目次
この記事の対象と結論
この記事は、会社を畳む費用を調べながら、借入や連帯保証に不安を感じている経営者を対象にしています。
会社を畳む費用は、登記費用だけでは判断できません。会社の資産ですべての債務を払えるなら、解散と通常清算を進められる可能性があります。一方、支払い切れない債務がある場合は、特別清算や法人破産なども検討対象です。
まず確認したいのは、会社を閉じるための費用よりも、借入、税金、給与、リース料などを最後まで払えるかです。資金不足なら、事業を第三者へ譲る再生型M&Aも選択肢になります。
判断を急いで会社の資産を処分せず、今後30日間の資金繰りと連帯保証の内容から整理してください。
会社を畳む費用は終わらせ方によって変わる

解散と清算は同じ意味ではない
日常会話では「廃業」「解散」「清算」が混同されがちです。しかし、法的な意味は異なります。
解散とは、会社が通常の営業活動を終え、会社を消滅させる段階へ入ることです。株式会社は、株主総会の決議などによって解散します。会社法471条には、株主総会の決議、合併、破産手続開始の決定などが解散事由として定められています。
清算とは、解散後に会社の財産と債務を整理する過程です。会社法475条により、解散した会社は原則として清算をしなければなりません。
通常清算では、清算人がおもに次の作業を進めます。
1. 会社の財産と債務を調べる
2. 売掛金などを回収する
3. 在庫や設備などを換価する
4. 債権者へ債務を弁済する
5. 残余財産を株主へ分配する
6. 清算結了の登記をする
つまり、解散登記をすれば会社の借入が消えるわけではありません。会社を畳む費用を考えるときは、清算完了までの支出を見る必要があります。
通常清算で最低限かかる法定費用
株式会社を株主総会の決議で解散し、通常清算する場合、登記にかかる登録免許税は次のとおりです。
| 登記の種類 | 登録免許税 |
|---|---|
| 解散の登記 | 3万円 |
| 清算人の登記 | 9千円 |
| 清算結了の登記 | 2千円 |
| 合計 | 4万1千円 |
根拠は、登録免許税法別表第一第24号です。これは登録免許税だけの合計であり、会社を畳む費用の総額ではありません。
清算株式会社は、会社法499条により、債権者へ債権の申出を求める官報公告をおこないます。判明している債権者には、個別の催告も必要です。申出期間は2か月を下回ることができません。
そのため、通常清算では次の費用も検討します。
- 官報公告の実費
- 司法書士などへの報酬
- 税務申告に関する報酬
- 設備や在庫の処分費
- 賃貸物件の原状回復費
- 従業員に関する支払い
- 税金や社会保険料
- リースなどの解約費用
- 借入金などの債務
専門家報酬や処分費には、一律の全国基準がありません。会社の規模、取引数、資産の内容、未処理の会計資料などで変わります。まず見積もりの対象範囲をそろえることが必要です。
会社を休眠させても費用と責任は残る
解散費用を用意できないため、会社を動かさずに放置しようと考える方もいます。しかし、営業を止めることと、法人を消滅させることは別です。
法人が存続する限り、税務申告、登記の管理、借入返済などの課題は残ります。賃貸借契約やリース契約も、営業を止めただけでは終了しません。連帯保証も同様です。
会社法472条には、最後の登記から12年を経過した株式会社に関する「みなし解散」の制度があります。ただし、これは会社を適切に清算したことを意味しません。休業とも異なります。
会社を残す場合の支出については、会社の休眠にかかる費用を分解|残る支払いと廃業・M&Aの比較もご覧ください。
通常清算では終われない会社に必要な費用
債務を全額払えるかが最初の分岐になる
通常清算は、会社の資産で債務をすべて弁済できることが前提になります。
預金残高だけを見て「払える」と判断するのは危険です。営業を終えると、普段は見えにくい支出がまとまって発生するためです。
確認する債務には、次のようなものがあります。
- 金融機関からの借入
- 買掛金や未払金
- 未払いの給与
- 税金や社会保険料
- リースの残額
- 賃貸借契約上の負担
- 原状回復や撤去の支出
- 取引終了に伴う負担
これらを差し引いても弁済原資が残るかを試算します。売掛金は帳簿額どおりに回収できるとは限りません。在庫や設備も、簿価と売却額が異なることがあります。
会社の財産を処分する前に、清算までの資金繰り表を作ることが重要です。安く売却した後で資金不足が判明すると、選択肢が狭くなりかねません。
特別清算は解散後に裁判所が関与する
特別清算は、すでに解散して清算中の株式会社を対象とする手続きです。
