目次
この記事の対象と結論
会社の特別清算手続きは、解散して清算に入った株式会社について、裁判所が関与して財産や債務を整理する手続きです。廃業を考え、借入を返しきれないおそれがある経営者は、利用条件と個人の保証を分けて確認する必要があります。
会社を特別清算しても、経営者の連帯保証が自動的に消えるわけではありません。 解散の判断と並行して、債権者への説明、手続きに使う資金、保証債務の整理まで検討します。
廃業や保証の重さを抱えて相談する経営者は珍しくありません。資料がそろっていなくても、今ある預金と次の支払日から整理を始められます。事業を引き継ぐ余地があるなら、営業を止める前に確認する道もあります。ただし、資金や債権者の状況によっては、破産による整理が適切な場合もあります。
特別清算を検討できるのは、解散して清算中の株式会社

特別清算の対象は、すでに解散して清算中の株式会社です。借入が多いという事情だけで、営業中の会社がそのまま手続きに入る仕組みではありません。
解散は出発点であり、借入の整理はその後に続く
株主総会の決議で解散する場合、会社を終える意思決定の後に清算が続きます。残った財産を調べ、売掛金を回収し、債務を整理する段階です。営業をやめた日と、会社の整理が終わる日は一致しません。
決議だけで借入や買掛金がなくなるわけでもありません。店舗を閉めても賃貸借契約の処理が残り、売上が止まっても保管費などが続く場合があります。終了後の支出まで見積もる必要があります。
会社法第475条は、解散後の清算を定めています。ただし、合併で消滅する場合などには例外があります。破産手続開始で解散した会社は、進行中の破産手続の中で処理されます。
「会社を閉める」と家族に伝える際も、営業終了と債務の整理を区別すると、残る作業を共有しやすくなります。
開始条件は、清算の支障か債務超過の疑い
会社法第510条は、開始条件のひとつとして「債務超過の疑いがあること」を挙げています。もうひとつは、清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合です。出典はe-Gov法令検索「会社法」です。
債務超過とは、資産より負債が多い状態を指します。ただし、決算書の残高だけでは判断しにくいことがあります。売れない在庫や回収が難しい売掛金が含まれているためです。
廃業を考える段階では、資産を実際にお金に換えた場合の額を見ます。借入残高との比較だけで終わらせず、未払金や終了までの費用も加えます。
帳簿上は資産が足りていても、回収時期が支払日に間に合わない場合があります。財産の不足と、手元資金の不足は別の問題です。両方を把握すると、検討すべき手続きが見えやすくなります。
清算人には申立ての義務が生じる場合がある
特別清算の申立てができるのは、債権者、清算人、監査役、株主です。経営者本人が会社の整理を望んだ場合だけに限られません。
清算中の株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人に申立ての義務があります。会社法第511条第2項の規定です。「資産を売り終えてから考える」と先送りしてよいとは限りません。
株主総会の決議で解散した場合、別段の定めがなければ、解散時の取締役が清算人になります。肩書が変わって終わり、という役割ではありません。会社の財産と債務を調べ、その状態に応じた対応を進めます。
就任後に返済不足が見えたら、経緯と根拠を記録してください。把握した日や資料が残っていれば、弁護士が申立ての要否と時期を検討しやすくなります。
通常の清算・特別清算・破産を分けて考える
返済に使える財産があるか、債権者との合意が見込めるかで、検討する道は変わります。経営者が使いたい手続名だけで決めることはできません。
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| 比較項目 | 通常の清算 | 特別清算 | 破産 |
|---|---|---|---|
| 基本の方向 | 債務を払い整理 | 裁判所の関与で整理 | 裁判所の手続で清算 |
| 主な確認点 | 完済の見込み | 開始条件と合意の見込み | 支払不能などの状態 |
| 解散との関係 | 解散後に進む | 清算中の会社が対象 | 開始決定も解散事由 |
