買い手が保証の引き受けを渋るのには、理由があります

M&Aの交渉が大詰めに入ってから、「連帯保証は売り手のまま外れない」と言われて手が止まる。そんな相談を数多くお受けしています。結論から言うと、買い手が個人保証(連帯保証)の引き受けに消極的なのには、買い手なりの事情があります。その事情を外したまま「外してほしい」と迫っても、交渉は前に進みにくいのが実情です。

まず整理しておきたいのは、なぜ会社を売っても保証が自動的に外れないのか、という点です。この仕組み自体は別記事会社を売却しても連帯保証が外れない理由で詳しく取り上げています。ここでは、その先にある「買い手側の事情」と「交渉の進め方」に絞って整理します。

買い手が個人保証を引き受けたがらない4つの理由

買い手が個人保証の引き受けを渋る4つの理由の図解

買い手企業の担当者や経営者も、好んで保証を拒んでいるわけではないケースがほとんどです。多くの場合、次のような事情が背景にあります。

買い手が渋る理由 買い手側の事情
自社のバランスシートへの影響 保証を引き受けると、買い手自身の与信枠や既存借入の条件に影響しかねないと考えている
対象会社の返済力への確信不足 引き継いだ直後の会社が、想定通りにキャッシュフローを生むか見極めがついていない
金融機関が買い手の保証で了承するとは限らない 保証人の差し替えは金融機関の審査事項であり、買い手が了承しても銀行が応じるとは限らない
M&A契約に保証解除条項がない 契約書に解除の手続きや期限が明記されていないと、実務上は「協議事項」のまま止まりやすい

これらは、買い手の誠意の問題というより、買い手自身が抱えるリスクや、金融機関という第三者が関わる構造上の事情です。ここを理解しておくと、次に何を準備すればよいかが見えてきます。

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買い手にとっての「引き受けやすい条件」を作る

買い手が保証を引き受けにくいのは、多くの場合「見通しが立っていない」ことが原因です。逆に言えば、見通しを数字で示せれば、交渉のテーブルに乗りやすくなります。

  • 返済計画の見通しを具体的に示す:引き継ぎ後の資金繰り表や返済スケジュールを、買い手・金融機関の双方が確認できる形で用意しておく
  • 引き継ぎ後の収益改善策を提示する:買い手が実行予定のコスト削減や取引先整理などを、返済原資の裏付けとして説明する
  • 保証を伴わない借換の可能性を探る:既存の借入を、経営者保証に依存しない融資条件へ借り換えられないか、金融機関に相談してみる
  • 信用保証協会の制度を活用する:事業承継の場面で経営者保証を不要とする保証制度が用意されています。詳細は全国信用保証協会連合会の事業承継ページで確認できます

こうした条件整理は、経営者保証ガイドラインが想定している考え方とも重なります。ガイドラインをM&Aの場面でどう活かすかは経営者保証ガイドラインのM&A活用法でも取り上げています。ガイドラインの原文は全国銀行協会の特設ページで公開されています。

交渉は「売り手→買い手→金融機関」を同時に動かす順番で

売り手・買い手・金融機関の三者を同時に動かす保証解除の進め方の図解

保証解除の交渉は、当事者が売り手・買い手・金融機関の3者にまたがるという点で、単純な価格交渉とは性質が異なります。売り手だけ、買い手だけで話を進めても、最終的に判断するのは金融機関だからです。

理想的なのは、契約前の段階で「保証解除をどう扱うか」を条項として盛り込んでおくことです。解除の期限や、解除できなかった場合の対応(価格調整や分割払いなど)を先に決めておくと、成約後に協議が宙に浮きにくくなります。

すでに契約を終えている場合でも、協議自体は成約後から始めることができます。金融庁も経営者保証ガイドラインの活用実績や取組事例を公開しており、廃業・事業承継の場面での対応方針を確認できます(金融庁:経営者保証に関する施策)。ただし成約後は交渉のカードが売り手側に少なくなりやすいため、契約書に条項として先に入れておく方が望ましい、という点は押さえておきたいところです。

