この記事の対象と結論

「自己破産するとどうなるのか」と不安を抱える中小企業の経営者に向けた記事です。会社の借入に連帯保証を付けている場合、法人破産だけで問題が終わるとは限りません。会社と経営者個人は、法律上別の主体だからです。

個人が自己破産すると、換価できる財産や信用情報、一部の資格に影響が生じます。一方、生活に必要な財産まですべて失う制度ではありません。選挙権を失うこともなく、戸籍に破産の事実が記載されることもありません。

また、事業に価値が残っていれば、M&Aによって雇用や取引を引き継げる場合があります。自己破産の結論を急ぐ前に、会社の資金繰り、保証契約、個人資産、事業価値を分けて確認することが出発点です。

自己破産すると経営者の暮らしはどう変わるか

暮らしへの主な影響
破産後に変わること
暮らしへの主な影響
破産後に変わること

免責許可によって債務の支払義務が整理される

個人の自己破産は、裁判所へ破産手続開始と免責許可を申し立てる法的手続です。破産手続と免責は、同じ意味ではありません。

破産手続では、換価できる財産を債権者への配当に充てます。その後、免責許可決定が確定すると、対象となる債務の支払義務が整理されます。

破産法1条は、債権者に対する適正かつ公平な清算だけを目的としていません。「債務者について経済生活の再生の機会の確保」を図ることも掲げています。破産は、経済生活を立て直すための法的な仕組みでもあるのです。

ただし、すべての債務が同じ扱いになるわけではありません。免責不許可事由の有無も、個別の事情によって判断されます。

申立てを考えたら、次のような行動を自己判断で進めないようにします。

  • 親族や知人だけに返済する
  • 家族名義へ預金を移す
  • 自宅や車を低額で譲る
  • 会社の資産を持ち出す
  • 帳簿や契約書を処分する

財産や返済の経緯は、弁護士へ正確に伝えてください。事実を隠すほど、手続の見通しを立てにくくなります。

現金や生活用品がすべて処分されるわけではない

自己破産すると「身の回りの物まで失う」と考える方がいます。しかし、生活の再建に使う財産まで一律に処分される仕組みではありません。

破産法34条3項1号などにより、99万円までの現金は自由財産として扱われます。この基準が対象とするのは現金です。預貯金まで含めて99万円という意味ではありません。

預貯金、保険、自動車、不動産などは、種類や評価額によって扱いが変わります。生活用品にも、差押えや換価の対象にならないものがあります。

一方、持ち家は影響を受ける可能性があります。住宅ローンの残高、担保、共有関係、物件の価値などを踏まえた確認が欠かせません。

住宅ローンが残っていれば住み続けられるとも、自宅があればすぐ退去になるとも限りません。売却や退去の時期を含め、事案ごとに見通しが異なります。

信用情報への登録で借入やカードの審査に影響する

自己破産に関する情報は、信用情報機関に一定期間登録されます。その間は、新たな借入やクレジットカードなどの審査に影響する可能性があります。

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信用情報機関 主な登録対象 登録期間
CIC 破産を含む異動 契約終了後5年以内
JICC 破産申立て等 契約終了後5年以内
KSC 官報情報 決定から7年以内

CICは、異動情報の保有期間を契約中および契約終了後5年以内としています。

JICCでは契約時期によって基準が異なります。2019年10月1日以降の契約は、契約継続中および契約終了後5年以内です。それ以前の契約は、事実の発生日から5年を超えない期間とされています。

