
- 会社側の所定の債務整理手続きがあること。
- 債権者にも経済的な合理性が見込めること。
- 所定の免責不許可事由がないこと。
会社側では、法的債務整理または準則型私的整理の申立てが必要です。利用と同時に申し立てる場合のほか、手続きが係属中、すでに終結している場合も含まれます。資産を正直に開示するだけで要件がそろうわけではありません。
経済的な合理性とは、破産時より多くの回収を見込めることなどです。免責不許可事由については、破産法第252条第1項の第10号を除く事由と、そのおそれの有無を確認します。適用の判断には個別の検討が要ります。
出典:全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」第7項(1)
家族の生活と自宅は、保証・担保を確かめて考える
廃業を考えると、自宅も家族の生活費もすべて失うと思い詰めることがあります。しかし、会社の負債額だけで生活への影響までは決まりません。個人の保証、担保、資産を分けて把握します。
経営者保証に関するガイドラインには、一定の生計費や華美でない自宅等を残す検討の記載があります。対象債権者の回収見込額の増加額の範囲内など、条件を踏まえる扱いです。希望すれば自宅を残せる制度ではありません。
家族に説明する際は、確定している支払いと、まだ検討中の扱いを分けると話しやすくなります。生活費の見込みを作り、会社の支払いへどこまで個人資金を入れているかも共有してください。
財産の名義を急いで変えるなどの行動は、後の整理に影響するおそれがあります。詳しくは廃業したら連帯保証はどうなる?残る理由と整理の道をご覧ください。
従業員と取引先への説明は、支払いの見通しとそろえる
従業員には、決まったことと未定のことを分けて伝える
廃業を言い出せない背景には、従業員への罪悪感があります。それでも、支払える根拠がないまま「給料は大丈夫」と伝えると、従業員が生活の準備をする時間を失います。
説明前に、給与の支払状況と雇用の扱いを整理してください。廃業する方向でも、事業の引継ぎを検討している段階でも、未確定の雇用継続を約束しないことが必要です。
- 給与の支払予定と不足の有無
- 営業を続ける範囲と終了の見込み
- 雇用について決まっている内容
- 次に説明する時期と連絡方法
退職や解雇の進め方には、労務上の確認が要ります。会社を閉じる事情があっても、従業員への手続きまで省けるわけではありません。給与資料や勤怠記録を残し、担当する専門家と説明内容をそろえます。
未払給与は、金額と支払期日を記録する
給与が払えない場合でも、支払義務がなくなるわけではありません。労働基準法第24条は、賃金の全額払いと、毎月1回以上の一定期日払いを原則として定めています。
退職した従業員から請求があった場合は、同法第23条の確認も必要です。原則として7日以内の支払いと金品の返還が定められています。争いがあるときも、異議のない部分は同じ期間内の支払いが必要です。
倒産時には、一定の要件を満たす未払賃金を対象とする未払賃金立替払制度があります。ただし、すべての支払いが対象になる制度ではありません。賞与や解雇予告手当などは対象外です。
制度の利用可能性があっても、会社側の記録は欠かせません。誰に、いつ支払う給与が、いくら残っているかを確認できる状態にします。退職日や申立て、請求の時期にも条件があります。
取引先には、納品と精算の範囲を具体的に伝える
廃業の予定日だけを知らせても、取引先は対応を決められません。受注済みの仕事をどこまでおこなうか、未納品分をどう扱うかまで確認します。預かっている商品や資料の返却も必要です。
支払いが難しいときほど、相手ごとに違う約束をしないよう注意してください。資金繰りや法的整理の方針と合わない返済約束は、後から説明の食い違いを生みます。
連絡前に整理する項目は、次のとおりです。
- 受注済みの仕事の進捗と引渡予定
- 売掛金と買掛金の残高
- 預り品や前受金の有無
- 契約終了に伴う精算事項
M&Aを検討している場合も、取引継続の条件を買い手と確認します。譲渡の話があるだけで、発注先や支払先が切り替わるわけではありません。通知の時期は、契約と手続きの進み具合に合わせます。
廃業を選ぶ途中でも、引き継げる事業は検討できる
借入額と、買い手が評価する事業価値は同じではない
買い手は、負債の額だけで会社を見るとは限りません。継続する受注や人材、設備の活用によって、引継ぎ後の事業が成り立つかを検討します。会社単独では重い固定費を、買い手側で見直せる場合もあります。
ただし、価値がありそうという感触だけでは譲渡は進みません。収益の根拠や必要な支出を、資料で説明する必要があります。解約されそうな取引を、継続予定として扱うことも避けます。
