この記事の対象と結論

この記事は、医療法人の資金繰りが厳しくなり、今後90日ほどで撤退の方向を決めたい経営者を対象にしています。借入の連帯保証、職員の雇用、患者への診療を考えると、誰にも話せないと感じるかもしれません。しかし、同じような事情で相談する経営者は珍しくありません。

医療法人の譲渡手続きは、買い手を見つけて契約するだけでは終わりません。法人形態や定款、借入、役員構成、施設、不動産、職員との契約などを確認し、使える承継方法を選ぶ必要があります。

最初に取り組むべきことは、廃業を先に決めることではありません。資金が残っているうちに、譲渡、継続、法的整理を同じ資料で比較することです。医療法人の譲渡が適するかは個別事情によります。状況によっては、破産や清算などの法的整理が適切な場合もあります。

医療法人の譲渡手続きは何から始めるのか

株式会社と同じ譲渡だと思い込まない

医療法人の譲渡を考えるとき、一般の会社売却と同じ流れを想像しがちです。しかし、株式会社で使われる手法を、そのまま当てはめられるとは限りません。

法人形態や定款、社員・役員の構成によって、進め方が変わるためです。承継対象も、法人全体なのか、診療所などの事業なのかで異なります。

まず、次の事項を整理します。

  • 法人形態と定款の内容
  • 社員、役員、代表者の構成
  • 診療所や施設の運営単位
  • 土地と建物の所有関係
  • 借入と連帯保証の契約
  • 職員との雇用関係
  • リースや賃貸借の契約
  • 関係先への承認・届出の要否

この確認をしないまま買い手候補へ話を広げると、後から実行できない条件が見つかることがあります。譲渡価格より先に、何をどのように引き継げるのかを確かめる段階です。

法人全体と事業単位のどちらを引き継ぐか

医療法人の譲渡には、法人の運営主体を引き継ぐ考え方と、特定の診療所や事業を切り分ける考え方があります。

どちらが適するかは、借入、資産、契約、職員、施設の状況で変わります。売り手側の希望だけで決められるものでもありません。買い手の受入体制や、関係先の判断も影響します。

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比較項目 法人全体の承継 事業単位の承継
主な対象 法人の運営全体 特定の事業
借入の扱い 法人内に残る 個別設計が必要
契約確認 法人単位 契約ごと
主な注意 潜在債務 移転手続き

この表は一般的な整理です。実際の設計は、定款や契約書を確認して判断します。

一般企業の事業譲渡では、承継する資産や契約を選びやすい一方、契約の移転や許認可の確認が必要です。会社法467条では、事業の全部または重要な一部を譲渡する場合、株主総会の承認が必要とされています。

ただし、医療法人では法人形態に応じた確認が別に必要です。会社法上の事業譲渡だけを見て進めるのではなく、医療法人固有の手続きと一体で検討します。

資金繰り表から譲渡に使える時間を読む

撤退を検討する段階では、決算書だけを見ても残り時間は分かりません。必要なのは、日ごとの支払いを反映した資金繰りです。

少なくとも、次の支払いを分けて確認します。

1. 職員の給与
2. 税金と社会保険料
3. 借入金の返済
4. 家賃とリース料
5. 医薬品や材料の仕入れ
6. 外注費と委託費
7. 経営者個人の必要資金

手元資金が減るほど、選べる買い手や契約条件が狭くなりやすくなります。一方で、焦って安い条件を受け入れることも避けたいところです。

資金繰り表では、「いつ現金が尽きるか」だけを見ません。給与や診療継続に必要な支払いを守った場合、譲渡の検討に使える期間がどれほどあるかを見ます。

返済条件の変更を受けている場合や、税金・社会保険料に未納がある場合も、伏せずに整理します。買い手候補による調査で判明すれば、説明の信頼性が下がるおそれがあるためです。

