この記事の対象と結論

美容室のM&Aは、店舗を引き継ぐ条件と、借入・連帯保証の扱いを並行して詰めると進めやすくなります。赤字や債務超過でも、営業を続けられる店として譲渡を検討する余地はあります。

家賃や給与の支払いが重く、廃業も考え始めている。けれど、通ってくれるお客様やスタッフの働く場所は残したい。そうした理由で相談する経営者は珍しくありません。

90日以内に動くなら、最初に確かめたいのは資金が続く期限です。そのうえで、店を使い続けられるか、誰が働き続けるかを確認します。造作が売れることと、経営者の保証が外れることは別の問題です。 あさひ国際会計株式会社には美容業の成約実績があり、譲渡と保証の出口を分けて整理しています。

美容室M&Aの形は「何を引き継ぐか」で選ぶ

引き継ぐ範囲で手続きが変わる
何を譲るかを分ける

美容室M&Aでは、会社の株式を譲るのか、店舗の事業を譲るのかで手続きが変わります。造作だけを売る場合は、スタッフや予約まで引き継ぐ話になっているかを確かめてください。

株式譲渡なら、会社の中身をまとめて確認する

株式会社として美容室を経営している場合、株主が買い手に株式を譲る方法があります。経営する会社自体は変わらず、会社の借入もその会社に残る形です。

買い手は、店の売上だけで判断するわけではありません。会社が負っている支払いまで調べます。帳簿に出ていない負担があれば、価格や契約条件が変わることもあります。

  • 借入と連帯保証の契約を確認する。
  • 未払いの給与や仕入代金を整理する。
  • 税金や社会保険料の納付状況を示す。
  • 過去の契約や争いごとを伝える。

代表者が交代しても、保証の処理は別に残ります。また、店舗の賃貸借などに、経営者の変更に関する定めがないかも確認対象です。

引き継ぐ会社の範囲は広くなります。その分、買い手に開示する内容も店舗単独の話では収まりません。

事業譲渡は、渡すものと残るものを書き分ける

店舗の営業を構成する資産や契約を選んで譲る方法が、事業譲渡です。対象店舗を切り出して話を進めたい場合にも検討されます。

ただし、「美容室一式」という言葉だけでは範囲が曖昧です。設備のほか、店名や予約の扱いまで具体化してください。

項目 決めておく内容
設備・在庫 対象と引渡時の状態
店名・看板 使用範囲と変更時期
スタッフ 雇用条件と本人の意思
予約・前受金 施術担当と精算方法

譲渡対象を選べても、売り手に残る借入が消えるわけではありません。譲渡代金の使い方と、残った会社の処理も検討が必要です。

「事業譲渡なら債務は移らない」との決めつけも避けます。商号を続けて使う場合など、買い手の責任が問題になる場面があるためです。法的な範囲は、契約内容と実態を踏まえて確認します。

造作譲渡は、営業の引き継ぎまで含むかを確かめる

シャンプー台やセット面などを残して引き渡す話を、造作譲渡と呼ぶことがあります。ただし、名称だけでは契約の中身は決まりません。

設備を買ってもらえても、貸主が新しい運営者の入居を認めるとは限らない。スタッフが残るかも未定。そんな状態では、翌日から営業できる店舗としての引き継ぎは組み立てにくくなります。

買い手の希望も分けて聞きます。内装を使いたいのか、既存の営業を続けたいのかで、価格の根拠が変わるからです。

設備の売却を先に進めると、営業を残す選択肢が狭まる場合もあります。撤去や処分を発注する前に、店全体での譲渡も比較してください。

詳しくは美容室の閉店と設備の買取で手元に残るお金を増やす査定・撤去・店舗譲渡の組み立てをご覧ください。

個人経営か法人経営かで、借入の整理も変わる

個人で経営している美容室には、会社の株式を売る方法は使えません。営業や設備などを譲る形で検討します。

借入の名義にも違いがあります。法人の借入について社長が連帯保証をしているのか、経営者本人が直接借りているのか。返済の責任を整理する出発点です。

まず借入契約を見て、債務者と保証人の欄を分けて確認してください。「事業用のお金だから会社の借金」と思い込んでいると、譲渡後の資金計画がずれます。

設備の所有者にも同じ確認が要ります。店に置かれていても、法人所有とは限りません。経営者個人の購入品やリース品が混ざっていれば、一覧に所有者を記載します。

譲る人、代金を受け取る人、返済する人。この関係をそろえてから、買い手との条件を詰める流れです。

売却条件を詰める前に、店が続く条件を確認する

美容室の譲渡では、買い手が同じ場所で営業を続けられるかを先に確認します。価格が合っていても、賃貸借や設備の問題が解決しなければ、引き渡しの日程を決めにくくなります。