| 個人の保証 | 別途確認が必要 | 別途確認が必要 | 別途確認が必要 |
特別清算では、債務をどう処理するかについて、債権者の理解や合意の見通しが実務を左右します。反対が強い場合や、財産をめぐる争いがある場合には、別の手続きも検討します。
破産を選ぶことが、経営者として向き合わないことを意味するわけではありません。財産を公平に整理し、再出発につなげる役割があります。詳しくは会社破産とは?手続き・費用・連帯保証と破産前に検討したい選択肢をご覧ください。
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会社の特別清算手続きは、準備・解散・申立ての順に組み立てる

特別清算に向けた準備は、解散の決議前から始めます。事業を止める日だけを決めず、資産の把握と債務の処理方針を先に整えます。
解散を決める前に、終了までの資金を確認する
最初に確認するのは、今の預金で何をいつまで払えるかです。直近の決算が赤字かどうかより、次の支払いに間に合うかが先になる場面もあります。
準備する項目は、次のとおりです。
- 現預金の残高と利用できる口座
- 売掛金の入金予定と回収の見込み
- 借入の返済日と残高
- 給与や買掛金などの支払予定
- 廃業後も続く契約と費用
支払予定は、相手先と期日を対応させて整理します。金額だけの合計表では、営業を止めた後の不足時期が見えません。入金が遅れた場合も試算しておくと、予定の崩れやすさを把握できます。
事業譲渡を検討する場合にも、この表を使います。買い手を探す期間の運営費を確保できるかが判断材料になるためです。希望する譲渡時期だけで、廃業日程を組まないようにします。
株主総会での解散決議と清算人の確認
任意に解散する株式会社では、株主総会の特別決議を検討します。株主が複数いるなら、経営者の意向だけで進められるとは限りません。株主構成と定款を確認し、決議の準備を整えます。
解散後の清算人についても、誰が担うかを明らかにします。取締役が引き続き担う場合でも、実務の分担は別途必要です。
1. 株主構成と定款を確認する
2. 解散の決議内容を整える
3. 清算人と実務の担当を確認する
4. 登記と債権者対応の予定を組む
決議日を決めてから担当を探すと、書類の作成や確認が集中します。登記を扱う司法書士、申立てを扱う弁護士との役割分担を、日程と一緒に整理してください。
解散を決めた後も、過去の取引資料を保管する必要があります。会計データの契約を解約する前に、必要な記録を残せる状態か確認しておきます。
登記と債権者への公告・個別の催告
解散と清算人の登記には、それぞれ期限があります。会社法第926条・第928条によると、原則として解散日などから2週間以内です。根拠はe-Gov法令検索「会社法」で、提示資料では2026年8月18日に確認されています。
清算株式会社は、債権者に債権を申し出てもらうための官報公告もおこないます。判明している債権者には、個別の催告が必要です。公告だけで全員への連絡が済むわけではありません。
会社法第499条は、申出期間について「二箇月を下ることができない」と定めています。この2か月は債権の申出期間の下限です。特別清算全体が終わる期間を示す数字ではありません。
宛先が分からない取引先や、請求額が確定していない相手も整理対象です。経理担当者の記憶だけに頼らず、契約書や請求履歴から一覧を作ります。借入先だけを載せた表では不足するおそれがあります。
申立て後は、裁判所の判断と債務の処理へ進む
特別清算の開始は、申立てを受けた裁判所が判断します。解散したからといって、そのまま開始されるものではありません。会社の状態や清算の見通しを説明する資料が必要です。
準備段階では、次の流れを弁護士と共有します。
1. 開始条件と会社の状態を確認する
2. 財産と債権者の資料を整える
3. 債務の処理方針を検討する
4. 申立て後の対応と資金を見込む
開始後も、債務の整理方法に応じた合意や裁判所の手続きが続きます。申立書の提出は途中の工程です。誰にいくら支払うか、残る債務をどう扱うかが未整理なら、提出だけを急いでも見通しは立ちません。
清算事務の完了後には、決算報告や清算結了の登記も確認します。詳しくは会社清算手続きの全体像|解散・債務整理・連帯保証を順序立てて理解するをご覧ください。