90日以内に決めるのは出口の方向

90日以内に譲渡の全工程が終わるとは限りません。関係先の確認や買い手の調査に時間がかかる場合があるからです。

この期間で目指すのは、次の三つを明らかにすることです。

  • 譲渡を実行できる可能性
  • 資金が続く期間
  • 譲渡できない場合の次の出口

「譲渡だけを追い、資金が尽きてから法的整理を考える」という順序は危険です。譲渡と法的整理の準備は、一部を並行して進めることがあります。

詳しくは、廃業とM&Aの比較|メリット・デメリットと判断基準を解説をご覧ください。

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譲渡に向けてそろえる資料と確認事項

最初に集めたい財務・借入資料

医療法人の譲渡手続きでは、財務状態を短期間で説明できる資料が欠かせません。過去の決算書だけでなく、現在の状況が分かる資料をそろえます。

  • 直近の決算書
  • 最新の試算表
  • 資金繰り表
  • 借入返済予定表
  • 金融機関別の借入一覧
  • 税金と社会保険料の状況
  • リース債務の一覧
  • 経営者個人の保証契約書

借入一覧には、残高だけでなく担保と保証も記載します。法人の借入が承継されても、経営者個人の連帯保証が当然に消えるわけではありません。

中小M&Aガイドライン第3版では、経営者保証の解除または引継ぎを、最終契約で扱う主要項目としています。ただし、正式な解除や移行は金融機関等の判断によります。売り手と買い手の契約だけで、保証契約が自動的に消えるものではありません。

診療を支える契約と資産を一覧にする

買い手が確認するのは、売上や利益だけではありません。診療を継続するために必要な契約と資産も調べます。

  • 土地と建物の権利関係
  • 賃貸借契約と保証金
  • 医療機器の所有・リース
  • 保守契約と委託契約
  • 医薬品や材料の在庫
  • 電子データの管理状況
  • 未収金と未払金
  • 関係会社との取引

不動産を経営者個人が所有し、医療法人へ貸していることもあります。この場合、法人の譲渡と不動産の扱いを分けて検討します。

買い手が不動産も取得するのか、賃貸を続けるのかで条件が変わります。抵当権が設定されている場合は、借入や連帯保証との関係も確かめます。

医療機器についても、法人所有とは限りません。リース会社の承諾や契約変更が必要になる可能性を見込み、契約書を先に集めます。

職員の雇用と役割を整理する

医療法人の価値は、設備だけで決まりません。診療を支える職員と運営体制も、承継の可否に影響します。

ただし、譲渡の検討段階で全職員へ一斉に知らせると、不安から退職が広がるおそれがあります。反対に、契約直前まで何も準備しなければ、説明不足になりかねません。

最初は、個人名を外した人員表を作ります。

整理項目 確認する内容
職種 診療・事務の役割
雇用形態 常勤・非常勤
勤続状況 引継ぎへの影響
人件費 月額と未払の有無

給与の支払いが難しくなっている場合は、譲渡の成否を待たずに対応を考えます。労働基準法24条は、賃金を毎月一回以上、一定の期日に支払うことを定めています。

事業の引継ぎを優先するあまり、給与問題を後回しにするのは適切ではありません。職員への影響と譲渡交渉の機密性を両立させる説明計画を先に用意します。

不利な情報も先に整理する

買い手に見せたくない情報ほど、早い段階で専門家へ共有します。後から見つかると、価格の問題ではなく信頼の問題へ変わるためです。

たとえば、次の事項です。

  • 未払の税金や社会保険料
  • 返済条件を変更した借入
  • 簿外になっている債務
  • 長期間未回収の債権
  • 係争や苦情への対応
  • 名義と実態が異なる資産
  • 関係者への貸付金
  • 更新されていない契約