貸主への説明は、賃貸借契約を読んでから

店舗の賃貸借契約には、名義や使用者の変更に関する条件が記載されていることがあります。譲渡方式に応じて、何の承諾が必要かを確認します。

貸主に伝える内容が曖昧だと、閉店と受け取られるおそれもあります。店舗を残す案なのか、退去する案なのかを分け、説明する時期を決めてください。

  • 契約名義と実際の運営者を照合する。
  • 譲渡や転貸に関する条項を読む。
  • 敷金などの精算条件を確認する。
  • 原状回復の負担範囲を整理する。

貸主が新契約を希望すれば、買い手の負担が増える場合があります。その増額は、買い手が支払える譲渡代金にも影響し得ます。

退去通知は、取り消せる前提で出さないこと。通知期限と譲渡の進み具合を並べて、発信する日を判断します。

設備は「使える」と「譲れる」を分けて調べる

現役で使っている設備でも、自由に売却できるとは限りません。購入時の契約やリース契約を照らし合わせます。

設備表には、写真だけでなく、不具合や修理履歴も付けます。買い手が現物を見た後に故障が判明すると、値下げや引き渡し延期の話になりかねません。

  • シャンプー台の動作を確認する。
  • 給湯や空調の不具合を記録する。
  • リース品と自己所有品を分ける。
  • 薬剤や店販品の在庫を数える。

使いかけの薬剤を含めるか、売れ残った商品をどうするかも契約事項です。在庫は契約後も動くため、引き渡し時点で数量を照合する方法を決めます。

内装にかけた金額と、買い手が払う金額は一致しません。残りの使用期間や修理負担を踏まえて、営業に使える価値を説明します。

営業に必要な書類は、引き渡し後の宿題にしない

美容室・理容室の営業を続けるうえで必要な手続きは、譲渡方式や施設の状況によって確認が必要です。看板や設備が同じでも、運営者の変更に伴う対応は残り得ます。

開設に関する手元の書類と、現在の店内の状態を照合してください。改装や設備変更の履歴が散らばっているなら、時系列でまとめます。

買い手と決めたいのは、書類を渡す担当だけではありません。

  • 必要な手続きを誰が確認するか。
  • 買い手が営業を始められるのはいつか。
  • 休業が生じる場合に予約をどう扱うか。
  • 追加工事の費用を誰が負担するか。