全国銀行個人信用情報センターでは、破産手続開始決定等の官報情報が、決定を受けた日から7年を超えない期間登録されます。

登録期間が終わっても、融資やカードの審査に通ると決まるわけではありません。審査時の収入や取引履歴、金融機関の判断なども関係します。

再び会社を経営する場合も同様です。新会社を設立しただけで、すぐに融資を受けられるとは限りません。再出発後の運転資金まで考えておく必要があります。

選挙権・戸籍・年金への影響は限定される

裁判所の説明資料によると、破産手続開始決定を受けても選挙権と被選挙権は失いません。破産の事実が戸籍に記載されることもありません。

自己破産を理由として、公的年金の受給権そのものが処分されるわけでもありません。国民年金法24条は、年金給付を受ける権利の譲渡や差押えを原則として禁じています。

ただし、破産手続中は一部の資格や職業に制限が生じます。弁護士法と警備業法には、破産手続開始決定を受けて復権を得ていない人への資格制限があります。

裁判所の説明では、免責許可決定が確定すると復権します。免責を受けなかった場合でも、破産手続開始決定から10年が経過すると復権する場合があります。

資格が事業や仕事に関係する経営者は、申立て前に弁護士へ確認してください。

会社・従業員・家族に及ぶ影響

法人破産と経営者の自己破産は別の手続になる

株式会社などの法人と代表者個人は、法律上別の主体です。会社が破産しても、経営者個人の債務が一緒に免責されるわけではありません。

反対に、経営者が自己破産しても、会社の債務が消えることにはなりません。会社と個人について、それぞれの資産、負債、契約を確認します。

会社法471条では、破産手続開始の決定が会社の解散事由の一つです。破産した会社の財産は通常清算ではなく、破産手続のなかで処理されます。

経営者が会社の借入に連帯保証を付けていると、会社が返済できない債務について個人へ請求が及ぶ可能性があります。法人破産だけを申し立てれば、連帯保証まで消えるという関係ではありません。

なお、個人保証がない場合でも、個人名義の借入や担保などが残ることがあります。税金、会社への貸付け、役員としての責任も別の論点です。

家族が会社の借金を負うとは限らない

経営者が自己破産しただけで、配偶者や子どもが会社の借金を肩代わりするわけではありません。家族が保証人や共同債務者になっていなければ、家族の債務とは区別されます。

家族名義の預金や不動産も、名義だけで判断されるとは限りません。購入資金を誰が負担したのか、どのように管理していたのかを確認される場合があります。

破産直前に経営者から家族へ財産を移した場合も、経緯が確認対象になりえます。家族を守るつもりの行動が、手続を複雑にすることもあります。

住まいや家計に影響するなら、家族への説明も避けて通りにくい問題です。何をどの順番で話すかは、弁護士と相談しながら整理できます。

経営難について相談する経営者は珍しくありません。資金繰りの失敗と、経営者としての人格は分けて考えるべきです。一人で抱え続けることが、家族を守る道になるとは限りません。

従業員の雇用と未払賃金にも影響が生じる

会社が破産して事業を停止すれば、従業員の雇用にも影響します。給与が払えない状態では、説明の先送りによって混乱が広がることがあります。

労働基準法24条では、賃金について次の原則が定められています。

  • 通貨で支払う
  • 労働者本人へ直接支払う
  • 全額を支払う
  • 毎月1回以上支払う
  • 一定の期日を定める

退職者から請求があった場合、労働基準法23条により7日以内の支払いが求められます。金額に争いがあっても、異議のない部分は同じ期間内の支払いが必要です。

一定の条件を満たせば、未払賃金立替払制度を利用できる場合があります。立替払の額は、未払賃金総額の8割です。

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退職時の年齢 未払賃金上限 立替払上限
45歳以上 370万円 296万円
30歳以上45歳未満 220万円 176万円
30歳未満 110万円 88万円

賞与や解雇予告手当、延滞利息などは対象外です。未払賃金総額が2万円未満の場合も対象になりません。退職時期と請求時期にも条件があります。

従業員への罪悪感から、会社の状態を伏せたくなるかもしれません。しかし、雇用を残せる可能性があるなら、資金が尽きる前の検討が役立ちます。

取引先や契約は従来どおり続くとは限らない

法人破産では、会社の財産や契約関係が破産手続の対象になります。受注済みの仕事、納品前の商品、賃貸借契約などを従来どおり継続できるとは限りません。

取引先への支払いだけを優先する行為は、債権者間の公平との関係で問題になる場合があります。長年の取引先へ先に払いたいと思っても、自己判断で進めないでください。

事業に価値が残っていれば、破産前に第三者へ引き継ぐ余地を検討できます。評価対象になりうるのは、たとえば次の要素です。

  • 継続的な顧客基盤
  • 技術を持つ従業員
  • 事業に使う設備
  • 許認可や契約関係
  • ブランドや営業地域

ただし、事業を移せば債務だけを残せるという話ではありません。会社法23条の2は、債権者を害することを知って事業を譲渡した場合について、譲受会社が責任を負う場合を定めています。