それでも動かないときに検討したい4つの選択肢

買い手・金融機関のいずれかが動かず、交渉が長引くこともあります。その場合に検討されることが多いのが、次のような選択肢です。

1. 借換:保証を求めない金融機関や制度融資への借り換えを探る
2. 第三者による返済:買い手や第三者が対象の借入を一括または分割で返済し、保証自体を消滅させる
3. 経営者保証ガイドラインに基づく整理:弁護士など専門家と連携し、ガイドラインの手続きに沿って保証債務の整理を進める
4. 条件付きの譲渡価格調整:保証解除が進むまでの間、譲渡価格の一部を留保・調整する形で折り合いをつける

どの選択肢も、対象会社と買い手の財務状況、金融機関との関係性によって向き不向きがあります。中小企業活性化協議会のような公的機関の窓口相談を、事前に挟んでおくのも一つの方法です(中小機構:中小企業活性化協議会)。

よくある質問

契約書に保証解除を条件として書けますか?

書くこと自体は可能です。ただし「解除する」と一方的に書いても実効性は乏しく、期限・手続き・解除できなかった場合の対応まで具体的に定めておくことが実務上のポイントになります。契約前の段階で条項化しておくほうが、成約後に協議するより動かしやすい傾向があります。

買い手を変えたほうがいいですか?

保証の引き受けに消極的というだけで、買い手を変える必要があるとは限りません。返済計画や収益改善策を数字で示すことで態度が変わるケースも多く、まずは条件面の整理を優先したほうがよい場合がほとんどです。

金融機関に直接頼んでもいいですか?

売り手や買い手が直接、金融機関に相談すること自体は可能です。ただし返済の見通しや数字の裏付けが伴わないまま依頼しても、審査が前に進まないことが多いのが実情です。財務資料を整理したうえで臨むほうが話が早いことが多くあります。

交渉に入ってもらえますか?

あさひ国際会計株式会社では、再生型M&Aと経営者保証の解除支援を専門に、年間60件以上の相談に対応しています。弁護士から自己破産を勧められた方、他のM&A仲介会社で断られた案件のご相談も少なくありません。制度を知っていることと、実務として金融機関の審査を通せることは別物であり、対応できる専門家が限られる分野でもあります。財務とM&A実務の両面から、弁護士など専門家と連携しながら支援します。相談は無料で、秘密は厳守します。

まとめ:交渉は「実務として動かせるか」で決まる

買い手が個人保証の引き受けを渋るのには、バランスシートへの影響や返済力への不安、金融機関の審査という、買い手だけでは動かせない事情が絡んでいます。感情的に「外してほしい」と迫るのではなく、返済計画や収益改善策を数字で示し、契約条項として先に定め、売り手・買い手・金融機関の3者を同時に動かす、という順番で進めることが交渉を前に進めます。

それでも交渉が止まってしまう場合は、借換や第三者返済、ガイドラインに基づく整理、価格調整といった選択肢も並行して検討しておきたいところです。連帯保証を解除する具体的な方法については連帯保証を解除する方法4つでも整理しています。

お一人で抱え込まず、まずは状況を整理するところから始めてみませんか。お電話(03-5657-7496、平日9:00〜19:00)、またはお問い合わせフォームからご連絡ください。相談は無料で、秘密は厳守します。

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進め方を具体的に知りたい方は、次にこちらをご覧ください。

連帯保証の解除合意書とは?経営者保証を外す条項と手続きの注意点

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あさひ国際会計株式会社は、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録された支援機関です(登録支援機関による支援は、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)の補助対象とされています)。

この記事を書いた人

あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を伴う再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介に携わっています。
NHKスペシャル・週刊ダイヤモンドなどメディア掲載多数。
他社で断られた案件のご相談も承っています。ご相談は無料です。
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最終更新日: 2026年8月17日

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