申請や届出の実行が必要な場合は、対応範囲を専門家と確認します。当社が許認可を取得するという意味ではありません。

営業開始の条件が未確認なら、契約上の日付だけを先に固定しないほうが、予約の混乱を抑えられます。

売上より、引き継いだ後に残る収支を示す

買い手が知りたいのは、現オーナーが退いた後も営業を続けられるかです。売上だけでなく、その売上を誰がつくり、どの費用がかかるかを示します。

オーナーの指名売上が多い店なら、退任後の見込みを別に置く必要があります。現在の売上をそのまま使うと、人員計画が合わなくなるためです。

資料は、店全体と担当者別の状況がつながる形にします。

  • 月ごとの売上と来店状況を示す。
  • オーナー担当分を分けて示す。
  • 家賃や人件費の実額を整理する。
  • 譲渡後に変わる費用を記載する。

全社では赤字でも、店舗単位で営業を残せる余地が見える場合があります。反対に、表面上の利益があっても、オーナーの代わりを雇うと収支が崩れることもあります。

期待で埋めず、確認できた数字と仮定を分けます。

スタッフと顧客の引き継ぎは、契約前から設計する

美容室M&Aで引き継ぐ営業は、人と来店の継続に支えられています。スタッフの意思や顧客への案内を後回しにすると、契約時に想定した売上が変わるおそれがあります。

スタッフに伝える時期は、説明できる条件から逆算する

スタッフにいつ伝えるかは、買い手との話の進み具合で決めます。早すぎる告知は不安を広げ、遅すぎる説明は信頼を損なう可能性があります。

まず、伝える内容を用意してください。「店を譲るかもしれない」だけでは、働き続ける判断ができません。

  • 雇用主が変わるかを説明する。
  • 給与や歩合の条件を示す。
  • 勤務地と勤務時間を確認する。
  • 相談や質問を受ける担当を決める。

未確定の条件は、未確定と伝えます。買い手と話していない待遇を、その場で約束しないようにします。

主力スタッフの在籍を買い手に説明する際も、本人の意思を確かめた範囲にとどめてください。経営者の希望と本人の意向は、別の情報です。

雇用と業務委託を同じ引き継ぎ方にしない

美容室には、雇用されているスタッフのほか、業務委託で働く人がいる場合もあります。同じ店内で施術していても、契約関係は異なります。

株式譲渡では雇用主の法人が変わらない一方、事業譲渡では雇用の引き継ぎについて本人の同意などを確認します。契約書の名称だけで判断せず、働き方の実態も確認対象です。

業務委託の場合は、報酬や利用条件について継続の合意を取り付ける必要があるかを調べます。材料費を誰が負担するかも、営業収支に響きます。

譲渡後の条件表と並べて、未精算の金額も整理してください。未払いの給与があるなら、新しい雇用条件の話に埋もれさせないこと。

労務や契約の法的判断は、依頼する専門家の担当です。M&Aの条件表には、その確認結果を反映させます。

顧客名簿は、買い手探しの最初から渡さない

買い手候補に事業を説明する段階では、顧客を特定しない集計情報を使います。施術履歴や連絡先を含む顧客情報は、営業資料と同じ感覚で広く配らないようにします。

たとえば、再来店の傾向や指名売上の構成なら、氏名を伏せても検討材料になります。詳細な情報が必要になった段階で、目的と範囲を絞って開示します。

契約前に整理したい項目は、次のとおりです。

  • 顧客情報を保管する場所を確認する。
  • 閲覧できる人を整理する。
  • 引き継ぐ情報の範囲を決める。
  • 利用目的や必要な対応を確認する。

個人情報の扱いは、譲渡の形と利用方法を踏まえて確認します。「事業を譲るから自由に渡せる」と広く捉えないこと。

カルテが渡っても、来店を選ぶのはお客様です。過去の売上と今後の来店見込みを分けて説明します。

予約・回数券・店名は、お客様の迷いを減らす順に決める

譲渡日をまたぐ予約があるなら、誰が施術し、誰が代金を受け取るかを決めます。前払いの回数券などがあれば、残額や未施術分の一覧も必要です。

売り手が代金を受け取った後、買い手が施術を担う形も考えられます。その場合、負担の精算を曖昧にすると、引き継いだ店の収支を圧迫しかねません。

お客様への案内は、生活に関わる変更から伝えます。

  • 予約済みの施術が受けられるか。
  • 担当者やメニューが変わるか。
  • 回数券などを引き続き使えるか。
  • 予約方法や連絡先が変わるか。

店名を残す場合も、予約サービスやウェブサイトの扱いは別途確認します。契約や利用条件によって、引き継げる範囲が異なるためです。

譲渡の説明を急ぐより、予約を持つお客様が迷わない案内を先に整えます。

借入と連帯保証は、譲渡代金とは別の表で管理する

美容室を譲っても、借入や連帯保証が自動的になくなるわけではありません。金融機関ごとの契約を確認し、返済と保証の扱いを譲渡条件に並べて整理します。

借入先ごとに、誰が何を負っているかを確認する

借入一覧には、残高だけでなく債務者と保証人を記載します。銀行借入のほか、店舗賃貸借などの個人保証も確認してください。

連帯保証人は、通常の保証人と同じ扱いではありません。民法第454条には「前二条の権利を有しない」とあります。会社に先に請求するよう求める権利などが制限されるためです。

