目次
この記事の対象と結論
この記事は、資金繰りが厳しく、30日以内にクリニックの閉院を判断する院長を対象としています。従業員に何を支払うのか、退職金まで用意できるのか。借入や連帯保証も抱え、誰にも相談できずにいる方へ向けた内容です。
結論からいえば、閉院を決める前に、従業員ごとの支払額と支払日を確認する必要があります。退職金の有無は、就業規則や退職金規程、雇用契約などで異なるためです。
同時に、閉院だけでなく、事業譲渡や、医療法人では定款・持分の定めに応じた出資持分の譲渡または社員の交代によって、診療体制と雇用を残せないかも検討します。閉院費用に資金を使った後では、選択肢が狭くなりかねません。
経営が苦しい段階で相談する院長は珍しくありません。孤立したまま結論を急がず、従業員、借入、連帯保証を一つずつ切り分けてください。
閉院を決める前に従業員への責任を整理する
閉院しても雇用上の支払義務は消えない
クリニックを閉院しても、それまでに発生した給与などの支払義務がなくなるわけではありません。閉院日だけを決めても、従業員対応は終わらないのです。
労働基準法24条では、賃金を通貨で、直接労働者に、全額支払うことを原則としています。また、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うことも求めています。
資金繰りが厳しいと、次の支払いを一括して考えがちです。
- 通常の給与
- 時間外勤務などの未精算分
- 退職時までに発生する賃金
- 規程にもとづく退職金
- その他の契約上の支払い
しかし、それぞれ根拠と支払時期が異なります。まずは従業員ごとの金額を分けて計算してください。
退職者から請求があった場合、労働基準法23条では、7日以内に賃金を支払うこととされています。金額に争いがあっても、異議のない部分は同じ期限内の支払いが必要です。
「閉院後に資産を売ってから払う」という予定では、資金化が間に合わないおそれがあります。閉院日から逆算し、現預金を確保することが欠かせません。
退職金が発生するかは規程と契約で確認する
退職金は、すべてのクリニックで一律に発生するものではありません。院内で採用している制度や約束を確認して判断します。
確認する資料は次のとおりです。
1. 就業規則
2. 退職金規程
3. 雇用契約書
4. 労働条件通知書
5. 過去の退職者への支給記録
6. 給与明細や賃金台帳
退職金規程がある場合は、支給条件、計算方法、支払時期を確認します。「勤続年数に応じて支給する」と定めているなら、閉院による退職にも適用されるかを読み取らなければなりません。
規程が見当たらなくても、過去に同じ基準で支払いを続けている場合があります。口頭で支給を約束していたケースもあるため、書類がないことだけで判断しないほうが安全です。
一方、院長が従業員への配慮として任意に支払う金銭と、規程にもとづく退職金は分けて考えます。資金が限られるときほど、法的・契約上の支払いと任意の支払いを混同しないことが大切です。
判断が難しい場合は、社会保険労務士や弁護士などに資料を見せて確認します。あさひ国際会計株式会社では、閉院と事業譲渡の比較、資金繰りの整理、M&Aの条件設計を担当します。個別の労務判断は、必要に応じて依頼する専門家が担います。
正職員とパートを一括りにしない
クリニックでは、医師、看護師、受付、医療事務などが異なる条件で働いています。正職員だけでなく、パートや有期雇用の従業員がいることも少なくありません。
確認すべき内容は従業員ごとに異なります。
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| 確認項目 | 主な資料 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 雇用区分 | 雇用契約書 | 正職員・有期など |
| 賃金 | 賃金台帳 | 未精算額 |
| 退職金 | 退職金規程 | 対象者と計算式 |
| 退職時期 | 閉院計画 | 最終勤務日 |
「全員に同じ説明をすればよい」と考えると、契約内容とのずれが生じます。まず一覧表を作り、個別の条件を確認してください。
従業員への説明前に、金額を確定できないこともあります。その場合は、確定している事実と未確定の事項を分けます。未確定の内容を約束すると、後から修正しにくくなるためです。
伝える順番と時期で混乱を減らす
閉院の話が院内に伝わると、従業員は生活への不安を抱えます。給与や退職金だけでなく、次の勤務先を探す時間も必要になるでしょう。
一方、計画が固まる前に断片的な情報が広がると、退職が連鎖するおそれがあります。診療体制を維持できず、予定より早く事業が止まることも考えられます。
説明前に、少なくとも次の内容を整理します。
- 閉院予定日
- 最終勤務日の考え方
- 給与の支払予定
- 退職金の有無と確認状況
- 各種書類の交付予定
- 問い合わせを受ける担当者