当社が支援して成約した案件には、次の規模の会社があります。
- 売上1億円前後、債務超過5,000万円規模
- 製造業で売上1億円規模、従業員数名
債務超過でも、小規模でも、成約した例があるという事実です。同じ条件なら譲渡できるという予測には使えません。詳しくは債務超過の会社を買ってくれる会社の探し方をご覧ください。
株式譲渡と事業譲渡では、残る会社の扱いが違う
株式譲渡では、株主が変わっても法人は同じです。会社の借入などの債務も会社に残ります。そのため、買い手は決算書に載っていない債務も含め、引継ぎ後の負担を調べます。
事業譲渡では、引き継ぐ財産や契約の範囲を定めます。残る法人については、債務の返済や清算を別に検討します。事業が続くことと、売り手法人が続くことは同じではありません。
また、「事業譲渡なら債務は移らない」と単純には扱えません。商号を続けて使う場合には、買い手側も債務を負う規定があります。債権者を害すると知って事業を譲った場合の規定もあります。
雇用や許認可、取引契約の引継ぎ条件も、採る手法で変わります。価値のある事業だけを移せば終わると考えず、残る会社の処理まで設計します。
出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」、会社法第22条・第23条の2
買い手の約束と、金融機関の保証解除は別に確かめる
M&Aの当事者間で合意しても、金融機関との保証契約は自動的に消えません。 買い手が保証を引き継ぐと説明していても、金融機関等の判断と手続きが要ります。
契約では、誰がどの対応を担うかに加え、解除されない場合の扱いも確認します。口頭の説明だけで進めず、契約内容と金融機関への確認状況を対応させてください。
- 解除の対象となる保証契約を特定する。
- 買い手の資力と対応能力を確認する。
- 解除に必要な条件と時期を確認する。
- 未解除の場合の契約上の扱いを定める。
当社では、これまで成約に至った案件で、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。ただし金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。
譲渡の完了と保証解除の確認は、区別して管理します。株式や代金の受け渡しが終わった後にも、確認が必要な場合があります。
相談時には、支払期限と後方支援の範囲を共有する
初回相談では、資料の完成度より、直近の支払期限を先に伝えてください。あさひ国際会計株式会社では、財務資料の整理や事業価値の説明資料を作成します。M&Aの条件設計も含めた後方支援です。
金融機関との協議の主体は、経営者ご本人です。必要に応じて、依頼者が委任する弁護士等が交渉や法的手続きを担います。当社が債権者との交渉を代理するものではありません。
最初に共有していただきたい資料は、次のとおりです。
- 直近の決算書と試算表
- 手元資金と今後の入出金予定
- 借入の残高と返済予定
- 保証契約書と担保に関する資料
- 給与や税金などの未払一覧
そろっていない資料は、その旨を伝えていただければ構いません。破産手続きを主に扱う専門家と、事業を残す再生を扱う専門家では得意分野が異なります。状況によっては法的整理が適切な場合もあるため、M&Aだけを前提にせず検討します。
債務超過で廃業を考えたら、不足額の中身から整理する
債務超過で廃業を考えると、「借金を全部返せるまで閉じられない」と悩みがちです。ただ、営業をやめる判断と、残った債務を処理する判断は分けて検討できます。まずは、決算書の不足額をそのまま廃業資金の不足額と考えず、内訳を見直しましょう。
債務超過額と、廃業時に足りない額を照合する
決算書の数字は、決算日時点の状態を示すものです。その後の入出金や、廃業を決めてから生じる支出も確認したいところです。直近の試算表と通帳を照合すると、相談時の認識のずれを減らせます。
設備を帳簿価格で売れると見込む一方、撤去費用を落とすと、不足額を小さく見積もるおそれがあります。資産ごとに、換金見込額の根拠と処分費用を対にして整理してください。
- 売掛金は回収の見込みと時期を記す。
- 設備は売却見込額と撤去費用を並べる。
- 保証金は返還見込額と精算条件を記す。
- 未確定の支出は確認先と期限を残す。
金額が分からない項目は、空欄のまま合計から外さないようにしましょう。「未確認」と記すだけでも、追加で調べる対象が見えやすくなります。
借入の相手と保証の有無を分けて一覧にする
