目次
この記事の対象と結論
この記事は、資金繰りが厳しくなり、会社清算手続きを考え始めた中小企業の経営者に向けたものです。借入の連帯保証を抱え、「会社を閉じた後、自分はどうなるのか」と不安な方も対象です。
会社清算手続きは、営業を止めたり、株主総会で解散を決めたりするだけでは終わりません。解散後に清算人が債権と債務を整理し、残余財産を分配して、清算結了を登記します。
ただし、会社の資産で債務を支払えない場合は、通常清算とは別の検討が要ります。特別清算や破産のほか、事業を買い手へ引き継ぐM&Aも候補です。
会社を清算しても、経営者個人の連帯保証が連動して消えるわけではありません。会社の手続き、個人の保証、残っている事業価値を分けて確認することが出発点です。
会社清算手続きの意味と選べる条件
廃業・解散・清算は意味が異なる
「廃業」「解散」「清算」は、日常会話では同じように使われます。しかし、それぞれが示す内容は異なります。
廃業は、事業をやめることを表す一般的な言葉です。会社法上の手続名ではありません。店舗を閉めたり、受注を止めたりした段階を廃業と呼ぶこともあります。
解散は、会社が通常の営業活動を終え、法人格を消滅させる段階に入ることです。会社法471条は、株式会社の解散事由を定めています。株主総会の決議、合併、破産手続開始の決定などが含まれます。
清算は、解散後に会社の財産関係を整理する手続きです。会社法475条では、解散した会社は清算をしなければならないとされています。ただし、合併による消滅や、破産手続中の会社は扱いが異なります。
会社を任意に閉じる場合の基本的な流れは、次のとおりです。
1. 事業をやめる方針を固める
2. 株主総会で解散を決議する
3. 清算人が財産と債務を整理する
4. 残余財産があれば株主へ分配する
5. 清算結了を登記する
解散は会社清算手続きの入口です。清算結了の登記を終えるまでは、会社が直ちに消滅するわけではありません。
言葉の違いを詳しく知りたい方は、「会社閉める」の正しい言い方は?廃業・解散・清算の違いと手続をご覧ください。
通常清算は債務を払える会社が前提になる
通常清算は、会社の資産や回収予定の債権により、債務を支払える状態を前提とします。
対象となる債務は、金融機関からの借入だけではありません。買掛金、未払給与、税金、社会保険料、賃料、リース残額なども含まれます。
決算書が資産超過でも、清算できるとは限りません。帳簿に計上された売掛金を回収できない場合や、在庫を帳簿価格で売れない場合があるからです。
一方、決算書が債務超過でも、その数字だけで通常清算が不可能と決まるわけではありません。資産の換価額や経営者からの借入などにより、実際の支払能力は変わります。
確認したい項目は次のとおりです。
- 現預金と今後の入金額
- 売掛金の回収見込額
- 設備や在庫の換価見込額
- 借入金と未払金
- 税金と社会保険料
- 従業員への支払額
- 清算中に発生する固定費
- 登記や専門家への依頼費用
これらを支払時期ごとに並べ、資金が途中で尽きないかを調べます。帳簿上の純資産ではなく、実際に使える現金で見ることが重要です。
支払不能なら通常清算だけでは進められない
破産法2条11項は、支払不能を「弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態」と定義しています。
一時的に口座残高が少ないだけなら、直ちに支払不能とは限りません。しかし、売掛金を回収しても支払いが追いつかず、今後も改善を見込めない場合は、法的整理を含めた検討が要ります。
破産は、裁判所が関与する法的倒産手続です。破産法15条1項では、債務者が支払不能にあるとき、裁判所が申立てにより破産手続を開始すると定めています。
株式会社が清算中であり、清算の遂行に著しい支障がある場合や、債務超過の疑いがある場合には、特別清算も候補です。会社法510条に基づき、裁判所が開始を命じます。
会社法511条2項では、清算株式会社に債務超過の疑いがあるとき、清算人は特別清算開始の申立てをしなければならないとされています。
資金不足を認識しながら通常清算の形だけを進めると、途中で手続きの変更を迫られることがあります。状況によっては、法的整理が適切な場合もあります。
破産も会社の解散事由に含まれる