条文の確認には、e-Gov法令検索を参照できます。民法第454条の内容は、2026年8月18日に原文確認済みです。

保証書が手元に見当たらなくても、契約が存在しないとは判断できません。写しの有無と、契約そのものの有無を分けて調べます。

  • 借入契約の債務者を確認する。
  • 保証人と対象債務を確認する。
  • 担保に入れた資産を整理する。
  • 現在の返済条件を記録する。

家族が保証している契約があれば、経営者本人の分と分けて記載します。

買い手の約束だけでは、金融機関の保証は消えない

「買い手が責任を持つ」と譲渡契約に書いても、金融機関との保証契約まで自動的に変わるものではありません。保証の解除には、金融機関の同意を含む確認が要ります。

最終契約では、買い手が担う対応や、予定どおり解除されない場合の扱いを検討します。あわせて、金融機関側の手続きがどこまで進んだかを確認します。

  • 保証の対象となる契約を特定する。
  • 金融機関が求める対応を確認する。
  • 買い手の義務と期限を契約で定める。
  • 完了を確認する書類を決める。

契約の締結日、譲渡の実行日、保証の解除日が同じとは限りません。日付がずれる場合に、誰が進捗を確かめるかまで決めておきます。

詳しくは中小M&Aガイドライン第3版で確かめる、廃業を急ぐ社長の保証と買い手の条件をご覧ください。

事業譲渡後に残る債務は、代金の使い道と一緒に検討する

店舗の営業を別の会社へ渡しても、売り手に借入が残る場合があります。譲渡ができた後に考え始めると、返済原資が足りないことに気づくおそれがあります。

代金の配分を経営者だけで決め、特定の支払いを先に済ませるのは避けてください。資金繰りが厳しい局面では、債権者への影響を含めた法的な確認が必要です。

会社法第23条の2は、残る債権者を「害することを知って」おこなう事業譲渡を扱っています。一定の場合、買い手が承継した財産の価額を限度に請求を受ける規定です。買い手の認識に関する例外もあります。

出典は会社法第23条の2(e-Gov法令検索)です。条文は2026年8月18日に原文確認済みです。

不自然に安く事業を移したり、代金を個人へ移したりする案は、先に専門家の確認を受けます。店を残す目的だけで、個々の処理が正当化されるわけではありません。

保証債務の整理は、会社側の処理と切り離せない

返済を終えられない場合は、保証債務の整理も検討事項になります。「経営者保証に関するガイドライン」には、一定の要件のもとで整理を求める枠組みがあります。

ただし、資産を開示すれば利用できるという制度ではありません。会社側の法的債務整理や準則型私的整理との関係も問われます。対象債権者の回収見込みなど、複数の条件を確認する必要があります。