説明では、閉院が検討段階なのか、決定済みなのかを明確にします。従業員ごとに異なる金額は、全体説明の場で断定せず、個別に伝える形が適しています。
従業員への配慮と、事業価値の維持は対立するものではありません。正確な説明の準備が、混乱を減らし、患者への診療体制を守ることにもつながります。
退職金を含む閉院資金をどう確保するか
30日以内に作る従業員別の支払一覧
閉院を検討したら、月次の試算表だけで判断しないでください。従業員への支払いを含めた、閉院時点の資金繰り表が必要です。
最初に、従業員ごとに次の項目を整理します。
1. 現在までの未払給与
2. 閉院日までに発生する給与
3. 未精算となっている手当
4. 退職金の見込額
5. 支払予定日
6. 算定根拠となる資料
そのうえで、金融機関への返済、税金、社会保険料、家賃などを別の表にします。すべてを一つの残高だけで見ると、従業員に残すべき資金を誤って返済や仕入れに使いかねません。
「今月を乗り切れば何とかなる」という見通しだけでは足りません。閉院までの診療収入が想定を下回った場合も試算します。
保険診療の入金時期と、毎月の給与支払日がずれている場合は、帳簿上の売上があっても現金が足りなくなる可能性があります。売上ではなく、実際の入出金日をもとに判断してください。
退職金を後回しにする前に支給条件を確定する
資金が不足すると、給与を先に払い、退職金は後で考えようとしがちです。しかし、支給条件や支払時期が規程に定められているなら、院長の判断だけで変更できるとは限りません。
まず、次の三つに分けます。
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| 区分 | 例 | 対応 |
|---|---|---|
| 金額確定 | 計算済みの給与 | 支払資金を確保 |
| 算定必要 | 規程上の退職金 | 個別に計算 |
| 判断必要 | 任意の加算金 | 資金を見て検討 |
退職金の計算に勤続年数や基準給与を使う場合は、基準日をそろえます。閉院日と最終勤務日が異なると、計算結果に影響することがあるためです。
資金が足りない場合も、根拠を確認せずに一律減額するのは避けるべきです。どの支払いが契約上発生しているのかを確定し、弁護士や社会保険労務士と対応を検討します。
院長個人の生活費まで会社や医療法人に戻して支払うべきか、という問題もあります。借入の連帯保証がある場合、個人資産の扱いは保証債務にも関係します。従業員への思いだけで資金を動かさず、全体像を確認してください。
給与が払えない場合の立替払制度
事業主が倒産し、給与や退職金が未払いになったときは、未払賃金立替払制度の対象になる場合があります。労働者健康安全機構が、一定の条件のもとで未払賃金の一部を立て替える制度です。
立替払額は、未払賃金総額の80%です。ただし、退職日の年齢に応じて上限があります。
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| 退職時の年齢 | 未払賃金の上限 | 立替払の上限 |
|---|---|---|
| 45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
| 30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
| 30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
対象となる賃金は、定期賃金と退職手当です。賞与は含まれません。解雇予告手当、賃金の延滞利息、税金の還付金、慰労金なども対象外です。
未払賃金の総額が2万円未満の場合も対象になりません。制度を利用できても全額が補われるわけではない点に注意が必要です。
対象となる事業主は、労災保険の適用事業として1年以上事業活動をしていた事業主です。対象労働者の退職時期や請求時期にも条件があります。
法律上の倒産では、破産管財人等が未払賃金額などの証明書を交付します。事実上の倒産では、労働基準監督署長による認定など、別の手続きが必要です。
制度があることを理由に、支払資金を残さなくてよいわけではありません。従業員が受け取れるのは一定割合であり、申請にも条件と時間がかかります。利用の可能性は、弁護士や社会保険労務士と早めに確認してください。
借入返済より先に全体の資金表を作る
返済日が迫ると、手元資金を金融機関への返済に回したくなります。しかし、その結果として給与や退職金の原資がなくなる可能性があります。
反対に、すべての現預金を従業員への任意の支払いに回すと、閉院手続きや専門家への依頼に必要な資金が不足するかもしれません。法人破産を選ぶ場合には、裁判所へ納める費用に加え、弁護士費用も必要です。
したがって、支払いの優先順位を院長だけで決めるのではなく、次の資金を一つの表にまとめます。
- 従業員への支払い
- 診療継続に必要な支払い