会社法471条では、破産手続開始の決定も解散事由の一つとされています。つまり、「解散」と「破産」は反対の概念ではありません。
株主総会の決議による解散では、その後に通常清算へ進むことがあります。一方、破産手続開始の決定による解散では、会社の財産関係を破産手続の中で処理します。
破産法1条は、債務者の財産等の適正かつ公平な清算だけを目的としていません。「債務者について経済生活の再生の機会の確保」も目的に含めています。
会社を終わらせることと、経営者の生活を立て直すことは別の課題です。法人破産を選ぶ場合でも、個人の保証債務や生活再建を切り分けて考えます。
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| 会社の状態 | 主な候補 | 裁判所 | 事業 |
|---|---|---|---|
| 債務を払える | 通常清算 | 原則関与なし | 終了 |
| 債務超過の疑い | 特別清算 | 関与あり | 原則終了 |
| 支払不能 | 破産 | 関与あり | 原則終了 |
| 事業価値がある | M&A | 手法による | 承継の余地 |
債務超過の会社を清算するときに確認したい不足額と進め方
債務超過の会社を清算したいときは、決算書の赤字額だけで方針を決めないようにします。資産を現金に換えた後、どれだけ支払いが残るかを見直すことが出発点です。
廃業を決めても、入金と支払いが同じ日に終わるとは限りません。清算中の資金不足も含めて、通常清算で処理できる見通しを確かめましょう。
帳簿上の債務超過と清算時の不足額を分ける
帳簿に載る資産額と、廃業時に回収できる金額には差が出ることがあります。設備の売却見積もりや売掛金の回収状況を使い、現金化の見込みを整理します。
同時に、営業を終えるための支出も確認したいところです。借入残高だけで不足額を計算すると、契約終了にともなう費用を見落とすおそれがあります。
- 資産ごとに換価見込額を記入する
- 売掛金ごとに回収予定日を確認する
- 未払債務と支払期限を並べる
- 契約終了の費用を見積もる
- 清算中の固定費を加える
見込額には、根拠と未確認の点も添えておくと役立ちます。入金が遅れた場合の残高も確認すれば、途中で資金が足りなくなる時期を把握しやすくなります。
経営者からの借入も債務として確認する
債務超過の内訳に、経営者が会社へ貸したお金が含まれることもあります。その場合も、会社側では返済すべき債務として整理する必要があります。
「自分が貸したお金だから」と一覧から外すと、実態が見えにくくなります。金融機関からの借入と区分し、残高や契約の内容を確認しましょう。
役員借入金が多いだけで、通常清算へ進めると判断するのは避けたいところです。どのように処理するかに加え、税務上の影響も確認する余地があります。弁護士や税理士などに、担当分野に応じて相談することが考えられます。
状況によっては法的整理(破産・清算)が適切な場合もあります。経営者個人の資金を追加する前に、会社と個人の負担を分けて見直しましょう。
清算中に不足が分かったら手続きの見直しを相談する
清算を始めた後で、想定した金額で資産を売れないこともあります。未確認だった請求が届き、債務超過の疑いが生じる場合も考えられます。
そのときは、登記を済ませることより、財産と債務の再確認を優先したいところです。会社法511条2項には、債務超過の疑いがある清算株式会社について定めがあります。清算人に特別清算開始の申立義務を課す規定です。
特別清算は、解散して清算中の株式会社を対象とする手続きです。「債務超過なら会社の種類を問わず利用できる」とは考えないようにしましょう。破産を含む対応は、会社の状態を踏まえた判断になります。
債権者への説明や交渉は、経営者本人と、必要に応じて依頼する弁護士等が担います。返済や資産処分を進める前に、法的な対応を相談することが考えられます。
事業を譲った後に残る債務まで見通す
債務超過でも事業価値が残るなら、清算前にM&Aを比較する余地があります。ただし、事業譲渡の代金が入っても、残る会社の債務を処理できるとは限りません。
譲渡代金の見込みと、譲渡後に残る支出を同じ資料で比べます。買い手が見つかるまでの運転資金も、検討を続けられるかの判断材料です。
会社の債務処理と経営者の保証解除は、別に確認したい論点です。当社は財務資料の整備や条件設計を通じ、ご本人の協議を支えます。事業を引き継ぐ可能性と、残る債務の整理をあわせて検討しましょう。