会社破産で個人資産はどこまで影響を受けるか

会社破産を考えるとき、自宅や預金を残せるかは大きな不安です。ただ、会社の負債額だけで個人資産への影響は判断できません。会社の財産の処理と、経営者個人が負う責任を分けて見る必要があります。

個人資産への影響は保証と担保を分けて確認する

会社と経営者個人は別の主体です。会社の破産だけを理由に、個人資産が一律に処分されるわけではありません。一方、会社の借入に連帯保証を付けていれば、個人へ請求が及ぶ可能性があります。

ここで、保証と担保を混同しないことが大切です。保証契約の有無に加えて、自宅などを会社の借入の担保に入れていないか確認します。個人保証がなくても、担保にした財産への影響は別に検討する必要があります。

確認の入口は、次のように整理できます。

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確認する関係 確認する資料 主な論点
会社借入の個人保証 保証契約書 個人への請求範囲
個人資産の担保提供 担保契約書 担保財産への影響
個人名義の借入 借入契約書 個人の返済負担

保証契約が見つからない場合は、「保証していない」と即断せず、写しの確認から始めてください。

自宅・預金・会社への貸付けを同じ扱いにしない

個人資産を一覧にするときは、名義と実際の資金の流れを照合します。自宅なら、所有者だけでなく担保や共有関係も確認する対象です。預金なら、会社の入出金が混ざっていないかを見直してください。

会社へ貸したお金も、個人の手元にある預金とは分けて考えます。帳簿に貸付残高があっても、その全額が生活費として戻るとは限りません。会社の財産や負債の状況を踏まえて、回収の見通しを確認する必要があります。

相談用の一覧には、次の内容を添えると状況を伝えやすくなります。

  • 資産ごとの名義と現在の残高を記す。
  • 購入資金や入金の出所を整理する。
  • 担保の有無と対象の借入を記す。
  • 会社との貸し借りの履歴を残す。

個人も自己破産する場合は自由財産を確認する

保証債務を含めて個人も返済が難しい場合は、個人側の整理方法を検討します。この段階で、自由財産として残る範囲が論点になります。会社が破産しただけの段階と、個人も自己破産する段階を分けてください。

破産法34条などには、99万円までの現金を自由財産とする規定があります。ただし、預貯金を合算した上限ではありません。現金と預貯金を同じものとして、残せる金額を見積もらないようにしましょう。

また、経営者保証に関するガイドラインには、残存資産を検討する枠組みがあります。早期に事業再生や清算に着手した場合の生計費や、華美でない自宅等が対象です。ただし、回収見込額の増加の範囲などの条件があり、自宅を残せると約束するものではありません。

出典:e-Gov法令検索「破産法」全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」

財産を動かす前に生活再建の見通しを相談する

個人資産を守りたいと考えても、家族への名義変更や会社からの返済を急がないでください。財産を移した経緯が問題となり、整理を難しくする可能性があります。残したい資産と、その理由を資料にまとめることから始めましょう。

個別の財産の扱いは弁護士に確認し、生活費の見通しも共有してください。状況によっては法的整理(破産・清算)が適切な場合もあります。当社は資料の整備や条件設計を通じて、ご本人の協議を支える立場です。

連帯保証があると結論が変わる理由

連帯保証人には先に会社へ請求するよう求める権利がない

民法446条によると、保証人は主たる債務者が履行しないときに履行する責任を負います。保証契約は書面で締結することが原則です。電磁的記録も書面とみなされます。

通常の保証人には、催告の抗弁と検索の抗弁があります。ところが、民法454条により、連帯保証人はこの二つの権利を持ちません。

つまり、連帯保証人は次のような主張ができないのです。

  • 先に会社へ請求してほしい
  • 先に会社の財産へ執行してほしい

会社が支払えないとき、債権者から経営者個人へ請求が及ぶ可能性があります。会社を廃業しただけで保証が終了するわけでもありません。

詳しくは廃業したら連帯保証はどうなるかをご覧ください。

最初に確認するのは、保証契約書の写しです。借入先、残高、保証人、極度額、担保を一覧にすると、個人への影響が見えやすくなります。

経営者保証に関するガイドラインには利用要件がある

経営者保証に関するガイドラインは、全国銀行協会と日本商工会議所を事務局とする研究会が制定した枠組みです。平成25年12月5日に制定され、平成26年2月1日から運用が始まりました。