手続きが進むかどうかは、財産の説明と債権者の見通しで変わる
特別清算では、清算人側が会社の財産と債務を説明できる状態に整えます。帳簿の合計だけでなく、回収額や処分額の根拠が問われます。
資産は帳簿の額と換金できる額を並べる
決算書に載っている資産を、その金額で売れるとは限りません。専用設備は買い手が限られ、在庫には売却や処分の費用がかかることもあります。
資産表には、帳簿の額と換金の見込みを並べます。差がある場合は理由も残してください。見積書や回収状況があれば、金額を説明しやすくなります。
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| 財産 | 確認する内容 | 根拠に使う資料 |
|---|---|---|
| 売掛金 | 回収額と入金時期 | 入金履歴・請求書 |
| 在庫 | 売却可否と処分費 | 棚卸表・見積書 |
| 設備 | 所有者と売却見込み | 契約書・査定資料 |
| 敷金など | 返還額と控除費用 | 賃貸借契約書 |
会社が使っている設備でも、所有者が別の場合があります。売却候補に入れる前に、リースや担保の有無を確認します。換金額の見積もりは、そのまま自由に使える現金の額とは限りません。
債権者ごとに、債務の性質と認識の違いを調べる
借入先が少なくても、債権者が少ないとは限りません。取引先への未払金や、契約の終了に伴う精算が残ることもあります。
一覧には、次の内容を整理します。
- 相手先と連絡担当者
- 債務の金額と支払期日
- 担保や保証の有無
- 請求額をめぐる争いの有無
- これまで説明した内容
口頭で「整理には協力する」と言われていても、条件まで合意できたとは限りません。返済原資や他の債権者への扱いを見て、判断が変わる可能性もあります。
同じ事実について説明が食い違うと、資料の信頼性にも影響します。窓口となる人と説明内容をそろえ、連絡の記録を残します。法的な交渉や合意書の検討は、依頼する弁護士の担当範囲として整理してください。
合意が難しいときは、手続きの選び直しも考える
主要な債権者が反対している場合、何に反対しているのかを分けます。返済額への不満なのか、財産の評価への疑問なのかで、追加すべき資料が変わるからです。
説明不足なら、回収や売却の根拠を補う余地があります。一方、債権額そのものに争いがある場合は、説明資料を増やすだけでは解決しにくくなります。
待てる資金があるかも確認します。合意を期待して時間を使う間に、清算に必要な資金まで減ってしまうおそれがあります。「もう少し待てば」と考える際には、継続費用も並べて判断してください。
特別清算が難しいときは、破産などへの切り替えも検討対象です。手続名へのこだわりより、財産を保全し、関係者への影響を広げない進め方を優先します。
従業員と取引先への説明は、決まった内容から整える
従業員に伝える内容は、営業終了の見通しと雇用の扱いを分けます。事業譲渡の候補があるだけで、「仕事はそのまま残る」と説明することは避けます。
伝える前に確認したいのは、次の項目です。
- 給与などの未払額と支払予定
- 雇用を続けるか終了するか
- 事業を引き継ぐ場合の雇用条件
- 問い合わせを受ける担当者
取引先については、受注済みの仕事や預かり品の処理も残ります。新たな注文を受けるなら、履行できる見通しを確認する必要があります。売上を確保するためだけに受注を続けると、未完了の仕事が増えかねません。
家族への説明も、会社の予定と個人の保証を分けておこないます。見通しが未確定なら、その点も伝えて構いません。決まっていないことまで約束せず、次に確認する事項を共有します。
特別清算の費用と期間は、登記だけでは見積もれない
特別清算の予算には、登記費用に加えて、裁判所への費用や専門家報酬などを見込みます。完了時期も、財産の処分や債権者との合意状況で変わります。
法定の登記費用と、案件ごとに変わる費用
株式会社の登記にかかる登録免許税は、解散が3万円、清算人が9千円、清算結了が2千円です。合計は4万1千円となります。登録免許税法別表第一が根拠で、2026年7月23日時点の確認内容です。出典はe-Gov法令検索「登録免許税法」です。
この4万1千円は、特別清算を終えるための総額ではありません。 官報公告や専門家の報酬などは含まれていません。