会社清算手続きの順番と法定期限


株主総会で解散を決議する
株式会社が株主総会の決議により解散する根拠は、会社法471条3号です。
この決議には、会社法309条2項11号の特別決議が求められます。原則として、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上が賛成する形です。
定款により、出席要件を3分の1以上まで軽減している場合もあります。共同株主や相続が発生している会社では、株主名簿と議決権の確認が欠かせません。
株主総会では、解散日と清算人について決めます。定款や株主総会で別段の定めがなければ、解散時の取締役が清算人になります。根拠は会社法478条1項1号です。
解散日を決める前に、次の予定を資金繰り表へ反映させます。
1. 従業員へ説明する時期
2. 営業と受注を止める時期
3. 売掛金を回収する時期
4. 賃貸借契約を終える時期
5. 在庫や設備を処分する時期
6. 税金や借入を支払う時期
営業だけを先に止めると、入金が途絶えた後も家賃や人件費が残ります。解散日から清算結了までの資金を見通しておく必要があります。
解散と清算人の登記をおこなう
解散の登記は、解散の日から2週間以内に本店所在地でおこないます。会社法926条が定める期限です。
清算人の登記も、解散の日または清算人の選任日から2週間以内です。会社法928条1項および3項に規定されています。
任意解散に関係する登録免許税は、登録免許税法別表第一第24号で次のように定められています。
| 登記の内容 | 登録免許税 |
|---|---|
| 解散 | 3万円 |
| 清算人 | 9千円 |
| 清算結了 | 2千円 |
| 合計 | 4万1千円 |
4万1千円は、3件の登記にかかる登録免許税の合計です。官報公告の実費や、司法書士へ依頼する場合の報酬は含まれません。
清算中にも、家賃、保管料、原状回復費、廃棄費用などが発生する場合があります。税務申告を専門家へ依頼する費用も別に見積もります。
会社清算手続きに使える現金が不足するなら、資産を処分する前に支払能力を見直します。弁護士、司法書士、税理士などへ、担当する範囲を確認して進める形が考えられます。
官報公告と債権者への個別催告をおこなう
清算株式会社は、解散後遅滞なく、債権者に対して債権を申し出るよう官報で公告します。会社法499条1項に基づく手続きです。
債権を申し出る期間は、2か月を下回ることができません。また、会社が把握している債権者には、個別に催告します。
金融機関や日常的な取引先だけを確認すればよいわけではありません。契約書、請求書、総勘定元帳などから債権者を洗い出します。
対象になりうるものには、次のような債務があります。
- 仕入先への買掛金
- 外注先への未払金
- 従業員への未払賃金
- 賃貸借契約上の債務
- リースや割賦の残額
- 税金と社会保険料
- 係争中の請求
- 原状回復などの将来債務
金額が確定していない債務も見落とせません。契約終了後に請求される費用や、損害賠償請求の可能性も確認します。
債権者一覧は、清算できるかを判断する基礎資料でもあります。債務を漏らしたまま残余財産を分配すると、後から問題になるおそれがあります。
資産換価から清算結了まで進める
清算人は、会社が持つ債権を回収し、在庫や設備などを換価します。その資金から債務を弁済し、残った財産があれば株主へ分配します。
資金不足が疑われる場面では、一部の債権者だけへ返済する行為に注意が要ります。ほかの債権者との公平性が問題になる場合があるためです。
会社資産を経営者や関係者へ不当に安く売る行為も避けます。清算を考え始めたら、次の行動を独断で進めないようにしてください。
- 会社資金を個人口座へ移す
- 帳簿や契約書を処分する
- 資産を無償で譲り渡す
- 一部の借入だけを返済する
- 在庫を著しく安く売却する
債務を弁済した後に残余財産があれば、株主へ分配します。分配額には、みなし配当や株式等の譲渡所得等として扱われる部分が生じる場合があります。
清算事務が終わったら、決算報告について株主総会の承認を受けます。清算結了の登記は、その承認日から2週間以内です。会社法929条1号に定められています。