保証債務の整理を申し出るには、ガイドライン7項1号にある要件をすべて満たすことが求められます。概要は次のとおりです。

1. 保証契約が所定の要件を満たしている
2. 主債務者である会社の整理手続がある
3. 債権者にも経済合理性が見込まれる
4. 所定の免責不許可事由がない

二つ目は、単に会社の資金繰りが厳しいという条件ではありません。主債務者である会社が、法的整理または準則型私的整理を申し立てていることが要件に含まれます。

法的整理には、破産、民事再生、会社更生、特別清算があります。準則型私的整理には、中小企業活性化協議会の再生支援スキーム、事業再生ADR、特定調停などが含まれます。

これらの申立てをガイドラインの利用と同時におこなっている場合のほか、手続が係属中または終結済みの場合も対象となりえます。

さらに、破産手続による配当より多くの回収が見込めるなど、対象債権者にとって経済合理性が期待できることも要件です。

融資を受ける段階で保証を求めないための要件と、既存の保証債務を整理する要件は別です。法人と個人の分離や経営の透明性は前者の説明であり、7項1号の要件と混同できません。

制度の原文は、全国銀行協会の経営者保証に関するガイドラインで確認できます。

M&Aが成立しても保証が自動で消えるわけではない

株式譲渡や事業譲渡が成立しても、当事者間の合意だけで保証契約が消滅するわけではありません。経営者保証の解除や移行は、最終的に金融機関等が判断します。

中小M&Aガイドライン第3版では、経営者保証の解除または引継ぎを、最終契約で取り決める主要項目としています。これは株式譲渡と事業譲渡に共通する論点です。

正式な解除や移行は、クロージング後に登記簿上の代表者が変更されてから進めることになります。買い手の信用力が低い場合などは、円滑に進まないリスクがあります。

2025年1月1日施行のM&A支援機関協会の自主規制ルールでは、最終契約書の草案に所定の条文案を盛り込むことが定められました。経営者保証の解除を譲受け事業者へ義務付ける内容です。

譲受け事業者の資力調査や、M&A後のリスク事項に関する説明も定められています。それでも金融機関の判断を置き換える制度ではありません。

保証解除を見据えるなら買い手の資力も確認する

経営者保証の解除を見据えたM&Aでは、譲渡価格だけで買い手を選べません。買い手の資力、買収資金の出所、買収後の返済能力も確認します。

特定事業者リストは、2024年10月1日に始まった業界の情報共有制度です。不適切な譲受け事業者に関する情報を加盟社間で共有します。

M&A取引の実行日から60営業日以内に経営者保証が解除されない場合、掲載の対象になりえます。解除に時間がかかった時点で、ただちに掲載されるという意味ではありません。

なお、あさひ国際会計株式会社は現在、このリストには加盟していません。

当社が成約まで仲介した案件では、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。ただし、金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。

当社は、金融機関との協議に使う資料の整備をおこないます。事業価値の説明資料やM&A条件も設計し、経営者ご本人の協議を支えます。法的な代理交渉は、依頼者が委任する弁護士等が担います。

破産・廃業・M&Aをどう比較するか

自主的な廃業は債務を支払えるかが分かれ目になる

自主的な廃業では、会社を解散して通常清算へ進みます。株式会社は株主総会の特別決議によって解散できます。

解散後は清算人が会社の資産を換価し、債務を支払います。残余財産があれば、株主へ分配して清算を終えます。

通常清算で会社を閉じるには、会社の債務を支払えることが基本です。資産を処分しても債務を完済できない場合、通常清算だけで終えられない可能性があります。

清算株式会社は、債権者へ債権を申し出るよう官報で公告します。判明している債権者には個別の催告もおこないます。申出期間は2か月を下回れません。

営業を止めることと、法人の清算を終えることは別です。会社を休眠させても、借入や連帯保証が消えるわけではありません。

M&Aでは雇用や取引を残せる場合がある

顧客、従業員、設備、許認可などに価値があれば、第三者へ事業を引き継げる場合があります。赤字や債務超過だけで、譲渡できないと決まるものではありません。

主な手法には、株式譲渡と事業譲渡があります。

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比較項目 株式譲渡 事業譲渡
法人格 変わらない 譲渡会社に残る
借入 会社に残る 承継対象を設計
契約 原則として継続 個別対応が中心
許認可 会社に残る 再取得等を確認