予算は、次の区分で見積もりを取ります。
- 解散・清算に伴う登記と公告
- 裁判所への申立てに伴う費用
- 弁護士や司法書士などの報酬
- 会計処理と税務申告の費用
- 財産の保管・処分と契約終了費用
提示された確認資料には、特別清算全体の公的な相場はありません。そのため、根拠のない総額や金額帯を当てはめることは避けます。個別の見積書で、作業範囲と追加費用の条件を確かめるほうが、資金不足を見つけやすくなります。
手続きの期間と、法定の期限を混同しない
債権の申出期間や登記期限は、会社法に定めがあります。一方、特別清算全体の標準期間について、裁判所の公表値は提示資料で確認されていません。調査時点は2026年8月15日です。
したがって、営業終了日から機械的に完了日を逆算するのは避けます。財産の売却先が決まらない場合や、債権額の確認に時間がかかる場合には、日程が変わります。
予定表では、次の状態を区別します。
- 法律で期限が定められている作業
- 相手の回答を待つ作業
- 金額や条件が未確定の作業
事務所の賃料や資料の保管費は、日程が延びれば増えることがあります。手続きの費用だけを確保しても、維持費が抜けていれば途中で不足します。延長時の支出も予算に含めておきます。
費用を払えない場合は、申立て準備の段階で伝える
費用が不足しているなら、利用できる現金と今後の入金を分けて伝えます。売掛金の額をそのまま資金として扱うと、回収の遅れで予定が崩れるおそれがあります。
費用を払えないからといって、債務が消えるわけではありません。資金を用意する方法と、選んだ手続きで進められるかを同時に確認します。裁判所への費用や報酬の扱いは、依頼する弁護士に具体的な条件を確認してください。
経営者個人の預金を入れる場合も、いったん立ち止まって検討します。会社の費用を払った結果、生活費や個人の債務整理費用が不足する可能性があるためです。
特定の相手への返済や資産の売却を、資金づくりのために急ぐのも避けます。財産の処分方法や支払先によっては、後の整理で問題になるおそれがあります。実行前に対象と金額を共有します。
誰に何を頼むかを分けると、見積もりを比べやすい
専門家の見積もりは、金額だけでなく担当範囲で比べます。申立てまでなのか、その後の債務の処理も含むのかで、必要な支援は変わります。
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| 担い手 | 主に扱う内容 | 確認する範囲 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 法的判断・申立て・交渉 | 会社と個人の両方 |
| 司法書士 | 解散や清算の登記 | 書類と登記の時期 |
| 税理士 | 会計・税務申告 | 清算中の税務処理 |
| M&A支援者 | 引継ぎ先と条件の設計 | 事業価値と譲渡条件 |
破産手続きを主に扱う専門家と、事業を残す再生を扱う専門家では、得意分野が異なります。特別清算だけでなく、事業譲渡や個人保証も含めた検討経験を確認すると、依頼範囲を決めやすくなります。
当社への相談では、事業を譲る余地と必要資料を整理します。法的判断や債権者との交渉は、依頼する弁護士の領域です。状況によっては法的整理が適切な場合もあるため、M&Aの成立だけを前提にはしません。
会社の借入と経営者の連帯保証は、別々に着地点を確認する
特別清算で扱う会社の債務と、経営者が負う保証債務は区別して検討します。会社側の合意ができても、個人への請求がどうなるかは別途確認が必要です。
会社側の整理だけで保証解除まで済んだと思わない
金融機関との借入契約と、経営者の保証契約は、確認する対象が異なります。会社の残債務がどう処理されるかに加え、保証人への請求の扱いまで確かめます。
「会社がなくなるなら個人にも請求されない」と考えていると、生活設計が崩れるおそれがあります。借入先ごとに、保証契約と関連する合意内容を確認してください。
- 誰が保証人になっているか
- どの借入が保証の対象か
- 担保に入っている財産は何か
- 保証債務の処理を誰が担当するか
社長が交代していたり、借入条件を変更していたりする場合には、手元の契約書だけで現状が分からないこともあります。不明点は推測で埋めず、確認事項として残します。家族が関係する契約も、本人の認識と書面を照らし合わせます。