通常清算の標準期間を裁判所が公表しているわけではありません。ただし、債権申出期間だけでも2か月以上あります。資産処分や債権回収に時間がかかれば、清算結了も後ろへ延びます。
借入と連帯保証を会社清算と分けて考える
会社の解散だけで借入は消えない
会社を解散しても、借入金や未払金は残ります。解散決議には債務を免除する効果がないからです。
通常清算では、会社の資産を換価し、借入を含む債務を弁済します。返済原資が足りなければ、通常清算だけでは完了できない可能性があります。
会社と経営者の間にある貸し借りも確認します。経営者が会社へ貸したお金は、会社にとって債務です。会社が経営者へ貸した役員貸付金は、会社の債権として回収対象になりえます。
会社と個人の通帳を見比べ、資金の混在がないかも調べます。会社資産を個人で使っている場合や、個人の支出を会社経費にしている場合は、内容の整理が求められます。
借入の返済が難しいときは、経営者本人と、依頼を受けた弁護士等が法的な対応を担います。会計やM&Aの専門家は、財務資料や事業価値の説明資料を整える役割を担えます。
連帯保証は経営者個人との別契約である
民法446条による保証では、主たる債務者が履行しないとき、保証人が履行責任を負います。保証契約は書面でなければ効力を生じません。電磁的記録も書面とみなされます。
最初に確認したい資料は、保証契約書や保証書の写しです。次の内容を調べます。
- どの借入を保証しているか
- 保証人は誰か
- 保証する金額や範囲
- 担保が設定されているか
- 個人根保証に極度額があるか
民法454条により、連帯保証人は催告の抗弁と検索の抗弁を持ちません。
通常の保証人であれば、「先に主たる債務者へ請求してほしい」と主張できる場合があります。連帯保証人には、その権利がありません。
そのため、会社が返済できなくなれば、経営者個人へ請求が及ぶ可能性があります。会社の法人格が清算結了により消滅しても、連帯保証が自動的に終了するわけではありません。
詳しくは、廃業したら連帯保証はどうなる?残る理由と整理の道をご覧ください。
経営者保証ガイドラインの整理要件を確認する
「経営者保証に関するガイドライン」は、一定の要件を満たす場合に、保証債務の整理を求める枠組みを示しています。
全国銀行協会と日本商工会議所を事務局とする研究会が、平成25年12月5日に制定しました。運用開始日は平成26年2月1日です。
ガイドライン7.(1)では、保証債務の整理を申し出る保証人について、複数の要件を定めています。
主な内容は次のとおりです。
1. 保証契約が所定の要件を満たすこと
2. 会社について所定の整理手続が進んでいること
3. 債権者にも経済合理性が期待できること
4. 所定の免責不許可事由がないこと
2つ目の要件では、主たる債務者である会社が、法的債務整理手続または準則型私的整理手続を申し立てていることが求められます。手続きが係属中またはすでに終結している場合も含まれます。
法的債務整理手続には、破産、民事再生、会社更生、特別清算があります。準則型私的整理手続には、中小企業活性化協議会の再生支援スキーム、事業再生ADR、特定調停などが含まれます。
また、会社と保証人の資産・債務を総合的に見て、破産による配当より多くの回収を見込めるなど、債権者側にも経済合理性が期待されることが要件です。
早い段階で事業再生や事業清算へ着手した場合には、一定期間の生計費に相当する額や、華美でない自宅などを残存資産に含める検討も示されています。どの財産を残せるかは、個別の状況を踏まえて判断されます。
なお、法人と経営者の資産・経理の分離などは、ガイドライン4.(1)が示す「保証を求めない融資」の論点です。保証債務の整理を扱う7.(1)の要件とは区別します。
M&Aでも保証解除は自動ではない
M&Aで会社や事業を譲ったとしても、連帯保証が自動的に外れるわけではありません。
株式譲渡では法人格が残るため、会社の借入も原則として会社に残ります。事業譲渡では承継する資産や契約を選べますが、保証契約の処理は別に考えます。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン第3版」は、経営者保証の解除または引継ぎを、最終契約で取り決める共通の主要項目としています。
ただし、M&Aの当事者間で合意しても、金融機関との保証契約が自動的に消えるわけではありません。正式な解除や移行は、金融機関等の判断によります。