問題があるから譲渡できないとは限りません。問題の範囲を数値化し、買い手が引き受けるものと、売り手側で処理するものを分けます。

説明資料では、楽観的な計画だけを示さないことも大切です。現状、改善策、必要資金、改善しなかった場合の影響を分けると、買い手が判断しやすくなります。

買い手選定から契約・引継ぎまでの流れ

買い手候補へ出す資料を段階で分ける

医療法人の譲渡では、患者、職員、取引先に関する情報を扱います。そのため、最初から詳細資料を広く配る進め方は避けます。

情報開示は、次のように段階を分けます。

1. 匿名の概要資料を提示する
2. 関心のある候補を確認する
3. 秘密保持の約束を交わす
4. 法人を特定できる資料を開示する
5. 面談後に詳細資料を開示する
6. 調査に必要な原資料を提示する

匿名資料には、地域を特定しすぎる情報や個人名を載せません。診療内容、規模、財務概要、譲渡理由などを、特定されにくい粒度でまとめます。

候補先が多ければよいとも限りません。資力、運営体制、職員の受入方針、借入や保証への対応を確認します。

条件は価格以外も同時に比べる

譲渡価格が高くても、連帯保証や職員の扱いが曖昧なら、経営者の目的に合わないことがあります。比較する条件を先に決めておきます。

条件 確認する視点
譲渡対価 支払時期と条件
連帯保証 解除への対応
職員 雇用と処遇
診療 継続の方針

ほかにも、不動産の扱い、経営者の退任時期、引継ぎ期間、契約不履行時の対応を確認します。

価格だけで候補を選んだ後に保証問題を出すと、条件の組み直しが難しくなる場合があります。連帯保証の解除を譲渡の目的に含めるなら、候補選定の段階から論点として扱います。

M&A支援機関協会は、自主規制ルールを改正しました。2025年1月1日施行の広告・営業規程では、最終契約書の草案作成時に、経営者保証の解除を譲受け事業者へ義務付ける条文案を盛り込むことを定めています。譲受け事業者の資力に関する調査義務も定められました。

基本条件の合意後に詳細調査を受ける

候補先との基本条件がまとまったら、財務、税務、法務、労務、事業などの調査へ進みます。一般にデュー・ディリジェンス、またはDDと呼ばれる工程です。

この段階では、概要資料の数字と原資料が一致しているかを確認されます。医療法人側は、質問への回答と追加資料の提出をおこないます。

DDに入る前に、次の点を確認します。

  • 調査範囲はどこまでか
  • 誰が資料を閲覧するか
  • 個人情報をどう管理するか
  • 独占交渉の条件は何か
  • 交渉終了時に資料をどう扱うか

資料の不足を隠すより、「現在確認中」と明示するほうが安全です。推測で回答すると、後の契約内容に影響することがあります。

また、調査を受ける側も買い手を確認します。資金の出所、運営方針、実行後の体制、保証解除に向けた準備などが対象です。

最終契約とクロージングを分けて考える

最終契約を締結しても、その日にすべての引継ぎが終わるとは限りません。契約締結から実行までに、満たすべき条件を置くことがあるためです。

実行前に確認する事項には、次のようなものがあります。

  • 必要な機関決定
  • 関係先への承認や届出
  • 資金調達の完了
  • 重要契約の取扱い
  • 役員等の変更準備
  • 職員への説明準備
  • 借入と保証の取扱い
  • 譲渡代金の決済準備

経営者保証の解除または移行は、金融機関等の判断が前提です。中小M&Aガイドライン第3版では、正式な解除・移行は、クロージング後に代表者変更を経ておこなう必要があると説明されています。

そのため、最終契約では「買い手が対応する」という一文だけで安心しないことが大切です。期限、必要行為、解除されない場合の扱い、情報提供の範囲などを、依頼した弁護士等と確認します。

M&A支援機関協会の特定事業者リストは、2024年10月1日に始まりました。不適切な譲受け事業者の情報を加盟社間で共有する仕組みです。M&Aの実行日から60営業日以内に経営者保証が解除されない場合、掲載対象になりうるとされています。