- 税金と社会保険料
- 賃料やリース料
- 借入金の返済
- 閉院や法的整理の費用
- 院長個人の保証債務
資金不足が見込まれるときは、どの支払いをどのように扱うか、弁護士等の専門家による個別判断が必要です。支払先ごとに場当たり的な約束をする前に相談してください。
給与が止まりそうな段階の整理については、「給料が払えないかもしれない」も参考になります。
閉院とM&Aで従業員の扱いはどう変わるか
閉院では雇用終了と支払いを同時に考える
閉院は、診療をやめることだけを意味しません。従業員との雇用関係、設備、賃貸借契約、借入、連帯保証などを順番に整理する必要があります。
従業員については、雇用を終える時期と、金銭を支払う時期を同時に設計します。閉院日と最終勤務日を同じにできるとは限りません。
たとえば、診療終了後にも次の作業が残ります。
- 院内の書類整理
- 未収金や請求内容の確認
- 医療機器や備品の整理
- 患者への案内に伴う事務
- 賃貸物件の明渡し準備
誰に、どこまで担当してもらうのかを決めないまま全員の勤務を終えると、院長だけで閉院作業を抱えることになります。
一方、閉院作業のために勤務を延ばすなら、その期間の給与も資金計画に入れます。人員計画と資金計画を別々に作らないことが実務上の要点です。
医療法人固有の経営権移転では法人と雇用関係が残る
医療法人には株式会社のような株式はありません。経営権の移転には、定款・持分の定めに応じて、出資持分の譲渡または社員の交代という医療法人固有のスキームが用いられます。会社法上の株式譲渡とは法的性質や必要な手続きが異なります。
医療法人そのものが存続する場合、雇用主となる法人も存続するため、閉院して全員が退職する場合とは前提が異なります。ただし、診療方針や勤務条件、院長の交代など、従業員へ説明すべき事項は残ります。
未払給与や退職金債務についても、経営権移転の検討における確認対象になる可能性があります。
帳簿に未払額が正確に反映されていないと、調査の途中で条件が変わるおそれがあります。M&Aを検討する段階から、従業員別の支払一覧を整備しておく意味は大きいのです。
どの方法が可能かは、定款、持分の定め、社員構成、運営主体や許認可などによって異なります。クリニック固有の規制については、弁護士等の専門家による確認が必要です。
事業譲渡では雇用条件を個別に確認する
事業譲渡では、譲渡する資産や契約を選べます。中小M&Aガイドライン第3版では、承継対象財産を法人格から切り離せる一方、対象の特定や許認可の取得などが必要になると説明されています。
従業員の雇用についても、現在の契約が自動的に同じ条件で移ると考えないほうが安全です。誰が新しい運営者のもとで働くのか、勤務条件をどうするのかを個別に確認します。
検討事項は次のとおりです。
1. 引継ぎを希望する職種と人数
2. 従業員本人の意向
3. 新しい勤務条件
4. 現運営者が支払う給与
5. 退職金の精算方法
6. 入職日と退職日の関係
買い手候補に従業員情報を開示する際は、情報の扱いにも配慮が必要です。初期段階から氏名や個別給与を無制限に開示するのではなく、検討段階に応じた管理が求められます。
事業譲渡と医療法人固有の経営権移転の違いを含む判断軸は、廃業とM&Aの比較でも解説しています。
閉院決定前なら雇用を残せる余地がある
資金繰りが悪化していても、診療を続ける価値まで失われたとは限りません。患者との関係、立地、従業員の技能、設備などに価値を見いだす買い手が現れる可能性があります。
ただし、クリニックの譲渡には業種固有の確認が必要です。あさひ国際会計株式会社には、現時点で医療・調剤分野の成約実績はありません。そのため、医療分野の経験があると誤解させる説明はしていません。
当社が扱うのは、財務状況の整理、再生型M&Aの可能性の検討、買い手探索、条件設計などです。医療法務、労務、許認可に関する個別判断は、必要に応じて依頼する専門家が担います。
赤字や債務超過だけを理由に、M&Aを除外する必要はありません。当社が支援して成約した案件のうち、財務概要を確認できる9件では、およそ3分の2が債務超過でした。
これは医療分野の実績ではなく、他業種を含む当社案件の集計です。それでも、財務状態だけで事業価値を判断できないことは示しています。
債務超過企業の買い手探索については、債務超過の会社を買ってくれる会社の探し方をご覧ください。
借入と連帯保証を従業員問題から切り分ける

閉院しても連帯保証は自動的に消えない
クリニックを閉院し、従業員への給与や退職金を支払っても、借入の連帯保証が自動的に解除されるわけではありません。
民法446条では、保証人は主たる債務者が履行しないときに、履行する責任を負うと定めています。さらに連帯保証人には、民法452条の催告の抗弁と、453条の検索の抗弁がありません。
そのため、「まず法人へ請求してください」と主張できる通常の保証とは性質が異なります。会社や医療法人が返済できなくなれば、連帯保証人である院長に請求が及ぶ可能性があります。