会社法510条では、清算の遂行に著しい支障がある場合や、債務超過の疑いがある場合に、裁判所が特別清算の開始を命じると定めています。
また、会社法511条2項では、清算株式会社に債務超過の疑いがあるとき、清算人は特別清算開始を申し立てなければならないとされています。
通常清算を始めてから資金不足に気づけば、そのまま任意の弁済だけで終えられない場合があります。解散を決議する前に、実態貸借対照表を作る必要があるのはこのためです。
特別清算を含む法的手続きは、依頼者が委任する弁護士等の専門家が扱います。どの手続きが適するかは、債権者の構成や資産の状態によって異なります。
法人破産では裁判所費用と弁護士費用が必要になる
法人破産は、会社の財産を破産手続の中で換価し、債権者へ公平に配当する裁判所の手続きです。
破産法1条は、財産等の適正かつ公平な清算に加え、債務者の経済生活の再生機会の確保も目的に掲げています。単に会社を終わらせるだけの制度ではありません。
東京地方裁判所が公表する令和8年1月1日版の資料では、法人の自己破産に関する裁判所費用として次の金額が示されています。
| 項目 | 公表額 |
|---|---|
| 申立手数料 | 1,000円 |
| 管財事件の予納金 | 最低20万円 |
| 法人1件の加算 | 16,264円 |
| 予納郵券 | 4,950円 |
最低20万円とする基準は、自己破産申立事件の管財事件に関するものです。本人申立事件などは、負債総額に応じた別の基準になります。
また、金額は事案に応じて変更されることがあります。上表は裁判所へ納める費用だけであり、弁護士費用は含みません。弁護士報酬には全国一律の基準がなく、各事務所の料金体系や事案の内容によって変わります。
法人破産の費用をさらに確認したい方は、会社の倒産費用はいくら?法人破産のお金がないときの対処法と連帯保証をご覧ください。
費用を見積もるときに漏れやすい支出
登記費用だけで廃業予算を決めない
会社を畳む費用として検索すると、登録免許税や官報公告の金額に目が向きます。しかし、実際の資金負担は、営業終了に伴う支出のほうが大きくなる場合があります。
見積もりは、少なくとも次の4区分に分けます。
| 区分 | おもな内容 |
|---|---|
| 法定費用 | 登記・裁判所費用 |
| 専門家費用 | 法務・税務・登記 |
| 撤退費用 | 撤去・原状回復 |
| 債務の支払い | 借入・未払金など |
法定費用だけを用意しても、従業員への支払いや賃貸物件の明渡しが進まなければ、会社を閉じる作業は完了しません。
見積もりを依頼するときは、「解散登記だけ」「清算結了まで」「税務申告を含む」など、業務範囲を確認してください。金額だけを比べると、含まれる作業の違いを見落とします。
税金は解散後も確認が必要になる
解散すると、その時点ですべての税務が終わるわけではありません。解散後も清算事務が続き、清算中の税務申告が必要になることがあります。
設備や不動産、在庫などを売却した結果、帳簿上の価格との差額が生じる可能性もあります。残余財産を株主へ分配する場合は、その内容によって税務上の扱いが変わります。
会社の解散に伴う残余財産の分配では、所得税法上のみなし配当に該当する部分が生じる場合があります。また、それ以外の部分は株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされることがあります。
税金の計算は、資産の種類、取得価額、株主構成などに左右されます。解散前に税理士へ試算を依頼し、清算後の手取りまで確認したいところです。
従業員・賃貸物件・契約の終了費用を加える
会社を閉じるときは、登記より先に現場対応が必要になることがあります。
従業員がいる場合は、給与や退職に関する支払いを確認します。店舗や事務所が賃貸なら、明渡し条件や原状回復の範囲も契約書で調べます。
設備のリース、車両、電話、システム、フランチャイズなどの契約も確認が必要です。途中解約に伴う負担があれば、資金繰りへ反映させます。
次の資料を一か所へ集めると、見積もりの精度が上がります。
- 直近の決算書
- 最新の試算表
- 預金の残高資料
- 借入返済予定表
- 保証契約書の写し
- 賃貸借契約書
- リース契約書
- 従業員ごとの支払資料
保証契約は書面で締結することが民法446条に定められています。まず保証書や変更契約書の写しを探し、対象債務と保証人を確認してください。
会社を畳む費用を払えない場合の選択肢

資金がなくなる前に支払予定を可視化する
費用を払えないと感じたら、最初に30日間の資金繰りを日付単位で整理します。
月次の損益が赤字でも、すぐに資金が尽きるとは限りません。反対に、帳簿上は黒字でも、入金より支払いが先なら資金が止まります。