経営者保証の整理には、会社側の手続きとの関係がある
すでに負っている保証債務については、経営者保証に関するガイドラインによる整理を検討できる場合があります。保証人の資産を開示すれば利用できる、と単純に理解するのは避けます。
同ガイドラインの保証債務整理の要件には、会社側の手続きとの関係が含まれます。会社が法的債務整理手続または準則型私的整理手続を、同時に申し立てているか、申し立てる見込みであることなどが必要です。
これから保証を付けずに借りる場面と、既存の保証債務を整理する場面では、確認する要件が異なります。廃業を検討しているなら、既存の保証債務の整理に対応する要件で判断します。
制度の内容は全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」に掲載されています。特別清算を選べば利用できるという関係ではなく、会社と保証人の状況を合わせて検討します。
自宅や生活費の見通しは、契約と個人の資産から考える
会社が特別清算に入った後の暮らしは、保証債務の額や担保の状況によって変わります。自宅を残せるかどうかも、手続名だけでは判断できません。
個人については、次の内容を整理します。
- 預金などの保有資産
- 自宅の名義と担保の状況
- 個人名義の借入と返済予定
- 今後の収入と生活費
会社と個人のお金を混ぜて管理している場合は、過去の入出金をたどれる状態にします。説明が難しい移動があれば、その経緯も残してください。家族名義へ移すことで解決しようとすると、別の問題を招くおそれがあります。
まだ結論が出ていない段階でも、生活費の必要額は確認できます。個人の資金を会社へ追加する判断は、その見通しと保証債務の処理を照らして検討します。
合意した内容と、実際に完了した内容を分ける
保証の扱いは、「解除を目指す」という予定と、解除が完了した状態を区別します。口頭の説明だけで区切りを付けず、金融機関の手続きや書面で確認します。
会社側の清算が進んでいると、個人の保証確認が後回しになりがちです。担当者と確認時期を予定表に入れておくと、残った作業を見失いにくくなります。
確認する内容は、次のとおりです。
- 保証の処理に同意した当事者
- 合意の対象となる借入
- 残っている条件や手続き
- 完了を確認する書面
事業譲渡を組み合わせる場合も同じです。買い手との約束だけで、金融機関と経営者の保証契約が変わるものではありません。譲渡条件と金融機関の判断を分けて確認し、終了までの担当を明らかにします。
事業を譲ってから特別清算するなら、譲渡と清算を一緒に設計する
事業を引き継ぎ、残った会社を特別清算で整理する方法が検討されることがあります。ただし、事業を移せば借入や保証の問題が片付くという仕組みではありません。
営業を止める前に、引き継げる価値を確認する
会社全体では返済が難しくても、取引や設備に引継ぎの価値が残っている場合があります。営業を終え、人が離れた後には、その価値を説明しにくくなることもあります。
確認する対象は、次の内容です。
- 続いている受注や取引
- 引継ぎに必要な従業員の体制
- 設備や店舗を使える条件
- 許認可や契約の承継条件
売上だけで判断せず、買い手が引き継いだ後に運営できるかを確認します。契約や許認可の扱いによっては、引継ぎに別の作業が必要です。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン第3版」には、事業移転後に譲り渡し側を特別清算で整理する方法への言及があります。2024年8月公表の資料で、提示資料では2026年8月18日に確認されています。出典は中小企業庁「中小M&Aガイドライン」です。
譲渡代金は、残る会社の清算まで見込んで考える
事業譲渡では、譲渡の対象や承継する契約を整理します。代金が入っても、借入の返済以外に使う費用が残るため、売却額だけで清算の可否を判断しません。
譲渡後の資金計画では、次の内容を確認します。
- 会社に入る譲渡代金
- 譲渡に伴う税金や費用
- 残る債務の支払原資
- 清算と個人保証の整理費用
株式譲渡の場合、株主が株式を売るため、事業譲渡とは代金の受取先が異なります。会社の債務はその会社に残ります。会社に入るお金と、経営者個人に入るお金を混同しないようにします。