制度の内容は、全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」に示されています。

金融機関との交渉は経営者ご本人が担い、必要に応じて弁護士等へ依頼します。当社の役割は、資料の整備と事業価値の説明資料の作成、M&Aの条件設計による後方支援です。

状況によっては法的整理が適切な場合もあります。店舗の譲渡可能性と、会社・個人の債務整理を同じ日程表で検討してください。

90日以内の判断に向け、資金の期限から手続きを組む

資金が続く期限から逆算する
譲渡までの進め方

美容室M&Aを90日以内に進めたい場合も、成約日から逆算するだけでは足りません。給与や家賃を払える期限を先に置き、その間に整えられる譲渡条件を見極めます。

最初に「いつ資金が不足するか」を日付にする

月末残高だけを見ていると、月の途中の不足を見落とすことがあります。入金日と支払日を同じ表に置き、営業を続けられる期限を確認してください。

カード決済の入金と、その日の売上は時期がずれる場合があります。帳簿上の売上を、そのまま支払いに使えるお金として数えないようにします。

  • 現在使える預金と現金を確認する。
  • 入金予定を日付ごとに記載する。
  • 給与や家賃の支払日を入れる。
  • 借入返済や未払い分を加える。

不足が見える日は、単なる売却目標日ではありません。営業継続の判断を見直す期限です。

買い手の入金が遅れた場合も考えます。未契約の譲渡代金を確定した入金として扱わず、成約できない場合の対応も並行して検討します。

買い手探しに出す資料は、説明の順にそろえる

資料は、すべて完成するまで相談を待つ必要はありません。手元にあるものと、後から取り寄せるものを分ければ、調査の順序を決めやすくなります。

店舗を特定しない概要で関心を確かめ、秘密保持の取り決めをした後に詳細を開示する流れが考えられます。周辺情報の組み合わせから店が分からないかにも配慮します。

資料のまとまり 用意するもの
お金 決算書・直近の試算表
借入 返済予定表・保証書
店舗 賃貸借契約・設備表
営業 売上資料・人員構成

説明と資料が食い違う箇所は、先に理由を整理します。たとえば、決算書の売上と予約管理の売上に差があれば、集計方法を示してください。

買い手への開示が遅れるほど、その後の調査や価格の見直しが詰まりやすくなります。

条件合意の後も、買い手の調査で変わる余地がある

買い手と大枠の条件が合っても、すぐに代金が入るとは限りません。財務や契約などを詳しく調べる工程が残ります。この調査をデュー・ディリジェンスと呼びます。

価格のほかに、成立の前提となる条件を並べます。貸主の承諾やスタッフの意向が未確認なら、その状態を双方で共有してください。

  • 価格と支払方法を確認する。
  • 譲渡対象と除外対象を決める。
  • 調査で判明した問題を整理する。
  • 実行までに満たす条件を明記する。

他の買い手との協議を制限する条件がある場合は、期間と資金の余裕を照合します。進展がないまま時間だけが過ぎないよう、作業の担当と期限を置きます。

資金不足が近づいたら、当初の日程にこだわらず再判断します。譲渡の見込みだけを理由に、支払不能への対応を遅らせないことです。

契約締結と引き渡しは、完了項目を分けて確認する

最終契約を結ぶことと、代金決済や引き渡しを終えることは別です。取引を実行する段階をクロージングと呼びます。

実行日の確認表には、お金と物の引き渡しを並べます。鍵を渡した後に入金条件の食い違いが分かる、といった混乱を避けるためです。

  • 譲渡代金の入金を確認する。
  • 鍵と対象設備を引き渡す。
  • 予約や在庫の残高を照合する。
  • システムの権限を切り替える。

売上の帰属や未精算分の扱いは、引き渡し日を境に書面でそろえます。オーナーが引き継ぎのために残るなら、期間と担当業務も定めます。

保証の確認や譲渡後の精算が残る場合は、別の管理表へ移します。「店を渡したので終了」として、経営者個人の負担を見落とさないためです。

価格・費用・買い手を比べ、無理な譲渡を避ける

美容室M&Aの条件は、提示価格だけで比較しないようにします。営業を続ける費用、譲渡後に残る負担、買い手の資力までそろえると、受け入れられる条件が見えてきます。

手元資金は、代金の受取先から計算する

株式譲渡では通常、株式を売る株主が代金を受け取ります。法人による事業譲渡なら、事業を売る会社が受取先です。

会社に入ったお金を、そのまま社長個人の生活費にできる前提では考えません。借入返済や未払い、税金などの負担を照合する必要があります。

比較表には、少なくとも次の項目を入れます。

  • 譲渡代金の受取先を記載する。
  • 仲介報酬と税負担を見込む。
  • 譲渡までの営業資金を計算する。
  • 譲渡後に残る支払いを整理する。

金額が高くても、決済が遅い案では途中の資金が不足し得ます。分割払いの提案なら、全額を受け取るまでのリスクも検討対象です。

「売却価格」と「自由に使えるお金」を同じ数字にしないこと。それだけでも、提示条件の読み違いを減らせます。

買い手には、購入資金と運営資金の両方を確認する