買い手の信用力が低い場合などは、解除や移行が円滑に進まないリスクもあります。契約条項だけでなく、買い手の資力や返済計画も確認する必要があります。
M&A支援機関協会は自主規制ルールを改正し、2025年1月1日から次の事項を定めています。
- 保証解除を求める条文案の設定
- 譲受け事業者の資力調査
- 成立後のリスク事項の説明
また、特定事業者リストは2024年10月1日に運用を開始しました。M&A取引の実行日から60営業日以内に保証が解除されない場合、不適切な譲受け事業者として掲載対象になりうる仕組みです。
これらは別々の制度であり、開始時期も異なります。制度が整備されても、金融機関の同意が不要になるものではありません。
清算・法的整理・M&Aを比較する判断軸


事業価値が残っているかを確かめる
債務超過であっても、事業価値まで失われているとは限りません。
継続的な顧客、従業員、許認可、設備、技術、地域での信用などを買い手が評価する場合があります。赤字や借入の多さだけで、M&Aの可能性が決まるわけではありません。
当社が支援して成約した案件には、運送業で売上1億円台、債務超過3,000万円規模、従業員10名前後の会社があります。
また、売上5億円規模で、借入が売上を上回る運送会社の成約例もあります。いずれも過去の事例であり、同じ財務状態なら同じ結果になるという意味ではありません。
財務概要が残る9件では、およそ3分の2が債務超過でした。一方、純資産がプラスの会社も成約しています。
買い手が検討する要素には、次のものがあります。
- 継続している顧客や契約
- 従業員と有資格者
- 許認可や営業基盤
- 設備と事業拠点
- 採算改善の余地
- 買い手との相乗効果
債務超過企業の買い手探しは、債務超過の会社を買ってくれる会社の探し方で解説しています。
清算とM&Aでは資産の見方が変わる
通常清算では、会社の資産を個別に換価して債務の弁済へ充てます。設備や在庫は、中古品や処分品として評価されることがあります。
M&Aでは、資産を事業の一部として評価します。設備単体の売却価格が低くても、顧客、従業員、契約と組み合わせれば事業価値が生じる場合があります。
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| 判断軸 | 清算 | M&A |
|---|---|---|
| 事業 | 終了 | 承継の余地 |
| 従業員 | 雇用終了を検討 | 引継ぎの余地 |
| 資産 | 個別に換価 | 事業として評価 |
| 借入 | 弁済・整理 | 条件を設計 |
| 保証 | 別途整理 | 解除を目指す |
清算は、債務を支払える会社が関係を整理して終える方法です。M&Aは、買い手が見つかり、条件が整う場合に事業を残す方法となります。
どちらが適するかは、従業員や取引先への影響も含めて判断します。清算では雇用や契約が終わる可能性があります。M&Aでは引継ぎの余地がありますが、すべてを承継できるとは限りません。
株式譲渡と事業譲渡の違いを押さえる
株式譲渡では、株主が変わっても会社の法人格は残ります。資産、負債、契約、従業員との関係も原則として会社に残ります。
買い手は会社全体を引き継ぐため、簿外債務や偶発債務を詳しく調べる傾向があります。
事業譲渡では、譲渡する資産や契約を選べます。一方、契約の移転、対抗要件の具備、許認可の取得など、個別の作業が発生します。
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| 比較項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 法人格 | そのまま | 譲渡元に残る |
| 承継範囲 | 会社全体 | 個別に選ぶ |
| 借入 | 会社に残る | 個別に整理 |
| 許認可 | 原則会社に残る | 再取得等を確認 |
事業譲渡なら債務が動かない、と単純に考えることはできません。
譲受会社が譲渡会社の商号を続けて使用する場合、会社法22条1項により、譲受会社が事業から生じた債務を弁済する責任を負うことがあります。
同条2項では、譲受会社が責任を負わない旨を遅滞なく登記するか、譲渡会社と譲受会社の双方から第三者へ通知する扱いが定められています。