税金の影響も、手法と財務内容に応じて確認が必要です。詳しくは会社の廃業手続きを全体整理|解散・清算と借入、連帯保証の分岐をご覧ください。
財産を安く移して、債務だけ残す進め方は避ける
親族や別会社に事業を移す場合も、譲渡価格の根拠を残します。買い手と売り手が納得しているだけでは、残る債権者への説明として足りないおそれがあります。
会社法第23条の2は、残る債権者を「害することを知って」事業を譲渡した場合の責任を定めています。譲受会社が知らなかった場合の例外もあります。出典はe-Gov法令検索「会社法」です。
また、譲受会社が商号を引き続き使う場合には、債務を弁済する責任が問題になります。「事業譲渡なら借金は移らない」と一律には整理できません。
財産の評価と売却先の選び方を説明できるようにし、実行前に法的な確認を受けます。清算に使う財産が減る取引ほど、後の手続きまで見通した検討が求められます。
当社は事業価値の整理とM&Aの条件設計を担う
あさひ国際会計株式会社は、再生型M&Aの仲介をおこなっています。金融機関への説明に使う資料や事業価値の説明資料を整え、M&Aの条件を設計します。債権者との協議・交渉の主体は、経営者ご本人と、必要に応じて依頼する弁護士等の専門家です。当社は資料作成などの後方支援を担います。
これまで成約に至った案件では、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。ただし金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。
相談は無料で、着手金はありません。仲介報酬は成約時に譲渡代金の中から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。これは当社の仲介報酬の支払い方法であり、特別清算の裁判所費用などが無料になる説明ではありません。
最初の相談では、借入残高と次の支払日、営業を続けられる見通しをお伝えください。書類が不足していても、確認する順序から整理できます。
特別清算の手続きを支える、記録と連絡窓口の引継ぎ

特別清算の手続きでは、営業終了後も会社の取引を説明する場面が想定されます。資料を集めるだけでなく、担当者が退職した後も確認できる状態を目指しましょう。廃業を検討する段階で、情報の引継ぎまで予定に入れると準備を進めやすくなります。
経理担当者が離れる前に、数字の根拠を引き継ぐ
経理担当者しか知らない処理があると、帳簿と請求書の違いを説明しにくくなります。残高の一覧に加え、未処理の取引や確認中の事項を聞き取っておくとよいでしょう。
引継ぎでは、次のような記録が役立ちます。
- 帳簿と請求額が違う理由を残す。
- 入金先が不明な取引を洗い出す。
- 相手からの回答待ちの事項をまとめる。
- 原本の保管場所と管理者を記す。
不明な金額を、表を完成させるために推測で埋めるのは避けたいところです。「未確認」と記し、確認先や根拠となる資料を添えましょう。担当者の記憶に基づく説明も、その旨を分けて残すと読み手が判断しやすくなります。
会計ソフトや会社用端末は、記録を取り出してから整理する
廃業に伴って会計ソフトを解約すると、過去の記録を見られなくなる場合があります。画面で閲覧できることと、解約後も確認できることは分けて考えたい点です。
契約内容を調べ、必要なデータを取り出せるか確かめてください。保存したファイルが開けるか、請求書と対応をたどれるかも確認するとよいでしょう。紙の資料と電子データが分かれているなら、保管先の一覧が手がかりになります。
会社用端末を返却する際も、業務記録が端末の中だけに残っていないか点検します。個人の端末やメールに記録がある場合は、私的な情報との切り分けが課題になりえます。会社の記録として引き継ぐ範囲を、先に整理しておきましょう。
事務所を閉めた後も、連絡を受け取れる体制を考える
事務所を退去すると、郵便物や取引先からの問い合わせを受け取りにくくなるおそれがあります。退去日だけでなく、退去後の受取先と確認担当も決めておくと安心につながります。
連絡先を変更する場合には、相手へ伝えた日も記録しておきましょう。連絡を受ける人と回答する人が異なるなら、引継ぎ方法の共有も役立ちます。回答期限のある書類が届いたときに、誰が確認するかを見失いにくくするためです。