譲渡代金を払える買い手でも、その後の運営資金が十分とは限りません。引き継いだ後に給与や仕入れの支払いが続くかも確認します。

口頭の説明だけで進めず、資金の準備状況を資料で確かめます。借入で調達する予定なら、承認の状況と入金時期を区別してください。

  • 買収資金の出どころを確認する。
  • 営業継続に使う資金を確認する。
  • 実際に運営する責任者を確かめる。
  • 保証解除への対応内容を確認する。

美容業の運営経験があるか、現場の人員をどう配置するかも判断材料です。経験が少ない場合でも、誰が補うのかを具体的に聞きます。

価格が合った後も、未確認事項は残さないようにします。店やスタッフを託す条件と、経営者が負担から離れる条件を同時に確かめる姿勢が必要です。

仲介報酬と、別途かかる支出を分けて聞く

あさひ国際会計株式会社の相談は無料です。報酬は成功報酬のみで、着手金はありません。

成約時に譲渡代金の中から報酬を精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。ただし、成功報酬まで無料という意味ではありません。

契約前には、報酬の算定方法と精算後の見込みを確認してください。借入や他の支払いが多い場合、代金が入るだけでは資金不足を解消できない可能性があります。

また、仲介報酬と別の支出は区別します。

  • 譲渡までの家賃や給与を確認する。
  • 設備の修理費用を見込む。
  • 専門家への依頼費用を確認する。
  • 税金や残務の費用を整理する。

手元資金がない場合も、その状態を最初に伝えてください。払える前提で日程を組まず、費用の発生時期まで含めて検討します。

続けられる条件がそろわなければ、撤退案も比べる

買い手が見つかっても、必要な条件がそろわなければ実行は慎重に判断します。家賃条件が合わない、スタッフが残らない、営業資金が足りない場合などです。

営業を続けながら待つ費用と、閉店に向けた費用を比較してください。見込みの薄い成約を待つことで、未払いが増えるおそれもあります。

撤退案では、設備処分の収入だけを見ません。退去や原状回復、従業員への対応を含めて、残る負担を見積もります。

詳しくは美容室の閉店手続きを順番に整理|借入・設備・従業員を残さない撤退設計をご覧ください。

当社では、美容業の譲渡を扱った経験を踏まえて条件を整理します。これまで成約に至った案件では、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。ただし金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。

よくある質問

赤字の美容室でもM&Aを検討できますか?

赤字でも、店舗の営業を引き継ぐ相手を探す余地はあります。ただし、現在の赤字が何によるものかを分ける必要があります。オーナーの退任後に売上が減る場合や、設備の修理が必要な場合は、その負担も含めて判断します。

全社の決算だけで結論を出さず、店舗の収支と借入返済を並べてください。美容業の成約実績はありますが、買い手がつくかは個別の条件によります。

スタッフやお客様に知られずに相談できますか?

初回相談の段階から、スタッフやお客様への告知を前提にする必要はありません。買い手探しでは、店を特定しない概要から説明する方法が考えられます。ただし、交渉が進めば現場確認や本人の意思確認が必要になるため、情報を伝える相手と時期を設計します。

最初の連絡時に、折り返しを受けられる時間帯や連絡方法を伝えてください。店の営業中に電話を受けにくい場合は、メールで状況を整理する方法もあります。

90日以内に譲渡を終えられますか?

資料の準備、買い手の判断、貸主の承諾などがそろえば、短期間で進む場合もあります。ただし、90日以内という希望だけで完了日は決まりません。保証の扱いや営業に必要な手続きも含めて、実行可能な日程を確認します。

資金が90日間持たないなら、より早い判断が必要です。いつ不足するかを先に伝え、譲渡が遅れた場合の対応も検討してください。

造作を売ったお金で借入を返し切れない場合はどうなりますか?

設備などの売却代金で返し切れない分は、別途整理が必要になります。店舗を引き渡しただけで借入や保証が消えるわけではありません。代金の配分を決める前に、債務全体と経営者個人の保証を確認します。

残る会社の処理や保証債務の整理は、必要に応じて依頼する弁護士等が担当します。当社は資料整備やM&Aの条件設計を通じて、経営者ご本人の検討を後方から支えます。

まとめ

手元にある賃貸借契約と借入・保証の書類をそろえ、資金が不足する日、譲りたいもの、スタッフへの説明状況をメモしてください。書類がそろわない段階でも、そのメモをもとにあさひ国際会計株式会社へご相談いただけます。

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この記事を書いた人

あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
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最終更新日: 2026年9月30日