負債の合計だけでは、廃業後に誰との協議が残るかをつかみにくくなります。借入先ごとの残高に加え、返済期日と保証人を対応させてください。役員や親族からの借入がある場合も、相談資料に含めましょう。
「社長が会社へ貸しているお金」と「社長が保証している借入」は混同しやすい項目です。契約や入出金の記録に沿って分けると、会社と個人の負担を確認しやすくなります。
役員借入金があるからといって、帳簿から消せば済むとは考えないでください。返済や債権放棄を検討する場合は、法務・税務への影響を専門家に確認することが望まれます。状況によっては法的整理が適切な場合もあるため、通常の清算だけを前提にしない姿勢が大切です。
廃業と事業譲渡は、残る債務まで含めて比べる
債務超過でも、引き継げる事業があればM&Aを検討する余地があります。ただし、譲渡代金の見込みだけで廃業資金を計算するのは慎重に考えたいところです。
比較資料には、譲渡までの運転資金も載せましょう。事業譲渡後に残る法人の費用も含めると、事業を譲る案と営業を終了する案の差が見えやすくなります。
買い手との話が進んでいても、代金の入金時期が支払期限に間に合うかは別の論点です。成約が遅れた場合の資金不足も示し、検討を続けられる期間を確認してください。譲渡の見込みが変わったら、比較資料も更新しましょう。
相談では、債務超過の金額より先に期限を伝える
「債務超過なので廃業したい」という説明に、次の支払日を添えると状況が伝わりやすくなります。支払済みのものと未払のものを分け、すでに届いた請求書も手元に置いてください。
債権者との協議は、経営者ご本人と、必要に応じて依頼する弁護士等が担います。当社は資料の整備や条件設計、説明資料の作成で、ご本人の協議を支える立場です。状況によっては法的整理が適切な場合もあるため、事業の価値と支払期限の両面から検討します。
よくある質問
借入が残っている株式会社でも廃業できますか?
借入が残っていても、廃業に向けた検討はできます。ただし、営業を止めたり解散登記をしたりするだけで返済義務がなくなるわけではありません。財産の換金や債権回収で完済できるかを確認し、難しい場合は破産・特別清算などを検討します。引き継げる事業があれば、M&Aと残る債務の処理を組み合わせる余地もあります。
株式会社の廃業手続きは社長だけで進められますか?
社長の判断だけでは完了しない手続きがあります。株主総会での決議や債権者への公告など、所定の過程が必要です。債務超過や保証債務が絡む場合は、書類の作成と法的な判断を分けて考えます。登記は司法書士、税務は税理士、債務整理や法的な交渉は弁護士など、依頼する業務の範囲を整理して進めます。
休業にしておけば、廃業費用や借入返済を避けられますか?
休業を選んでも、借入や保証の問題が自動的に解消するわけではありません。再開の見込みと維持費を比べて判断します。長期間登記を放置した株式会社には、会社法上のみなし解散の制度がありますが、意図的な休業とは別の扱いです。手続きを放置して会社の終わりを待つ方法としては考えないでください。
M&Aを相談する時点で、廃業を撤回する必要がありますか?
相談時点で撤回を決める必要はありません。通常の清算、法的整理、事業の引継ぎを比較するための相談も可能です。ただし、受注を断る、設備を処分する、従業員が退職するといった変化は、譲渡の条件に影響します。すでに実行したことと、これから予定していることを分けて伝えてください。
債務超過で廃業する場合、不足分を社長個人が負担するのでしょうか?
債務超過の金額だけで、社長個人が負担する範囲までは判断できません。会社の負債と個人の保証契約を分け、借入ごとに確認することが出発点です。廃業費用を個人資金で補う前に、会社の換金可能な資産と支払期限を整理しましょう。状況によっては法的整理が適切な場合もあるため、弁護士等に会社と個人の両面を相談することが考えられます。
まとめ
手元資金、直近の支払期限、借入ごとの保証人をメモにし、廃業までの費用を含めた不足額を確かめてください。判断がつかない段階でも、そのメモをもとに、清算と事業の引継ぎを比較する相談を始められます。
▶ 関連資料:『会社をたたむのに、いくらかかるか』(全13ページ・無料)をダウンロードいただけます。
▶ あわせて読まれています:『破産で変わること、変わらないこと』(全14ページ)(無料)
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この記事を書いた人
あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
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最終更新日: 2026年10月19日