次の順で確認してください。
1. 今日の預金残高を確定する
2. 30日間の入金日を並べる
3. 支払日と金額を並べる
4. 担保と連帯保証を確認する
5. 売却可能な資産を整理する
6. 事業価値の有無を検討する
ここで重要なのは、会社を閉じる費用だけを別枠で考えないことです。営業継続中の支払い、撤退費用、法的手続きの費用を一つの表で比べます。
資産の散逸や一部債権者だけへの偏った弁済は、後の手続きに影響するおそれがあります。支払いの優先順位を独断で決めず、資金不足が見えた段階で専門家へ状況を開示してください。
事業に価値があれば譲渡で残せる場合がある
会社の預金が少なくても、事業そのものに価値が残っていることがあります。
買い手が評価する対象は、決算書上の純資産だけではありません。継続取引、従業員、許認可、顧客基盤、設備、営業地域などが検討材料になります。
当社が支援して成約した案件には、運送業で売上1億円台、債務超過3,000万円規模、従業員10名前後の会社もあります。また、売上4,000万円規模の小規模な会社も成約しています。
財務概要が残る9件では、およそ3分の2が債務超過でした。債務超過だから買い手が見つからない、と言い切れるほど単純ではありません。
詳しくは、債務超過の会社を買ってくれる会社の探し方をご覧ください。
再生型M&Aでは持ち出しを抑えられる場合がある
あさひ国際会計株式会社の再生型M&Aは、相談無料、着手金なし、成功報酬のみです。成約時の報酬は譲渡代金から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。
これは成功報酬が無料という意味ではありません。成約した場合に、譲渡代金の中から報酬を精算する仕組みです。成約に至らない場合は、事業の状態に応じて法的整理など別の出口を検討する必要があります。
一般的なM&Aは半年以上かかると言われますが、当社の赤字・債務超過案件は、おおむね2〜4週間で進んでいます。相談した月のうちに成約することがほとんどで、相談から最短5日でクロージングした実績もあります。
ただし、資料の不足、買い手候補、金融機関の判断などで期間は変わります。短期間での成約を約束するものではありません。
M&Aと法的整理は得意分野を踏まえて比べる
会社を畳む費用を用意できない場合、M&Aだけが答えになるわけではありません。状況によっては、破産や特別清算などの法的整理が適切な場合もあります。
破産手続きを主に扱う専門家と、事業を残す前提の再生を扱う専門家では、得意分野が異なります。
| 状況 | 検討する専門家 |
|---|---|
| 法的整理が必要 | 弁護士 |
| 解散登記を進める | 司法書士 |
| 税額を試算する | 税理士 |
| 事業譲渡を検討 | M&A専門家 |
法的手続きの実行や債権者との法的な交渉は、依頼者が委任する弁護士等が担います。
当社は、金融機関との協議に必要な資料の整備、事業価値の説明資料の作成、M&Aの条件設計を通じて、経営者ご本人の協議を支えます。法的整理が必要と考えられる場合は、担当領域を分けて検討します。
借入と連帯保証を残さないための確認
会社を畳んでも連帯保証は自動で消えない
会社の借入に経営者が連帯保証をしている場合、会社の解散だけでは保証契約は消滅しません。
民法454条によると、連帯保証人には催告の抗弁と検索の抗弁がありません。通常の保証人と異なり、「先に会社へ請求してください」「先に会社の財産へ執行してください」と主張する権利を持たないのです。
会社が返済できなくなれば、経営者個人へ請求が及ぶ可能性があります。そのため、会社を畳む費用の試算と同時に、個人保証の対象額を確認しなければなりません。
確認する書類は次のとおりです。
- 金銭消費貸借契約書
- 保証契約書
- 変更契約書
- 担保に関する契約書
- 信用保証に関する書類
- 最新の借入残高資料
個人根保証では、民法465条の2により極度額の定めが必要です。保証書に書かれた上限や対象債務も確認してください。
株式譲渡でも保証解除には金融機関の判断が要る
株式譲渡では、会社の法人格が変わりません。会社の借入などの債務も、そのまま会社に残ります。
一方、経営者保証については、株式を譲れば自動的に解除されるわけではありません。中小M&Aガイドライン第3版では、保証の解除や引継ぎを最終契約で取り決める主要項目としています。
ただし、M&Aの当事者が合意しただけで、金融機関との保証契約が消えるものではありません。正式な解除や移行は、最終的に金融機関等の判断によります。