これは、2025年1月1日施行の契約条文に関する自主規制とは別の仕組みです。開始時期や要件を混同しないようにします。

借入・連帯保証を残さないための確認

法人が引き継がれても個人保証は別契約

経営者が連帯保証人になっている場合、法人の譲渡だけを見てはいけません。法人の借入と、経営者個人の保証契約は、分けて確認します。

民法446条では、保証契約は書面でなければ効力を生じないとされています。電磁的記録も書面とみなされます。まずは保証契約書や変更契約書の写しを集めます。

連帯保証人には、通常の保証人に認められる催告の抗弁と検索の抗弁がありません。民法454条に定められている違いです。

そのため、「先に法人へ請求してほしい」と主張できる前提ではありません。譲渡後に保証が残れば、旧経営者へ請求が及ぶ可能性を抱え続けます。

詳しくは、廃業したら連帯保証はどうなる?残る理由と整理の道をご覧ください。

金融機関への説明資料を先に整える

連帯保証の解除を見据える場合、金融機関との協議に使う資料を準備します。協議の主体は経営者ご本人です。必要に応じて、依頼した弁護士等の専門家が対応します。

説明資料には、次の内容をまとめます。

1. 譲渡後の運営主体
2. 買い手の財務基盤
3. 借入の返済計画
4. 譲渡代金の使途
5. 担保の取扱い
6. 旧経営者の退任時期
7. 実行後の管理体制

買い手の信用力が十分に説明できなければ、保証の解除や移行が円滑に進まない可能性があります。候補選定の時点で、買い手の資力を確かめる理由がここにあります。

あさひ国際会計株式会社は、金融機関との協議に必要な資料の整備、事業価値の説明資料の作成、M&Aの条件設計を通じて、経営者ご本人の協議を支えます。

契約書では解除までの行動を具体化する

経営者保証の扱いは、最終契約の主要な確認事項です。ただし、M&A契約に記載しただけで、金融機関との保証契約が消えるわけではありません。

最終契約では、依頼した弁護士等とともに、次の論点を確認します。

  • 買い手が提出する資料
  • 金融機関への説明時期
  • 借換えや債務引受の検討
  • 解除確認までの期限
  • 解除されない場合の対応
  • 売り手への補償の考え方

「善処する」「努力する」といった抽象的な表現だけでは、実行後の行動が読み取れません。一方で、金融機関の判断まで買い手が決められるわけでもありません。

契約上の義務と、金融機関の判断を区別して設計します。売り手にとっては、譲渡代金の受領だけでなく、保証解除の確認をどの時点でおこなうかも大切です。

過去の実績と将来の見通しは分ける

あさひ国際会計株式会社が支援し、これまで成約に至った案件では、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。成約した案件で、保証が残ったままになった例はありません。

ただし、金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。

また、当社は医療・調剤分野について、現時点では成約実績として掲げていません。医療法人の譲渡では、医療分野に関する法務や行政手続きを扱う専門家と連携し、対象法人の形態に応じた確認が必要です。

当社が担うのは、再生型M&Aの条件整理、買い手探索、事業価値の説明、連帯保証の解除を見据えたスキームの提案です。法的手続きは、依頼者が委任する弁護士等の専門家が担います。

譲渡・廃業・法的整理をどう比べるか

診療と借入から比較
医療法人の出口

診療を残せるかで考える

出口の選択では、「法人を残すか、なくすか」だけで考えないことが重要です。患者への診療、職員の雇用、地域での役割を、どの方法なら引き継げるかを見ます。

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選択肢 事業 借入 主な課題
M&A 承継を目指す 条件を設計 買い手選定
自主的な廃業 終了する 弁済が必要 資産換価
法的整理 状況で異なる 手続内で整理 裁判所関与
継続・改善 維持する 返済を継続 資金確保