問い合わせの記録には、受け取った内容と回答済みの内容を分けて残します。請求を受け付けた段階で、支払額や支払日まで約束しないよう留意してください。確認が済んでいない事項は、その状態を伝えるほうが認識の違いを抑えやすくなります。
準備中に状況が変わったら、資料の更新と方針確認を進める
申立ての準備中にも、入金の遅れや新たな請求が分かることがあります。古い一覧を上書きするだけでは、以前の説明との違いをたどりにくくなります。更新日と変更理由を残せば、資金の見通しを見直す際の助けになるでしょう。
資料が整うまで相談を待つと、対応を検討する時間が短くなるおそれもあります。手元資金の不足が見えた場合は、未確認の事項も含めて共有してください。
法的な対応は、依頼する弁護士と確認することが考えられます。状況によっては法的整理(破産・清算)が適切な場合もあるためです。当社はM&Aの検討に必要な資料の整備や説明資料の作成で、ご本人の協議を支える立場です。
よくある質問
特別清算を申し立てれば、会社の借金は免除されますか?
申立てだけで借金が免除されるわけではありません。裁判所の開始判断に加え、債務をどう処理するかについて、必要な合意や手続きを進めます。申立て前に、返済原資と債権者の意向を整理しておく必要があります。
財産の額が変われば、説明していた返済条件にも影響します。回収や売却が未確定の資産は、その前提を明示し、楽観的な金額だけで計画を作らないようにします。
特別清算なら、社長の自己破産を避けられますか?
特別清算を選んだことだけで、個人の自己破産を避けられるとは限りません。経営者が負う保証債務と、個人の資産や収入を確認して判断します。経営者保証に関するガイドラインによる整理も、要件を満たすかの検討が必要です。
会社と個人の手続きを別々の時期に考えると、必要な資金や資料が不足するおそれがあります。会社の方針を検討する段階から、個人の保証も担当する範囲に含めて確認してください。
債務超過の会社でも、通常の清算だけで終えられますか?
債務を返しきれない疑いがあるまま、通常の清算で終えられるとは考えないほうがよいでしょう。清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人に特別清算開始の申立て義務が生じます。財産と債務の状態を確認し、法的な対応を検討します。
決算書の数字を変えたり、登記だけを済ませたりして解決する問題ではありません。帳簿上の資産が実際に回収できるかも含め、清算の見通しを立てます。
まだ廃業を決めていなくても相談できますか?
廃業を決めていない段階でも、当社への相談は可能です。特別清算を利用できるかという法的判断と、事業を引き継ぐ余地があるかの検討を分け、必要な資料を整理します。相談したことで、解散や売却を決める必要はありません。
決算書が手元になければ、預金残高や借入の状況からお伝えください。次の支払日が近い場合には、その期日を先に共有すると、検討に使える時間を踏まえて話を進められます。
特別清算の準備中に、会計ソフトを解約してもよいですか?
解約を決める前に、過去の記録を保存し、解約後も確認できるか確かめるとよいでしょう。帳簿の数字だけでは、請求額や入出金の経緯を説明しにくい場合があります。関連資料との対応や保管場所も残し、引継ぎ担当者が閲覧できるか確認してください。利用料の削減と、後の説明に使う記録の確保を合わせて検討することが大切です。
まとめ
まず、会社の現預金・次の支払日・借入と保証の状況を整理し、解散を決める前に、清算費用と事業を引き継ぐ余地を確認してください。当社の無料相談では、その情報をもとに、M&Aで検討できる範囲と法的な確認が必要な事項を整理します。
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この記事を書いた人
あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
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最終更新日: 2026年9月23日
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