株式譲渡では法人格が変わらず、会社の借入も会社に残ります。一方、簿外債務や偶発債務を確認するため、詳しいデュー・ディリジェンスがおこなわれる傾向があります。

事業譲渡では承継対象を選べますが、契約、登記、許認可などの個別対応が生じます。会社法467条により、事業の全部や重要な一部を譲るときは株主総会の承認も求められます。

どちらの手法でも、経営者保証は別に扱います。詳しくは廃業とM&Aの比較をご覧ください。

債務超過でも事業価値が残る会社はある

「債務超過なら買い手が付かない」とは限りません。買い手が見るのは、貸借対照表だけではないからです。

継続取引、従業員、設備、許認可、営業地域などが、買収後の収益につながる場合があります。

当社が支援して成約した案件のうち、財務概要が残る9件では、およそ3分の2が債務超過でした。

たとえば、運送業で売上1億円台、債務超過3,000万円規模、従業員10名前後の会社もあります。確認できる成約案件の売上は、3,800万円規模から6億円台までです。

会社の規模だけで、譲渡の可否は決まりません。買い手が引き継ぐ価値と、買収後に負担できる債務の関係から判断します。

債務超過企業の買い手探索については、債務超過の会社を買ってくれる会社の探し方で解説しています。

状況によっては法的整理が適切な場合もある

事業価値が残っていても、M&Aを進める時間がない場合があります。資金流出が続いている、資料が大きく乱れている、事業継続による損失が拡大している場合などです。

そのような会社では、破産や清算などの法的整理が適切な場合もあります。M&Aだけを前提に結論を出すことはできません。

破産手続きを主に扱う専門家と、事業を残す前提の再生を扱う専門家では、得意分野が異なります。

検討事項 主に扱う専門家
破産申立て 弁護士
保証債務の法的整理 弁護士
事業の譲渡 M&A専門家
税務への影響 税理士等
登記 司法書士等

弁護士へ相談して破産を提案された後でも、事業価値を確認する余地が残る場合があります。反対に、M&Aを検討した結果、法的整理を選ぶこともあります。

結論を出す前に確認する資料・費用・相談先

会社と個人を分けて確認
結論を出す順序
会社と個人を分けて確認
結論を出す順序

会社と個人の資料を分けて整理する

自己破産の影響を見通すには、会社と個人の資料を分けます。連帯保証がある場合は、両方を同じ時点で見比べてください。

会社側で確認する主な資料は次のとおりです。

  • 決算書と直近の試算表
  • 預金通帳と資金繰り表
  • 借入返済予定表
  • 売掛金と買掛金の一覧
  • 従業員と給与の一覧
  • 主要な契約書と許認可

個人側では、次の資料を整理します。

  • 保証契約書
  • 個人名義の借入契約書
  • 預貯金と保険の明細
  • 不動産の登記事項
  • 担保に関する契約書
  • 毎月の家計と収入

資料がすべてそろっていなくても、相談は始められます。欠けている資料を明らかにすることも準備の一部です。

資金繰りと事業価値を同時に確認する

「会社を売りたい」「破産したい」と結論だけを先に決めると、他の選択肢を見落とすことがあります。

最初に、次の順序で状況を整理します。

1. 現預金の残高を確認する
2. 支払日別の資金繰りを作る
3. 借入と保証契約を一覧にする
4. 個人資産と担保を整理する
5. 事業の譲渡可能性を調べる
6. 法的整理の費用を見積もる

給与や税金の支払期限が迫っているなら、使える時間は短くなります。買い手探索を続ける期間と、法的整理へ移る判断基準を先に決めておく方法があります。

税金や社会保険料の滞納がある場合も、隠さず共有してください。会社の借入だけを見ても、必要資金や手続の全体像は分かりません。

自己破産には裁判所費用と弁護士費用がかかる

自己破産には、裁判所へ納める費用と弁護士費用がかかります。会社と経営者個人の両方を申し立てる場合は、それぞれの費用を見込みます。

東京地方裁判所の令和8年1月1日版資料によると、申立手数料は次の金額です。

申立て 申立手数料
法人の自己破産 1,000円
個人の破産・免責 1,500円
予納郵券 4,950円

管財事件の自己破産申立事件では、予納金基準額は最低20万円です。法人1件につき16,264円、個人1件につき20,397円が加わります。

本人申立事件と債権者破産申立事件には、負債総額に応じた別の基準があります。上記の金額だけで見積もることはできません。

これらは裁判所へ納める費用です。弁護士費用は別途かかります。弁護士報酬には全国一律の基準がなく、事務所や事案によって料金体系が異なります。

費用を払えない可能性があるなら、手元資金が尽きる前に弁護士へ見積もりを依頼します。会社のお金を経営者個人の費用に使えるとは限らないため、資金の出所も確認してください。