M&Aを選んでも、現在と同じ形で診療が続くとは限りません。買い手の運営方針や人員体制によって、変更が生じる場合があります。

一方、自主的な廃業には、債務を弁済できるだけの資産や資金が必要です。資産を売れば終わるという単純な手続きではありません。

債務を返せるなら自主的な廃業も比較する

医療法人の資産を換価し、借入や買掛金などを弁済できるなら、自主的な廃業を検討できる場合があります。

ただし、解散と清算は同じ意味ではありません。会社法上の株式会社では、解散後に清算をおこないます。医療法人については、法人形態に対応する手続きの確認が必要です。

廃業を検討するときは、次の金額を試算します。

  • 設備や不動産の売却見込額
  • 借入金と未払金
  • 職員に関する支払い
  • 契約終了に伴う支払い
  • 税金と社会保険料
  • 専門家への報酬
  • 手続き完了までの固定費

帳簿上の資産額と、実際の売却額が同じとは限りません。医療機器も、取得価格ではなく換価可能額で見積もります。

債務超過でも譲渡可能性を確認する

債務超過だから、譲渡を最初から除外する必要はありません。買い手が見るのは純資産だけではなく、診療を継続できる収益、人員、立地、設備、運営体制などだからです。

あさひ国際会計株式会社が支援した案件のうち、財務概要が残る9件では、およそ3分の2が債務超過でした。これは医療法人の実績ではなく、当社の再生型M&A全体に関する参考情報です。

債務超過でも譲渡できるかは、次の順で見ます。

1. 事業単体の収支を確認する
2. 過大な費用を分ける
3. 引継ぎ後の収支を試算する
4. 借入と保証の扱いを設計する
5. 買い手に説明できる形へ直す

詳しくは、債務超過の会社を買ってくれる会社の探し方をご覧ください。

法的整理の準備も止めない

譲渡の可能性を調べることと、法的整理に備えることは両立します。資金が尽きる直前までM&Aだけを追うと、職員や家族への影響が大きくなるおそれがあります。

破産手続きを主に扱う専門家と、事業を残す前提の再生を扱う専門家では、得意分野が異なります。どちらが上ということではなく、扱う出口が違います。

次の状態がある場合は、弁護士への相談を並行して検討します。

  • 給与の支払いが難しい
  • 税金等の滞納が増えている
  • 督促や差押えが進んでいる
  • 重大な係争を抱えている
  • 資産処分の適法性に不安がある
  • 個人保証の請求が迫っている

状況によっては、破産や清算などの法的整理が適切な場合もあります。M&Aを選ぶために法的整理を避けるのではなく、両方の見通しを知ったうえで判断します。

相談から意思決定までの実務ロードマップ

資金があるうちに着手
譲渡準備の流れ

最初の面談までに準備すること

初回相談ですべての資料がそろっている必要はありません。まず、現状を判断できる最小限の情報を準備します。

  • 直近の決算書
  • 最新の預金残高
  • 翌月までの支払予定
  • 借入先と借入残高
  • 連帯保証の有無
  • 職員数と給与支払日
  • 譲渡を考えた理由
  • 希望する退任時期

資料が不足していても、分かる範囲で伝えます。「借入額を正確に覚えていない」「保証書が見つからない」という状態も、そのまま共有してください。

家族や職員にまだ話していない場合は、その事情も伝えます。情報を誰まで共有するかは、譲渡手続きの初期に決める論点です。

専門家ごとの役割を分ける

医療法人の譲渡では、複数分野の確認が必要になる場合があります。誰か一人に全工程を任せるのではなく、役割を分けます。

専門家 主な役割
M&A支援者 候補探索・条件設計
弁護士 契約・法的整理
税務専門家 税務上の確認
行政手続の専門家 承認・届出の確認

再生型M&Aの支援者には、正常な黒字法人の売却だけでなく、債務超過や連帯保証を含む案件を扱っているかを確認します。

契約書を作る専門家と、買い手を探す支援者では役割が違います。破産手続きを主に扱う専門家と、事業承継を前提とする専門家でも、確認する論点が異なります。

医療法人については、法人形態に応じた行政上の確認を誰が担うのかも明確にします。

候補先を一社に絞る前に確認すること

候補先との面談では、譲渡価格だけでなく、実行できる体制を確認します。

  • 買収資金をどう用意するか
  • 誰が運営を担うのか
  • 職員をどう受け入れるか
  • 診療をどう継続するか
  • 連帯保証へどう対応するか
  • 不動産をどう扱うか
  • 経営者の引継ぎ期間はどれほどか
  • 実行できない場合はどうするか