また、残存債権者を害すると知って事業を譲渡した場合、会社法23条の2により、譲受会社へ請求が及ぶ可能性があります。債務だけを不当に残す設計は避けなければなりません。
費用と資金の残り方を比べる
通常清算では、登録免許税のほか、官報公告、登記、税務申告、資産処分、原状回復などに費用がかかります。
法人破産では、裁判所へ納める費用と弁護士費用を考えます。東京地方裁判所の令和8年1月1日版資料では、法人の自己破産申立手数料は1,000円です。
弁護士を代理人とする自己破産申立ての管財事件では、予納金基準額は最低20万円です。これに法人1件あたり16,264円が加わり、予納郵券4,950円もかかります。
この金額は裁判所へ納める分です。弁護士費用は別途かかります。弁護士費用には全国一律の報酬基準がなく、事務所や事案によって料金体系が異なります。
また、裁判所へ納める金額も事案に応じて変更される場合があります。本人申立てや債権者申立ての管財事件は、別の基準です。
あさひ国際会計株式会社への相談は無料です。着手金はなく、成功報酬のみとなります。M&Aの報酬は、成約時に譲渡代金の中から精算します。そのため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。
M&Aは買い手が見つからなければ成約に至りません。費用だけで方向を決めず、清算に使える現金と、事業を譲った場合の条件を比べます。
判断前に整える資料と専門家の役割
会社と個人の資料を分けて集める
相談時点ですべての資料がそろっていなくても構いません。手元にある資料から、会社分と個人分を分けて整理します。
会社に関する主な資料は、次のとおりです。
- 直近の決算書
- 最新の試算表
- 預金通帳
- 資金繰り表
- 借入返済予定表
- 売掛金と買掛金の一覧
- 従業員と給与の一覧
- 賃貸借やリースの契約書
- 許認可に関する書類
経営者個人については、次の資料を確認します。
- 保証契約書や保証書
- 個人資産の一覧
- 住宅ローンなどの債務
- 会社との貸し借り
- 担保設定の資料
保証書が見つからない場合は、どの借入へ署名した記憶があるかを書き出します。資料の所在が分からないことも、相談時に伝える情報です。
直近の支払予定を時系列にする
会社を清算するか検討している間も、支払日は近づきます。月末までの残高だけではなく、日ごとの入出金を確認します。
少なくとも、次の支払予定を日付順に並べます。
1. 従業員の給与
2. 仕入先や外注先への支払い
3. 借入金の返済
4. 税金と社会保険料
5. 賃料とリース料
6. 手形や小切手の決済
支払いを続けられる期間が分かれば、清算、法的整理、M&Aを比べる時間も見えます。
経営判断への迷いや、相談への恥ずかしさを感じる方もいます。しかし、会社の出口について相談する経営者は珍しくありません。
従業員、家族、取引先への影響を小さくするには、資金が尽きる前に現状を数字にすることが大切です。説明を先送りするより、判断材料を整えることが、関係者へ向き合う最初の行動になります。
専門家ごとの担当領域を確認する
会社清算手続きには、法律、登記、税務、会計、事業承継が関係します。専門家ごとに扱う領域が異なります。
| 専門家 | 主な領域 |
|---|---|
| 弁護士 | 法的整理・法的助言 |
| 司法書士 | 会社の登記 |
| 税理士 | 税務申告・税額確認 |
| M&A支援機関 | 譲渡設計・仲介 |
| 会計専門家 | 財務資料の整理 |
破産手続きを主に扱う専門家と、事業を残す前提の再生を扱う専門家では、得意分野が異なります。
相談先を選ぶときは、次の事項を確認してください。
- 債務超過企業を扱った経験
- 連帯保証も確認するか
- 法的整理も比較対象にするか
- 報酬と支払時期を説明するか
- 誰が各業務を担当するか
- 法人情報を公開しているか
状況によっては、法的整理が適切な場合もあります。M&Aだけを前提にせず、会社の支払能力と事業価値の両方を確認する姿勢が欠かせません。
あさひ国際会計株式会社が担う範囲
あさひ国際会計株式会社は、再生型M&Aを専門としています。連帯保証の解除を見据えたスキームの提案と、赤字・債務超過企業のM&A仲介をおこなっています。