従業員への責任と、金融機関への保証責任は別の契約にもとづきます。どちらか一方を処理すれば、もう一方も終わるという関係ではありません。
閉院と連帯保証の関係は、廃業したら連帯保証はどうなるかで詳しく解説しています。
M&A契約だけでは保証解除は完了しない
M&Aでは、経営者保証の扱いを最終契約で取り決めることが主要項目とされています。しかし、売り手と買い手が合意しただけで、金融機関との保証契約が消滅するものではありません。
中小M&Aガイドライン第3版では、保証の解除または移行は、最終的に金融機関等の判断によると説明されています。買い手の信用力などによっては、円滑に進まないリスクもあります。
M&A支援機関協会は、自主規制ルールを改正しました。2025年1月1日施行のルールでは、最終契約書の草案作成時に、経営者保証の解除を譲受け事業者へ義務付ける条文案を盛り込むことを定めています。
また、2024年9月には、広告営業規程の附則3項として、経営者保証解除に関するサンプル条項が公表されました。契約上の手当てが業界全体で重視されていることが分かります。
当社では、金融機関との協議に必要な資料の整備、事業価値の説明資料の作成、M&Aの条件設計をおこないます。金融機関との協議の主体は、経営者ご本人と、必要に応じて依頼する弁護士等です。
これまで当社で成約に至った案件では、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。ただし、金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。
経営者保証ガイドラインによる整理も分けて考える
経営者保証に関するガイドラインは、全国銀行協会と日本商工会議所を事務局とする研究会により制定された枠組みです。一定の要件を満たす場合に、保証債務の整理を申し出る道を示しています。
保証債務の整理には、主たる債務者が法的債務整理手続や準則型私的整理手続を申し立てていることなど、複数の要件があります。
また、主たる債務者と保証人の資産・債務を総合的に見て、破産手続による配当より多くの回収が見込めるなど、対象債権者にとって経済的合理性が期待できることも要件です。
「法人と個人の資産を分けていれば保証債務を整理できる」と単純化はできません。法人と経営者の明確な区分・分離などは、保証を求めない融資に関する項目であり、保証債務整理の要件とは別だからです。
法的整理が適切な場合もある
事業を譲れる可能性を確認することと、M&Aに固執することは異なります。診療を継続するほど債務や未払給与が増える状況では、早期に止める判断が必要になる場合もあります。
破産手続きを主に扱う専門家と、事業を残す前提の再生を扱う専門家では、得意分野が異なります。まず破産の説明を受けた場合でも、事業価値が残っているなら、再生型M&Aの可能性を確認する余地があります。
反対に、買い手候補が見込めない場合や、資金が尽きている場合などは、法的整理が適切なこともあります。従業員への影響を抑えるためにも、現実的な選択肢を比較してください。
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| 選択肢 | 雇用 | 退職金 | 連帯保証 |
|---|---|---|---|
| 任意の閉院 | 原則終了を検討 | 規程を確認 | 原則残る |
| 医療法人固有の経営権移転 | 法人は存続 | 債務を精査 | 解除を協議 |
| 事業譲渡 | 個別に確認 | 精算を設計 | 別途整理 |
| 法的整理 | 手続に応じる | 制度も確認 | 個人も整理 |
この表は一般的な整理です。運営主体、契約、資産、借入条件によって扱いは変わります。
30日以内に進める実務の順番

第1段階は支払停止日を見つける
最初に確認するのは、帳簿上の赤字額ではありません。現預金がいつ不足するかです。
少なくとも、今後の入出金を日付単位で並べます。
- 診療報酬などの入金日
- 給与の支払日
- 借入金の返済日
- 税金の納期限
- 社会保険料の支払日
- 賃料やリース料の支払日
現預金残高がマイナスになる日が、実務上の期限です。その日より前に、閉院、譲渡、法的整理の方向性を固める必要があります。
入金を楽観的に見積もらないでください。回収の遅れや患者数の減少も想定し、複数の資金繰りを作ります。
第2段階は従業員資料を一か所に集める
次に、従業員に関する資料を集めます。資料が複数の場所に分かれていると、支払額の計算に時間がかかります。
集めるものは次のとおりです。
1. 従業員名簿
2. 雇用契約書
3. 労働条件通知書
4. 就業規則
5. 退職金規程
6. 賃金台帳
7. 過去の支給記録
8. 勤怠と未精算項目
一覧には、正職員だけでなく、有期雇用やパートの従業員も含めます。休職中など、日常の勤務表に表れにくい従業員がいないかも確認してください。