再生型M&Aについて、あさひ国際会計株式会社は相談無料、着手金なし、成功報酬のみです。報酬は成約時に譲渡代金から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。

相談先は扱う業務の違いから選ぶ

相談先を選ぶ際は、どの結論を勧めるかではなく、どの業務を扱うかを確認します。

破産申立てや法的な代理交渉は弁護士が担います。M&A専門家は、事業価値の評価、買い手探索、譲渡条件の設計などを扱います。税務や登記には、それぞれの専門家の関与が考えられます。

相談時には、希望と事実を分けて伝えてください。

  • いつ資金が不足するか
  • 給与の未払いがあるか
  • 税金の滞納があるか
  • 連帯保証はいくらあるか
  • 自宅に担保があるか
  • 残したい事業は何か

あさひ国際会計株式会社は、赤字・債務超過企業の再生型M&Aを専門としています。中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録し、中小M&Aガイドライン第3版に対応しています。

年間60件以上のM&A仲介の成約実績があり、相談から最短5日でクロージングした実績もあります。赤字・債務超過案件は、おおむね2〜4週間で進むケースがあります。

ただし、資料の状態や買い手、金融機関の判断によって期間は変わります。状況によっては、法的整理が適切な場合もあります。

よくある質問

自己破産すると家族にも借金の請求が来ますか

家族が保証人や共同債務者でなければ、経営者が自己破産したことだけを理由に会社の借金を負うわけではありません。ただし、家族名義の財産へ経営者が資金を出していた場合や、直前に名義を移した場合は経緯を確認されることがあります。財産を動かす前に弁護士へ相談してください。

自己破産すると自宅には住めなくなりますか

自宅の価値、住宅ローン、担保、共有関係によって扱いが変わります。自己破産の申立てだけで退去日が決まるという単純な仕組みではありません。経営者保証に関するガイドラインでは、要件を満たす場合に華美でない自宅等を残存資産に含める検討も示されています。

会社をM&Aで譲れば自己破産を避けられますか

譲渡代金、会社の債務、個人資産、買い手の信用力、金融機関の判断によります。M&Aが成立しただけで連帯保証が解除されるわけではありません。ただし、事業価値が残っていれば、譲渡と保証解除を見据えた出口を検討できる場合があります。

弁護士とM&A専門家のどちらに相談すべきですか

破産申立てや法的な代理交渉は弁護士が扱います。事業価値の評価、買い手探索、M&A条件の設計はM&A専門家の領域です。法的整理と事業譲渡の両方に可能性がある場合、それぞれの専門家が役割を分けて検討する方法があります。

会社が破産しても個人資産を残せる場合はありますか

会社と個人は別の主体のため、会社破産だけで個人資産が一律に処分されるわけではありません。ただし、連帯保証や個人資産の担保提供があれば、影響を受ける可能性があります。個人も自己破産する場合は、自由財産の範囲を別に確認します。財産を動かす前に弁護士へ相談してください。状況によっては法的整理(破産・清算)が適切な場合もあります。

まとめ

自己破産すると、換価できる財産、信用情報、一部の資格に影響が生じます。一方、99万円までの現金などを自由財産とする仕組みがあります。選挙権や公的年金の受給権まで失う制度でもありません。

会社と経営者個人は別の主体です。法人破産をしても、経営者の連帯保証が自動的に消えるわけではありません。保証契約、会社の資金繰り、個人資産を分けて確認してください。

事業に顧客、従業員、設備、技術、許認可などの価値が残っていれば、M&Aを検討できる場合があります。その一方で、資金や事業の状況によっては法的整理が適切なこともあります。

まずは現預金、支払予定、借入、保証契約、個人資産を整理します。そのうえで、破産した場合と事業を譲った場合の影響を比較することが、現実的な出口を選ぶための第一歩です。

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この記事を書いた人

あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
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最終更新日: 2026年9月10日