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個人保証の解除は、仲介の「標準サービス」ではありません
会社の売却を検討し始めたとき、頭から離れないのが個人保証(経営者保証・連帯保証)のことではないでしょうか。「M&A仲介会社に頼めば、この保証も一緒に片づけてもらえるはず」と考えるのは自然なことです。
ただ、先に結論をお伝えします。M&A仲介会社の業務範囲に、個人保証の解除まで含まれているとは言い切れるほど単純ではありません。買い手探しや条件交渉が中心の会社もあれば、保証解除の実務まで伴走する会社もあり、その差は契約前に確認しないと見えてこないのが実情です。この記事では、依頼する前にどこを見て判断すればよいかを整理します。
なお、連帯保証の解除そのものの相談先については、連帯保証解除の相談は会計事務所へで詳しく触れています。今回は一歩手前、「仲介会社をどう見極めるか」に絞ってお伝えします。
M&A仲介会社の業務範囲は、どこまでか

M&A仲介会社の中心業務は、買い手候補の探索、条件交渉の仲立ち、デューデリジェンス(買収監査)の日程調整、契約書の取りまとめといった、譲渡そのものを成立させる工程です。ここまでは、多くの仲介会社が明確に担っています。
一方で、経営者保証がついている借入金をどう扱うかは、最終的に金融機関との協議事項になります。この協議を仲介会社がどこまで担うかは会社によって幅があり、「契約成立まで」を業務範囲と定義し、保証解除の協議自体は範囲外としているケースもあります。
会社が売れても保証だけが取り残されてしまう構図については、会社を売却しても連帯保証が外れない理由で背景を解説しています。仲介契約を結ぶ前に、この「範囲の境目」を確認しておくことが、後悔しないための分かれ目になります。
依頼前に確認したい5つの質問

仲介会社との初回面談やセカンドオピニオンの場で、次の5つを聞いてみてください。回答の具体性で、その会社が保証解除にどこまで向き合っているかがある程度見えてきます。
| 確認したい質問 | 見るべきポイント |
|---|---|
| ①保証解除まで支援する業務範囲になっているか | 契約書のどの条項に、いつまでに何をするかが書かれているか |
| ②過去に保証解除まで到達した実績があるか | 件数や状況を、抽象的にではなく具体的に説明できるか |
| ③金融機関との協議は誰が主導するのか | 仲介会社なのか、売り手側の顧問税理士・会計事務所なのか、役割分担が明確か |
| ④弁護士など他の専門家との連携体制があるか | 必要な場面で外部専門家につなぐ導線が用意されているか |
| ⑤着手金と成功報酬の内訳はどうなっているか | 保証解除が実現しなくても着手金は戻らないのか、成功の定義は何か |
この5つに淀みなく答えられる仲介会社は、保証の扱いを「後回しの課題」ではなく、譲渡条件の一部として最初から織り込んでいる可能性が高いといえます。逆に、①や③の質問に曖昧な返答しか返ってこない場合は、契約後に想定外の展開になりやすい点に注意が必要です。
2025年1月から、連帯保証解除は「業界ルール」に
M&A業界の自主規制団体であるM&A仲介協会(現・M&A支援機関協会)は、2025年1月から、買収後に売り手経営者の連帯保証を解除するよう買い手に義務付ける条文を最終契約書に盛り込むルールを導入しています。契約どおりに解除が行われない場合は調査のうえ「特定事業者リスト」に登録し、加盟社に注意喚起する仕組みも設けられました(日本経済新聞の報道)。
同協会が公開している自主規制ルールでは、契約重要事項説明規程の中に「経営者保証解除に関するサンプル条項」が用意されており、中小企業庁のガイドラインをもとに作成されたひな形が参照可能な形で示されています。ルール自体は業界内に整いつつある段階です。
ただし、ルールが整うことと、個々の案件で実際に保証が外れることは別の話です。金融機関が最終的に見ているのは、返済の見通しが立つかどうかという数字の裏付けであり、そこには財務分析とM&Aの実務の両方が必要になります。ルールを知っているかどうかと、実務として外せるかどうかは分けて考えたほうが良さそうです。経営者保証ガイドラインをM&Aでどう活用するかについては、経営者保証ガイドラインのM&A活用法で詳しく取り上げています。
保証について定めた基本文書そのものは、全国銀行協会の経営者保証に関するガイドラインで確認できます。廃業時の考え方や事業承継時の特則もここにまとまっています。また、金融機関側の実務対応事例は、金融庁の経営者保証に関する事例集で公表されています。
仲介・FA・会計事務所、役割の違いを整理する
M&Aに関わる専門家には、大きく3つの立場があります。仲介会社は買い手・売り手の両方に立ち、譲渡の成立に向けて調整を行います。FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は片方の当事者の代理人として、条件面での利益を追求します。会計事務所は、財務状況の整理や決算書の裏付けづくり、金融機関との関係整理といった、保証解除の土台となる数字の部分を担うことが多い立場です。
保証解除は、この3者のうち誰か一人だけで完結するものではなく、対応できる専門家が実務上限られている分野でもあります。弁護士に相談したところ自己破産を勧められた、他のM&A仲介会社に相談したものの断られた、という状態から相談にいらっしゃる経営者の方も少なくありません。実績の有無がものを言う領域だと感じています。
よくある質問
仲介に任せれば、個人保証も外れますか?
仲介会社に依頼したことで自動的に個人保証が外れる、とは言い切れるほど単純ではありません。保証解除は買い手の資力や金融機関との関係整理の状況によって結果が変わるため、契約前に業務範囲として明記されているかを確認することが出発点になります。
着手金を払ったのに、保証解除の話が進みません
着手金の対象範囲が「譲渡の成立まで」なのか「保証解除まで」なのかを、契約書の文言に立ち返って確認してください。範囲外だった場合は、金融機関との協議を主導する担当者を改めて明確にすることが次の一歩になります。
契約後でも、保証解除を交渉できますか?
2025年1月からの業界ルールにより、最終契約書に保証解除の条文が盛り込まれているケースでは、契約後も買い手に履行を求める根拠が残ります。ただし条文の有無や内容によって対応は変わるため、契約書の該当箇所を早めに確認しておくことをおすすめします。
保証解除まで含めて相談したいときは、どこに相談すればいいですか?
保証解除は財務の裏付けとM&Aの実務が絡み合う分野のため、会計とM&Aの両方を扱う専門家に早い段階で相談する方法があります。あさひ国際会計では、再生型M&Aと経営者保証の解除支援を専門に扱っており、相談は無料・秘密厳守です。電話03-5657-7496(平日9:00〜19:00)、またはお問い合わせフォームから状況をお聞かせください。
まとめ
M&A仲介会社に依頼したからといって、個人保証の解除まで含まれているとは限りません。業務範囲、実績、金融機関協議の担当、専門家連携、費用の内訳という5つの質問を契約前にぶつけてみることが、後で「話が違う」と感じないための備えになります。2025年1月からの業界ルールで方向性は整いつつありますが、実務として外せるかどうかは会社ごとの実績差が出やすいところです。
保証解除まで見据えた仲介選びに迷ったときや、すでに他社に相談して思うような回答が得られなかったときは、一度状況を整理してみませんか。電話03-5657-7496(平日9:00〜19:00)、またはお問い合わせフォームからご連絡ください。
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あさひ国際会計株式会社は、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録された支援機関です(登録支援機関による支援は、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)の補助対象とされています)。
執筆: あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢(再生型M&A・連帯保証解除支援の専門家。NHKスペシャル、週刊ダイヤモンドなどメディア掲載多数)
最終更新日: 2026年7月20日