金融機関との協議に使う資料の整備、事業価値の説明資料の作成、M&Aの条件設計を通じて、経営者ご本人の協議を支えます。法的な交渉や手続きは、経営者本人と、委任を受けた弁護士等が担います。
これまで成約に至った案件では、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。ただし、金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。
当社には、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。赤字・債務超過案件はおおむね2〜4週間で、相談した月のうちに成約することがほとんどです。相談から最短5日でクロージングした実績もあります。
これらは過去の実績であり、個別案件の成約時期を約束するものではありません。資料の状態、買い手候補、金融機関の判断などにより進み方は変わります。
当社は、中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録しています。中小M&Aガイドライン第3版に対応した登録支援機関です。
法人番号は6010501044373です。国税庁の法人番号公表サイトで、所在地を含む法人情報を確認できます。
よくある質問
会社清算手続きは経営者だけで進められますか
株主総会の開催や、経営者が清算人へ就任することはできます。ただし、登記、債権者への公告、債務の弁済、税務申告などが重なります。債務超過や支払不能の疑いがある場合は、弁護士、司法書士、税理士等へ担当範囲を確認して進める形が考えられます。
借入金が残っていても通常清算できますか
会社の資産や債権回収により、借入金を含む債務を処理できるなら、通常清算を進められる可能性があります。資産で支払えない場合は、特別清算や破産などを検討します。帳簿価格ではなく、実際の換価額と支払時期で判断します。
清算中に債務超過の疑いが出たらどうすればよいですか
資産の換価見込額と未払債務を見直し、不足額を整理しましょう。清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人の申立義務が会社法511条2項に定められています。一部の返済や資産処分を独断で進める前に、弁護士へ対応を相談することが考えられます。状況によっては法的整理(破産・清算)が適切な場合もあります。
会社を清算すれば連帯保証も終わりますか
会社の清算だけで連帯保証が自動的に終わるわけではありません。連帯保証は金融機関等と経営者個人との契約です。保証書、借入残高、担保、個人資産を確認し、保証債務の整理やM&Aにともなう解除を別の論点として検討します。
清算とM&Aはどちらから検討しますか
顧客、従業員、許認可、設備などの事業価値が残っているなら、資産を処分する前にM&Aの可能性を確認する余地があります。買い手が見つからない場合や法的整理が適切な場合もあるため、同じ財務資料を使って清算とM&Aを並行して比べる方法があります。
まとめ
会社清算手続きは、営業を止めるだけでは完了しません。株主総会での解散決議、清算人の登記、債権者への公告と個別催告、債務の弁済、残余財産の分配、清算結了へ進みます。
債権の申出期間は2か月以上です。解散、清算人、清算結了の登記にかかる登録免許税は、合計4万1千円です。官報公告や専門家報酬、清算中の固定費などは別に発生します。
会社の資産で債務を支払えない場合、通常清算だけを前提にはできません。特別清算や破産などの法的整理と、事業を残すM&Aを比較します。
また、会社を清算しても、経営者の連帯保証が連動して消えるわけではありません。会社の債務、個人の保証、事業価値を分けて整理してください。
資産や人材を失う前なら、複数の選択肢を比べられる可能性があります。決算書や保証書がそろっていなくても、預金残高と直近の支払予定から整理を始められます。
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この記事を書いた人
あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
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最終更新日: 2026年9月12日