口頭の説明と、提出資料の内容が一致しているかも見ます。急いでいるときほど、「すぐ買える」という言葉だけで判断しないようにします。

独占交渉を認めると、一定期間は他の候補と話せなくなる場合があります。期間、解除条件、費用負担を確認してから合意します。

譲渡できない場合の撤退線を決める

M&Aは相手がいる取引です。資料を整えても、条件が合わないことがあります。そのため、どの時点で別の出口へ切り替えるかを決めておきます。

撤退線は、感覚ではなく資金繰りから設定します。

1. 給与を守れる期限を確認する
2. 税金等の支払状況を確認する
3. 追加資金の有無を確認する
4. 候補先の進捗を評価する
5. 弁護士と法的整理の準備を確認する
6. 継続か切替えかを判断する

「あと少しで決まりそう」という期待だけで期限を延ばすと、手元資金が減ります。買い手から必要資料が出ているか、調査日程が決まっているかなど、客観的な進捗で判断します。

よくある質問

医療法人の譲渡手続きは90日以内に終わりますか

90日以内に終わるかは、法人形態、買い手の有無、借入、関係先の承認・届出、調査範囲などで変わります。最初から完了日を断定するのは適切ではありません。まず90日以内に、譲渡可能性、資金の期限、代替となる出口を整理してください。一般的なM&Aは半年以上かかると言われますが、当社では相談から最短5日でクロージングした実績があり、赤字・債務超過案件はおおむね2〜4週間、相談した月のうちに成約することがほとんどです。ただし、これは医療法人の実績ではなく、他業種を含む再生型M&Aの実績です。

医療法人を譲渡すれば連帯保証は外れますか

法人を譲渡しただけで、経営者個人の連帯保証が自動的に外れるものではありません。金融機関等の同意が前提となります。買い手の資力、譲渡後の返済計画、担保、代表者変更などを整理し、経営者ご本人が金融機関と協議します。必要に応じて、依頼した弁護士等の専門家が対応します。最終契約では、買い手が担う行為、期限、解除されない場合の扱いを確認します。

債務超過や赤字でも買い手を探せますか

債務超過や赤字だけで、買い手探索の可否は決まりません。診療を継続できる収益、職員、設備、立地、運営体制などを含めて事業価値を整理します。ただし、医療法人として必要な体制や手続きを満たせる買い手であることも確認が必要です。譲渡が難しい場合に備え、廃業や法的整理の準備も並行します。

相談やM&A仲介には費用がかかりますか

あさひ国際会計株式会社への相談は無料です。報酬は成功報酬のみで、着手金はありません。成約時に譲渡代金の中から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。成功報酬まで無料という意味ではありません。法務、税務、行政手続きなどを他の専門家へ依頼する場合は、その専門家の費用が別に生じることがあります。

まとめ

医療法人の譲渡手続きでは、買い手探しより先に、法人形態、定款、借入、連帯保証、職員、施設、契約を整理します。そのうえで、法人全体を引き継ぐのか、事業単位で承継するのかを検討します。

資金繰りが厳しいときは、譲渡だけに賭けないことも大切です。M&A、自主的な廃業、法的整理、継続・改善を同じ資料で比べます。状況によっては法的整理が適切な場合もあります。

連帯保証の解除は、譲渡契約だけでは完了しません。金融機関等の同意を前提に、買い手の資力、返済計画、担保、契約上の義務を確認します。

相談時に資料がそろっていなくても構いません。預金残高、次の支払い、借入、保証、職員への支払予定から整理を始められます。孤立したまま時間を使うより、資金が残っている段階で複数の出口を比べることが、家族や職員を守る選択につながります。

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この記事を書いた人

あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
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最終更新日: 2026年9月7日

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