資料が不足している場合は、不明と明記します。推測で金額を埋めるより、専門家に確認すべき項目が明確になります。
第3段階は閉院と譲渡を同じ資料で比較する
閉院案とM&A案を別々の担当者が作ると、前提がずれることがあります。同じ財務資料と従業員一覧を使って比較してください。
比較する内容は次の三つです。
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| 判断軸 | 閉院 | M&A |
|---|---|---|
| 診療事業 | 終了 | 継続の余地 |
| 従業員 | 退職を検討 | 雇用維持の余地 |
| 院長保証 | 原則残る | 解除を設計 |
譲渡代金だけを比べるのではありません。閉院費用、従業員への支払い、借入、連帯保証まで含めて、院長個人に残る負担を比べます。
買い手探索には一定の情報開示が必要です。決算書や試算表だけでなく、従業員構成や診療体制も整理しておくと、初期判断を進めやすくなります。
第4段階は専門家の役割を分ける
クリニックの閉院では、財務、労務、法務、医療分野の手続きが重なります。一人の専門家だけで全論点を扱う前提にしないほうが現実的です。
役割の目安は次のとおりです。
- 弁護士:法的整理や個別の法律判断
- 社会保険労務士:労務資料と手続きの確認
- 医療分野の専門家:許認可等の確認
- M&A専門家:譲渡可能性と条件設計
- 会計専門家:資金繰りと財務資料の整理
あさひ国際会計株式会社は、再生型M&Aの仲介、連帯保証の解除を見据えたスキームの提案、事業承継支援をおこなっています。
相談は無料で、着手金はありません。成功報酬は成約時に譲渡代金から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。
平日の営業時間内のご連絡には、最短当日に対応します。早い案件では、相談から最短5日でクロージングした実績もあります。ただし、クリニック固有の確認事項や買い手の状況により、必要な期間は変わります。
よくある質問
退職金規程がなければ支払わなくてよいですか?
規程がないことだけで、支払いが不要とは判断できません。雇用契約、労働条件通知書、過去の支給実績、口頭での説明なども確認します。資料をまとめ、社会保険労務士や弁護士へ個別に確認してください。
閉院資金が足りず退職金を払えない場合はどうなりますか?
まず、契約上発生する金額と支払時期を確定します。倒産により未払いとなった退職手当は、条件を満たせば未払賃金立替払制度の対象になる場合があります。ただし立替えは80%で、年齢別の上限もあるため、全額を補う制度ではありません。
従業員に閉院を伝える前にM&Aを検討できますか?
検討は可能ですが、情報管理と説明時期を慎重に設計する必要があります。従業員が早期に退職すると、診療体制や事業価値に影響することがあります。一方、説明を不当に遅らせることにも問題が生じ得るため、労務の専門家と進め方を確認してください。
クリニックを譲渡すれば連帯保証も外れますか?
譲渡だけで保証が自動的に解除されるわけではありません。最終契約で買い手の義務を定めることに加え、金融機関等の判断が必要です。買い手の信用力や借入条件を確認し、解除を見据えた条件設計と資料準備を進めます。
まとめ
クリニックを閉院するときは、従業員への説明より先に、給与と退職金の根拠を確認します。就業規則、退職金規程、雇用契約、過去の支給記録を集め、従業員別の支払一覧を作ってください。
次に、閉院日までの現預金を日付単位で確認します。従業員への支払い、借入返済、税金、社会保険料、閉院費用を一つの資金表にまとめることが必要です。
閉院だけでなく、事業譲渡や、医療法人では定款・持分の定めに応じた出資持分の譲渡または社員の交代により、診療と雇用を残せる可能性も検討します。ただし、クリニックの運営主体や許認可によって確認事項は異なります。
また、閉院しても院長の連帯保証が自動的に消えるわけではありません。従業員への責任と保証債務を分け、両方を含む出口を設計する必要があります。
相談の段階で、すべてを決めておく必要はありません。資金が尽きる日、従業員への支払見込額、借入残高が分かれば、選択肢の比較を始められます。
状況によっては、法的整理が適切な場合もあります。閉院、M&A、法的整理を早い段階で比較し、従業員と院長家族への影響を抑える道を検討してください。
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この記事を書いた人
あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
他社で断られた案件のご相談も承っています。ご相談は無料です。
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最終更新日: 2026年9月11日