買い手の信用力、引継ぎ後の返済可能性、会社の財務状況などが確認対象になります。譲渡条件だけでなく、保証解除までの実行手順を設計する必要があります。
契約条項と解除確認を分けて管理する
M&A支援機関協会は、2025年1月1日施行の自主規制ルールで、最終契約書の草案作成時に、経営者保証の解除を譲受け事業者へ義務付ける条文案を盛り込むことを定めました。譲受け事業者の資力に関する調査義務も定めています。
また、2024年9月には、広告営業規程の附則3項として経営者保証解除に関するサンプル条項が公表されました。
契約に解除義務を書くことと、金融機関が実際に解除することは別の段階です。次の3点を分けて確認します。
1. 最終契約に何を定めるか
2. 金融機関へ何を提出するか
3. 解除を何で確認するか
当社では、これまで成約に至った案件で、いずれも連帯保証の解除まで見届けています。成約した案件で、保証が残ったままになった例はありません。
ただし、金融機関の同意が前提です。すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。
手元資金を使い切る前に相談する
資金繰りが厳しい会社では、相談を先延ばしにするほど選択肢が減りやすくなります。
M&Aには、決算書の整理、買い手候補への説明、条件設計、契約、クロージングなどの工程があります。法人破産にも、資料準備と費用の確保が必要です。
次の状態になる前に相談することが大切です。
- 給与の支払日が迫っている
- 借入返済が止まりそう
- 税金の支払いが難しい
- 主要取引先が離れそう
- 事業に必要な人が退職する
- 資産の処分を急いでいる
手元資金が残っているうちなら、通常清算、M&A、法的整理の費用を比較できます。会社の価値を保ったまま買い手を探す余地も残ります。
よくある質問
会社を畳む費用は最低いくらですか?
株式会社の通常清算では、解散、清算人、清算結了の登記にかかる登録免許税は合計4万1千円です。ただし、これは登録免許税だけです。官報公告の実費、専門家報酬、税金、原状回復、従業員への支払い、借入などは含みません。総額は会社ごとに異なります。
赤字でも通常清算できますか?
赤字か黒字かだけでは決まりません。会社の資産で借入、未払金、税金などをすべて弁済できるかが判断材料になります。損益が赤字でも支払い切れる場合はあります。一方、黒字でも資金が不足し、債務を払えないことがあります。
会社を畳む費用がないと法人破産もできませんか?
法人破産では、裁判所へ納める費用と弁護士費用が必要です。東京地方裁判所の令和8年1月1日版資料では、自己破産申立事件の管財事件について予納金最低20万円などが示されています。費用が不足する場合も、資産を処分する前に弁護士へ状況を伝え、申立ての進め方を確認してください。
会社を売れば連帯保証は外れますか?
株式や事業を譲渡しただけで、連帯保証が自動的に外れるわけではありません。最終契約で保証解除や引継ぎを定めたうえで、金融機関等の判断を受ける必要があります。買い手の信用力や会社の返済可能性も確認されます。
まとめ
会社を畳む費用は、登記費用だけでは把握できません。株式会社の通常清算にかかる登録免許税は合計4万1千円ですが、官報公告、専門家報酬、税金、従業員対応、原状回復、借入返済などが別に発生します。
会社の資産ですべての債務を払えない場合、通常清算だけでは終えられない可能性があります。特別清算や法人破産を含め、弁護士等の専門家と法的な整理方法を検討する必要があります。
一方、債務超過でも、取引先、従業員、許認可、設備などに事業価値が残っていれば、再生型M&Aを検討できる場合があります。あさひ国際会計株式会社では、相談無料、着手金なしで対応しています。成約時の報酬は譲渡代金から精算するため、売り手の手元からの持ち出しは0円です。
まず、預金残高、30日間の入出金、債務、連帯保証、事業価値を一枚に整理してください。会社の資産を急いで処分する前に、通常清算、M&A、法的整理の費用と結果を比べることが、次の判断につながります。
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この記事を書いた人
あさひ国際会計株式会社 代表取締役 金子広夢
東京都中央区日本橋兜町17番2号 兜町第6葉山ビル4階/中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関
連帯保証の解除を見据えた再生型M&Aを専門に、年間60件以上のM&A仲介の成約実績があります。
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最終更新日: 2026年9月7日